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探偵はもう死んでいる

うみぼうず


概要(公式アプリより)

「君、私の助手になってよ」

巻き込まれ体質の少年・君塚君彦は、
上空一万メートルを飛ぶ飛行機の中、
探偵を名乗る天使のように美しい少女・シエスタの助手となった。
二人は世界の敵と戦うため、
三年にもわたって世界中を飛び回り、
目も眩むような冒険劇を繰り広げ
-やがて死に別れた。

激動の日々から一年。
高校三年生になった君塚は
日常という名のぬるま湯にとっぷり浸かり、
ごく普通の学生生活を送っていた。
そんな君塚の元に一人の依頼人が現れる。

「あんたが名探偵?」

同級生の少女、夏凪渚との出会いをきっかけに、
過去と現在を繋ぐ壮大な物語が
再び始まろうとしていた- 。


タイトルに込められた主人公の決意

「探偵はもう死んでいる」

斬新なタイトルですよね

私自身、探偵が既にこの世にいないという状態から始まるミステリー、

という目新しさに惹かれて買ってみました。

しかし、作品を読んでみると、そこには奇抜さだけではなく、もう一つの意味があるように感じました

それは主人公の想い、そして決意です。

探偵であるシエスタは、

かつて彼女の助手として冒険活劇を繰り広げた主人公にとって非常に大切なパートナーで、

異性としても特別な存在でした。

なので彼女が死んでから、作品の冒頭になりますが、

探偵をやめてしまっていることから

主人公は彼女の死を受け止めきれていないように感じられます

しかし、シエスタの心臓を移植されたという夏凪渚との邂逅により、

やむなく再び探偵の仕事を請け負うことになります

夏凪との接触の中で、

シエスタの感情や記憶など痕跡が夏凪の中に残っていることを意識させられながらも、

それでも受け止めきれない主人公は、

夏凪との「再会」を偶然と片してしまったことをきっかけに

ついに夏凪にブチギレられます。

激情に駆られる夏凪の涙には、

記憶の痕跡との葛藤や共感がありありと感じられ、

主人公はそこにシエスタの心臓があることを確信します。

しかし、本来は嬉しいはずが、目を逸らしていた主人公にとってはそれは辛い再会でした。

そこにシエスタの心臓があることを認めてしまえば、

再び会えた懐かしさを感じることはできても、

やはりシエスタ自身はそこにはいないことも認めざるを得ないからです

夏凪渚は全くの別人であることには変わりないことを痛感させられます。

こうして、主人公は再び探偵として復活する、というのが

冒頭の趣旨です

探偵がもう死んでいる

これは、大切な女の子の死から目を逸らしていた一人の男子高校生の、

苦しみもがきながらも前を向かんとする尊い決意の意味があるのかもしれません。

セカイ系のバトルもので、本格ミステリーとはいきませんが

主人公や夏凪渚、そしてシエスタなど

登場人物たちは非常に共感のもてる深い作品です。

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