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MaaSが起こす変化とは?ー日高洋祐他「MaaS モビリティ革命の先にある全産業のゲームチェンジ」ー

車依存社会からの脱却という課題に興味があり、公共交通機関について調べていたところ、MaaSという言葉に行き当たりました。
そのMaaSという言葉は聞いたことがあるといった程度で、どういったものなのかよく知らなかったため、この本を読んでみました。
今回はこの本から得た情報をまとめて、MaaSについて紹介したいと思います。

MaaSとは?

Mobility as a Service」
従来のマイカーや自転車などの交通手段をモノで提供するのではなく、サービスとして提供する

移動手段といえば、車や自転車であれば所有、バスや鉄道、飛行機であればそれぞれチケットを購入、というようにそれぞれ個別に扱われています。
MaaSは、それら移動手段を一元化してトータルパッケージのサービスとして提供する、というものです。

どのようなコンセプトか?

「マイカーという魅力的な移動手段と同等か、それ以上に魅力的な交通サービスを提供し、持続可能な社会を構築していこうという全く新しい価値観やライフスタイルを創出していく」

という概念になります。

単なる移動手段としてのみでなく、そこを起点として生活に変化を与え、さらには街づくりにも寄与していこうとするものです。
目標としては、持続可能な社会を築くこと、そして利便性だけでなく、生活の質をも向上させること、が挙げられると思います。

起源は?

MaaSという言葉は、2014年にフィンランド・ヘルシンキのソンジャ・ヘイッキラ氏が発表した修士論文の中ではじめて登場しました。
この論文は、同氏彼女がヘルシンキ市の都市計画局から市の交通システムの方向性を見出すことを目的として依頼され執筆されました。
この論文の功績により同氏は2014年のアメリカForeign Policy誌「100 leading global thinkers」の1人に選ばれています。

何ができるようになるか?

スマートフォン1つでルート検索から予約、決済までが行え、自分の好みに合った移動手段や移動パターンが自由に選択できる

ようになるといったものです。
個人としては、このように利便性が向上するとともに、様々な選択肢の中から移動手段を選べるようになるというのが一番の有益性だと思います。
また社会全体では、人々の生活を変化させたり、街づくりに影響を与えたりと、社会・経済に大きな変化をもたらす一つの波だと思います。

本書のなかでは、それらのことが

移動のパーソナライズ化
都市・交通の全体最適化
都市や場所の再定義

というようなキーワードで書かれています。

どんな効果があるか?

・マイカー依存からの脱却
・渋滞・交通事故低減
・環境問題緩和
・都市機能向上
・地域活性化
・観光振興
・移動コスト低減

ここに列挙したのは直接的な効果ですが、モビリティやITとは違う分野への波及効果はとても大きいように思います。
他分野への波及については、この記事の「どんな企業が取り組んでいる?」に書いています。

どこまで実現しているか?

MaaSのレベルは以下のように定義されるとしています。

レベル0ー統合なし
レベル1ー情報の統合:異なる交通サービスの情報が統合、多様な移動の選択肢
レベル2ー予約・支払いの統合:チケットレス・キャッシュレスによるシームレスな移動、移動の安心向上
レベル3ー提供するサービスの統合:定額制パッケージ、新たな移動需要の創出
レベル4ー社会全体目標の統合:スマートシティの実現、生活の質の向上

現状で日本はレベル1ですが、海外ではレベル2や3に到達しているとされています。
日本ではまだまだ実感できる部分が少ないですが、読んでみると海外ではそこまで進歩しているのか、と驚く内容でした。

どのような企業が取り組んでいるか?

・自動車メーカー:ダイムラー、トヨタ自動車、フォルクスワーゲン
・鉄道・交通オペレーター:ドイツ鉄道、ケリオス、東日本旅客鉄道、小田急電鉄
・配車サービス:Uber、Lyft、滴滴出行
・自治体:ロサンゼルス市
・通信サービス:ソフトバンク、NTTドコモ
・ナビゲーション・地図:Google、SkedGO、HERE
など、

現在は自動車メーカー、公共交通機関、自治体、IT企業などが取り組んでいるといった様子です。

しかしながら、MaaSの進展によって、
エネルギー、保険サービス、金融、不動産、観光業、小売り・コンビニ、エンタメ、医療・介護・保育
などの分野にも影響が及んでいくことが予想されています。

コンセプトを聞いただけでは、夢物語のようにも思えてしまいますが、MaaSが進展している国ではそれが実現されつつあるということです。
したがって単なる理想像ではなく、十分に実現可能性があるものだということです。

個人的な印象としては、モビリティにもGAFAがもたらしたような変化が起きるのではないか?と思うような内容でした。

本書は図表もたくさん使われており、専門分野でなくとも分かりやすく書かれていると思います。
MaaSを全体的に俯瞰しており、MaaSを学ぶきっかけとするには良い本だと思いました。

この記事内すべての引用:日高洋祐他「MaaS モビリティ革命の先にある全産業のゲームチェンジ」

 

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