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詩のようなもの

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2022年10月の記事一覧

永遠のようなもの

永遠のようなもの

永遠を信じてやまない私たちは
その存在のなさに落胆した

この空も
この海も
このざらざらした砂の感触も
そして私たちの関係も

永遠なんてない
それならば永遠のような一瞬を
ポケットいっぱいに詰め込んで
大事に大事にしたい

火の粉にも満たない
一瞬の煌めきに祈りを込めながら
丁寧に丁寧に守りたい

かわいらしいでしょ、私たち

玄関

玄関

おかえり

あなたのためにシチューを
コトコト煮込んでいたよ

ただいま

今日も社会で精一杯生き抜いて
あなたの前でやっと息抜けるよ

いってらっしゃい

今日も私たちにとって
健やかな1日でありますように

いってきます

また今夜会えるのを楽しみに
頑張ってくるね

イタイ

イタイ

ジャンプしたら掴めそうな雲に乗って

風の気が向くままに運ばれて

辿り着いたあなたの国

ぼやけた記憶の森を掻き分けて

思い出したのはあなたが私の隣にいたこと

この世界でわたしとあなたしか持っていない

たったひとつの記憶

知らない花にはあなたの名前をつけて

沈みかけの夕日と3人で追いかけっこをして

ベッドの中で手を繋いで眠った

わたしの声はあなたに宿ってるかな

あなたの声はわたし

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猫

猫は
嬉しかったことしか覚えていないらしい

神さま
眠る前だけでも猫になりたいです

今日の嬉しかった出来事を
丁寧によく磨いて
またいつでも取り出せるように
飾っておこう

今にも手のひらから
零れ落ちてしまいそうな雫を
琥珀の中に閉じ込めて

明日もきっといい日になる

雲とそよ風

雲とそよ風

食べて欲しそうな雲が
目の前を流れていく

そよ風が裸体を
優しく撫でていく

ブランケットはいらない
もうあなたに包まれている

私の前世の人が生きていた時間
変わらず雲とそよ風が
包んでくれていたのかな

惑わされそうなとき
壊れてしまいそうなとき
あなたが私たちを醒まさせて

ウツツマボロシ

ウツツマボロシ

ウツツよ ウツツよ

あなたが通り過ぎたのは
いつ日の夢

背中に背負った
か弱い羽根の残像

眼から溢れるのは
失った言葉たち

マボロシよ マボロシよ

あなたの手に振ってきたのは
いつ日の夢

みんながあなたを囲って
祭りをする

炎の透き通る眼は
見るものを燃やす

ウツツマボロシよ ウツツマボロシよ

ここにいて
ここにいない
どこにもなくて
どこにでもある

ウツツマボロシ

光なかれ

光なかれ

雲を裂くようにして
光が地上に降り立ち
木の枝の隙間から
光を漏らしている

陽の光が苦手なのは
あまりにも美しすぎるから
醜悪な私を見透かすように
照らしてくるから

窓からそっと眺めるくらいが
私にはちょうどいい
木陰からこっそりその美しさを
堪能してるくらいが
私にはちょうどいい

光は平等にみんなへ
当たらなくてもいい
醜悪さを憎んでしまうから

四角

四角

フィルムカメラの四角に納めるのは

びる くも そら もり かわ うみ
時々 ひと ねこ

四角に納まりきれないものは脳のメモリに納める

シャッターを切るその刹那

カチャッ

という音が空気を震わす

きっと空気だけではない

時間をも震わす

刹那を閉じ込めるんだ

カメラは4次元

それを片手に今日も四角に納める

今日は

今日は

今日は
ご機嫌いかがですか

今日は
いいお天気ですね

今日は
空がとても美しいですね

今日は
素敵なお洋服をお召しですね

今日は
こんにちは
コンニチハ

挨拶というより
あなたとお話がしたいのです

胎響

胎響

森の中に身を鎮める

ここはなんだかいいところ

まいぺーすな木々に
ゆらりと歌う葉
天邪鬼なわたし
怒りっぽいリス
煌びやかな衣装を纏う川

わたしの仲間たち味方たち

恵みを与えてくれるのはいつもあなたたち

今日もあなたたちの息吹を聴きながら
胎響に包まれる

自己肯定感

自己肯定感

男は言った
「お前なんかに出来るわけないだろ」

女は言った
「あの子みたいにちゃんとしなさい」

自己肯定感は
原因なんかじゃない
結果だ

過去に食べてきた
言葉や態度という添加物が
今の自分の血肉となり
悪さする

自分のせいになんてしないで
無添加物を口に入れて
私たちはまた自分の命を取り戻す