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パタゴニアの歴史と理念ーイヴォン・シュイナード「新版 社員をサーフィンに行かせよう―パタゴニア経営のすべて」ー

パタゴニアをご存知ですか?

パタゴニアとは南米にある自然豊かな地域の名前ですが、その名前を冠したアウトドアウェアブランドの方が先に思い浮かぶと思います。
今回紹介する本は、そのパタゴニアの創業者であるイヴォン・シュイナード氏が執筆したパタゴニアの理念や歴史をまとめたものです。

パタゴニアには、

「最高の製品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える。そして、ビジネスを手段として環境危機に警鐘わ鳴らし、解決に向けて実行する。」

というミッション・ステートメントがあります。
これは日本語で言えば経営理念のようなものです。
この本では、なぜパタゴニアがそのミッション・ステートメントを掲げるのか?ということが詳しく説明されています。

上に書いたミッション・ステートメントは発行当時のもので、パタゴニアのホームページを確認したところ、現在は、

私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む。
・最高の製品を作る
・不必要な悪影響を最小限に抑える
・ビジネスを手段に自然を保護する
・従来のやり方にとらわれない
引用:パタゴニア|パタゴニアのミッション・ステートメント(https://www.patagonia.jp/company-info.html)より

「地球を救うために」、というようにより直接的な表現になったようです。
環境問題に立ち向かう姿勢をよりいっそう強化するという宣言のようですね。
下の4つの箇条書きの部分は以前と同様だと思います。

目次は下のようになっています。

第1部 パタゴニアの歴史ー創業から半世紀を経て
第2部 パタゴニアの理念ー8つのガイドライン
 1 製品デザインー常に最高を目指す
 2 製造ーコストより品質を優先する
 3 販売・流通ー顧客と関係を結ぶ
 4 マーケティングーメッセージを伝える
 5 財務会計ー利益を目的としない
 6 人材活用ー働きやすさを重視する
 7 経営指針ー価値観を共有し挑戦する
 8 地球環境ー企業として責任を全うする

目次だけ見ると、部門ごとの経営戦略を示しているような本の印象がありますが、読んでみるとあまりそのような印象はありません。
本文中にもありますが、パタゴニアと同様の取り組みを他社でも実践できるように、という意図からこのような目次になっているのかもしれません。

第1部ではパタゴニアが辿ってきた歴史の中で、実際にあったストーリーが親近感の持てる言葉で描かれていて、とても臨場感のある内容です。
もともと、クライマーだった創業者が自ら使うためにクライミングギアを作り始めるところからパタゴニアの歴史はスタートします。
創業者は会社経営をそっちのけ?でアウトドアスポーツに熱中するとともに製品作りに取り組んでいたようです。
ですが製品を作るだけでなく、積極的にアウトドア・スポーツに取り組み自然と接してきたことが、パタゴニアがさまざまな環境問題に気づき、それに正面から立ち向かう姿勢につながっているように思います。
パタゴニアのいくつかのターニングポイントであり、今のパタゴニアを形作っているストーリーが綴られています。

第2部では経営に関するそれぞれの項目について、どんな目的のために具体的に何をする必要があるか?が書かれています。
例えば第2部の1製品デザインであれば、目的は「最高の製品を作る」であり、その具体的な基準としては「機能的、多機能、耐久性、修理可能性、フィット、シンプル」などになります。
このように具体的に記されていて、理念を実践にどのようにつなげるか?という部分が分かりやすく書かれています。

この実践的な内容は8地球環境にも書かれています。
パタゴニアは売上の1%を自然環境の保護や回復に努める人々に毎年必ず寄付する、という活動も行っています。
ここでポイントとなる部分は基準が利益ではなく、売上であることです。
利益の1%であれば赤字の際には寄付する必要がありません。
しかし、売上にすることで会社が赤字でも寄付するということになります。
ここにもミッション・ステートメントにあるようなパタゴニアの地球環境に対する姿勢がうかがえます。
そして、パタゴニアはこの活動に他の企業も巻き込んでいこうとしています。

またこの章では、農薬の量や寄付金額など、具体的な数字が示されています。
情報を積極的に公開することで、より活動を広めようという姿勢のあらわれだと思います。

パタゴニアはアウトドアウェアのメーカーという印象がありますが、実は最近はオーガニック食品も独自に製造・販売しています。

どうして衣料メーカーが食品を作るのか?と思ってしまいます。
しかし、これもミッション・ステートメントに照らし合わせれば、納得のいくことのように思います。

・良いと思うことを貫く
・問題へ即座に対応する
・常識にとらわれない

この3つの姿勢が個人的に強く印象に残りました。

製品であれ、サービスであれ、その方向性は違っても「最高の品質を提供する」ことはビジネスの王道なのかもしれない、と思わせる1冊です。

表記のない記事内の全ての引用:イヴォン・シュイナード著|「新版 社員をサーフィンに行かせよう―パタゴニア経営のすべて」より

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