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そして私は悲嘆に暮れる??

最近、香港のあちこちにまるで雨後のタケノコのように、飛ぶ鳥落とす勢いで店舗が増えている茶餐廳チャーチャンテン(香港式大衆食堂)敏華冰廳(マンワー・ペンテン)。

それがうちの近所に、この半年の間に2店舗もオープン。

開店後2か月くらい、いつ行っても店の外まですごい行列だったので、ずっと試せずにおりました。

って言うか、その間も私は単に「香港の人は新しモノ好きだから。」と結論づけて興味もなかったのですが、最近人の波も落ち着いてきたようなので行ってきました。

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茶餐廳チャーチャンテンでは、香港B級グルメのアレやコレが楽しめます。

トンテキ目玉焼きご飯のトンテキがすごく分厚くて香ばしいです。

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牛肉ミンチ目玉焼きご飯  ミンチの量!

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はっは~ん、なるほど。これは行列ができるワケです。値段は、ごく一般的なのにめちゃめちゃボリューミーで美味しい!

そして、ここの看板メニューが!

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黯然銷魂飯(アムインシウワンファン:悲嘆に暮れるご飯)


さあ、この名前を聞いて、あ!あの映画の!と思った人はかなりマニアック。ブスメイクの代表格の映画作品として以前こちらの記事でも紹介しましたが

周星馳(チャウ・センチー)の映画「食神(グルメの神様、かと思いきや邦題もそのまま「食神」らしいですね)」に出てくる、勝負飯のレシピで、その内容はと言えば、香港のソウルフード、叉燒煎蛋飯(チャーシュー目玉焼ご飯)です。

(映画の中の1時間19分辺りにチャウ・センチーが黯然銷魂飯を作る場面が出てきます。)

そして、こちらが敏華の黯然銷魂飯↓↓

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映画の中では、チャウ・センチーはこれに菜の花らしき葉野菜を添え、審査員の女性が、この叉焼目玉焼きご飯を食べて、いつの間にか涙を流し、「あれ?何で私泣いてるんだろう」という審査員に、チャウ・センチーが言ったセリフが「玉葱です。これに玉葱を入れたんです」

と言うのですが、こちらの「黯然銷魂飯」には青菜も玉葱も入っていませんでした。(注:一般的な叉焼目玉焼ごはんには玉葱は入っておりません)

でも、叉焼はすごく味が染みていて甘味もあって(香港の叉焼はもともと甘い味付けですが)、普段食べる叉焼とは確かに一味違ったので、玉ねぎに漬け込んである・・・かもしれません(・・さあ?知らんけど。)

ちなみに、このご飯の名前が何で、こんなに悲嘆に暮れた名前であるかと言えば、元々は金庸という香港を代表する大文豪の著作《神雕俠侶》の中の隻腕の主役楊過が編み出した「黯然銷魂掌(あんぜんしょうこんしょう)」という技から来ています。

「黯然銷魂」とは大切な人(もの)を失い悲しみの底に沈み、その悲嘆の中で魂を摩滅していくかのように埋没する、つまり「悲嘆の中に身をゆだねる」という感じの言葉です。

この作家金庸については、いつかしっかりとした記事を書こうと思っておりますが、ノー友のミシェリーさんも動画で紹介されておりましたので、こちらに貼り付けておきます。

モデルとなった小説では、主人公が心から愛する女性が余命幾ばくもないという深い悲しみにもみくちゃにされる中で確立され編み出された技で、その威力は原作には「軽く手のひらを向けただけで大きなウミガメの甲羅(改訂版では巨大な岩)が割れるほど」と描写されています。

チャウ・センチーが映画の中で、同じくヒロインであるカレン・モクが死んでしまったと誤解して深い深い悲しみの境地に達したという描写があり、金庸作品の経緯をオマージュしていると思われます。

ま、もっとも「黯然銷魂飯」という陰鬱なネーミングが成されていますが、香港のソウルフード叉燒煎蛋飯なので、チャウ・センチー人気にあやかって敏華だけでなく、たくさんのレストランで食べられます。

ここの「黯然銷魂飯」は叉焼がものすごく分厚くて、しかも柔らかくて本当に食べ応えも味も最高でした。

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