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彼女らはどうしてマヨネーズ権を得たと思ったのか?

 「もう・・母さんの薬が残りわずかになっている。この六神丸をすぐに手配しろ!すぐにだ。」

そう言って私の目の前で、義兄はHKD2000ドル取り出して弟のKに渡しました。

 私は、毎回日本に帰国する度、Amazonやドラッグストア等で色々なものをスーツケース一杯購入して戻ってきます。

結婚して間もない頃は、お姑と義兄には日本のラーメンなど形ばかりのお土産、KにはKによさげな物を買って帰っていました。

私がKの為に買うものは、私が本当にKによかれと思って買う厳選チョイスです。

ところが、ある日突然、
「お前がこないだ買ってきた角膜修復の目薬な!母さんが使ったら、その場でハッキリ目が見えるようになったって喜んでた!!」
「お前がこないだ日本で買ってきたドライスキンの軟膏、兄貴も母さんもすごい重宝してる!!」
と聞かされるのです。

Kは「いいモノだ!」と思ったら、私がわざわざKの為にまとめ買いして来たそれをお姑や義兄に横流しするのです。

はあ?知るか。
私はアンタの為に買って帰って来たんだよ💢


そして、いつの間にか義兄やお姑は私が日本に帰る時期になると、いつ帰るのかとチェックを入れてきて、お姑の家で顔を合わせるのに、K経由で買って帰ってきてほしいものの注文が入るようになりました。

ある時期、私が自宅用に買って来た龍角散と温熱シップを甚く気に入った義兄が、K経由で毎回10箱注文するので、私のスーツケーススペースの半分近くが義兄の買いだめの温熱シップで占領されてるという状況が3年ほど続いて、ものすごく迷惑でした。

私が自宅用に買ったのは、こっちのオリジナルの奴だけど。
義兄が注文する龍角散ダイレクト。ちなみに今は香港でも全く同じ日本製のものがゲットできます。
何年も帰国の度に10箱買いだめさせられた温熱シップ

お姑には毎回、サロンパス140枚入り(一番お徳用サイズ)を5箱というのが無条件で決定事項としてあり、サロンパスも香港のドラッグストアで買えるのですが、薬事法の違いの為、香港で売られているものは、日本製ではありません。一度「このサロンパスは香港でも売られてる」と言ったらば、
「香港のヤツは何かちょっと違う気がするんだよ。年老いた母さんのわがままと思って日本のヤツを買ってきてくれ。」
と言われたのです。

ぬぁ~にが「年老いた母さんのわがまま」だ!自ら同情を引くような言い方を敢えて選んで使ってる時点で、そのあざとさにムカつくわ💢

大体、そもそも私が嫁に来る前は、そんなチョイス自体なかったでしょ~が?何で自力で買えるもので我慢しないの?

 私にとっては迷惑、ストレス、嫌悪感以外の何者でもないのですが、この厚かましい要求は驚いた事に、Kの友達にまで広がって、あるとき、Kの友達の妹の二人の娘の為に、日本のランドセルを二つ買わされた事がありました。でもキレイに箱詰めされたランドセルは殊の外デカく、EMSで送りつけました。

そんなわけで今ではすっかり定着した「代理購入」というビジネスを、私は自分のスーツケーススペースと自分が持って帰りたいものを犠牲にしての無償奉仕、しかも代金立て替えでした。

今、567で日本に帰れなくなって早2年が経ってしまうと、そりゃ当然色々なストックがなくなります。

で、冒頭の話に戻ります。
事の経緯はこうです。

私は数年前から時々胸が苦しくなることがあって、私の母が言っていた「お婆ちゃん、救心を飲んでいたお陰で元々心臓悪かったのに、心臓が強くなり過ぎて、こないだ病院に運ばれた時も死なずに済んだ」と言っていたのを思い出して、常備薬として手にしたのです。

が、ご存知の通り、すごく高いのに超ちっちゃいの。
こんなにちっちゃいのに薬効が強いので、「7粒一気に飲むと耳が聞こえなくなる」、という都市伝説が私の地元ではまことしやかに語られていました。

でも、ある時いつものドラッグストアに救心含め色々買い出しに行くと、薬剤師のお姉さんが「救心」買うんだったら、こっちのジェネリック版もあるよ、と紹介してくださったのです。

「救心」のジェネリック版。クオリティはわかりませんが、入っている成分は同じで値段は半額。しかも、救心はただのガラス瓶で、丸薬を出す時には自分で気をつけて出さないといけませんが、こちらのボトルがすごく賢くて、口を手に押し付けると一粒だけ出てくるという便利容器!

試しに買ってみると、容器の使い勝手もよく、コスパもいいので、すっかり気に入ってこちらを買う事にしたらば、Kファミリーも昔、義兄の友人で日本製品の貿易をやっていた友人から救心を購入していた過去があるらしく、私が六神丸をまとめ買いしていたのを、Kがいつもの如く、お姑に横流ししやがったのです。

お姑は「これが私の命綱」と言わんばかりに毎日精を出して常用。そこから私が帰国の度に、お姑の分までまとめ買いしてくるのが当たり前化。

それがもう最後の一瓶になったと言って、明らかに私に回ってくるしかない案件で、私が居るのに私の目の前でKにお金を渡し、Kに入手するよう命令するという茶番を繰り広げて見せた義兄。

(私はその時点ですごく白けた気持ちで呆れ返っています。)

Kが「でも今帰れないしなあ、誰か○○ちゃん(私の友達の名前)とかに頼めるかなあ?」とチラリと私を見ると、義兄は「もうこの話は通ったもの」と言わんばかりに、さっきまで私に向き合おうともしなかったのに、お姑のその最後の一瓶を手に部屋の端っこに座っている私のところまでやってきて「ホラ、もう後これだけしかないんだ。」何とか手を打たないと母さんが死んでしまう、と言わんばかりの口調で私に見せてきます。

・・・・・。

「はあ・・・。」
私が気のない返事をすると、「これがどれほど大変な事かわからないのか、頭の悪いヤツだ」と言わんばかりに、首を横に振りながら失望したように食卓に戻っていく義兄。

・・・いやいやいや。

ホントにそんな深刻な状況なら、大事な薬は毎月診てもらっているかかりつけの医者に言って然るべき処方をして貰ってください💢


じゃあ何か?
日本人の私が日本に帰れなくて、私だって自分が買いたいものも買えないのを「当然の事」として諦めているのを、毎月医者に診てもらって、そこから出される薬も飲んでいるお姑(それで充分じゃん?)の安心薬として、私が日本にいる誰かに迷惑をかけて、わざわざお姑の為に送ってもらえと?今私の家にあるラス1のストックをお姑に回せと?

考えれば考えるほど、何て図々しい言い分なんだとイライラしていたら、そう言えば過去にも同じような理不尽な要求があったな、という腹立だしさが連鎖反応を引き起こして、私の記憶の中で遥か忘却の彼方にあった「マヨネーズ騒動」まで思い出してしまいました。

さかのぼること約20数年前、私がまだ香港に赴任する前、ある時事務所メンバーの幹部寮に、一人一品ずつ料理を作って持ち寄る事になりました。

私は簡単にきゅうりとツナマヨとカニカマで作った手巻き寿司を何本も作って持って行きました。

すると、
「!・・・何コレ!!美味すぎる~~~~~~~~~💗💗💗」

コレ。日本版の日本で売られているキューピーマヨネーズ。中国にも中国で中国市場向けに生産されたキューピーマヨネーズですが、似ても似つかぬ代物なので、「日本の」と言うのが一番大事なポイントです。

恐らく、生まれて初めて日本のキューピーマヨネーズのコクとパンチと絶妙な味のバランスを体験した彼女たちは、マヨネーズの美味さに衝撃を受けたらしく、私が帰国する前には事務所の女子全員が「私は2本」「私は3本」と言って注文票を渡されるようになりました。

イメージ画像でお届けしています。こんな感じの注文票が手渡されました。

は?マヨネーズだけで12本?

一本450gもあるマヨネーズ12本、地味に重いんですけど。20キロ制限の内、マヨネーズだけで5キロ越えって・・・。

・・・って言うか、そもそも私達友達でも何でもありませんよね??

事務所の中で、それなりに仲良くしている人もいましたが、数人は何となくお互い関わり合わないようにしている人たち。そういう人たちまでも、注文を取る時は、当たり前のように注文するのです。

いや、仲良くしてる人の頼みなら全然普通に買ってきますけど、私、友達でも何でもない、むしろ明らかに私をよく思ってない感じの態度の人たちの分まで何で買ってこなくちゃいけないワケ?

私には、その感覚が最後までさっぱり理解できませんでした。

私は友達と見なしていない(し、向こうも友達とは思っていない)のに、同じ事務所にいるというだけで、普通に自分にはマヨネーズを注文する権利がある、という事を疑わない人達。

一方、友達でも何でもない人の為に貴重な帰国時に余計な労力を使いたいとは全く思わない私。

両者はまるで平行線でした。

でも、はっと気づけば、あの頃から今まで私の状況は一切変わっちゃいないのです。

ただ同じ空間にいる、というだけで個々の親密度とか全く関係なく、自分にはマヨネーズ権があると認識するような人々、「空気を読む」とか「忖度」とは無縁な人々の中に、私はいるんだということを。



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