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地域課題解決へのツールー筧裕介「持続可能な地域のつくり方ーー未来を育む「人と経済の生態系」のデザイン」ー

一言でいえば、SGDsの考え方にもとづいて、地域における課題を解決するための方法論を示した本です。
この本で学んだ主な3つのこととその内容を下のようにまとめました。

SDGsの基本的な知識

SDGs(Sustainable Development Goals)とは?

2015年の国連総会で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」、日本語では「持続可能な開発目標」

5つの基礎知識

1. 途上国から先進国まで全世界、全地域共通の目標
2. 産学官民、全セクター、市民一人ひとりが主役
3. 誰一人取り残さない
4. 3領域※1、17ゴール※2、169ターゲット
5. 2030年が目標の期限
※1. 3つの領域:「経済」、「社会」、「環境」
※2. 17ゴール
 1. 貧困をなくそう
 2. 飢餓をゼロに
 3. すべての人に健康と福祉を
 4. 質の高い教育をみんなに
 5. ジェンダー平等を実現しよう
 6. 安全な水とトイレを世界中に
 7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに
 8. 働きがいも 経済成長も
 9. 産業と技術革新の基礎を作ろう
 10. 人や国の不平等をなくそう
 11. 住み続けられるまちづくりを
 12. つくる責任 つかう責任
 13. 気候変動に具体的な対策を
 14. 海の豊かさを守ろう
 15. 陸の豊かさも守ろう
 16. 平和と公正をすべての人に
 17. パートナーシップで目標を達成しよう

SDGs3つのアプローチ

1. イノベーションとスリム化
自然資源から生み出す価値を高めるとともに、環境負荷を低減する
2. 包括性とパートナーシップ
個々のゴールは互いに密接し、ともに達成を目指す
3. バックキャスティング:未来から考える
まず未来の理想的な形を描き、その実現に向けた活動を考える

 地方創生のための5つのSDGs活用法

1. 未来地図:未来への旅路をナビゲートする
2. 共通言語:組織・セクターを超えて対話する
3. 地域づくりの入り口:みんながどこかに関心を持てる169ターゲット
4. ものさし:世界レベルで地域の現状やSDGs進捗を測る
5. チェックリスト:誰一人取り残さないための検討リスト

 SDGsは何を目標にするか、どういう基準が必要か、どういう共通認識があるか、異なる課題をどう連携するか、などを示すツールだと思います。

地域でのプロジェクトに必要な技術

地図を描く技術

地図を描くという思考整理法が紹介されています。その特徴としては

1. 個ではなく全体で捉える
2. 部分(個)ではなく、相互関係で考える
3. 現象ではなく、構造を考える

 効能としては

1. 離れた者同士の関係をイメージできる
2. 他者と自分をともに考えられる
3. 新しいことに気づける、出会える
4. 未来への道筋を思い描ける
5. 変化の構造と原因を捉えられる

書き出したり、並べ替えたりと、具体的な手順が示されています。
この方法は様々な事象が複雑に絡み合っているときに全体の構図を理解し、解決すべき構造を探し出すのに役立つと感じました。
「「言葉にできる」は武器になる」で紹介されている方法に似ていると思います。

対話の場をつくる技術

なんとなく実施してしまいそうな対話ですが、下のように実践的な流れ示されています。

1. 基本要素を固める
2. 流れと問いを決める
3. 時間と空間を設定する
4. 声をかける
5. 備品・体制を整える
6. 実施する
7. 次につなげる

2であれば①情報提供パート②交換パート③拡散パート④収束パートといったように、個々それぞれの内容が具体的に示され、その通りに進行できるくらい実践的に記されています。
これまでたくさん地域での対話や問題解決に取り組んできた著者ならではのノウハウだと思います。

声を聴く技術

こちらも先程の対話の技術と同じように、下のように流れが示されています。

1. 基本要素を固める
2. 対象者を選ぶ
3. 流れと問いをつくる
4. 事前準備する
5. 丁寧に対話する
6. 記録・編集・共有する

インタビューの姿勢や、対象者の人選など、地域で実施する際ならではの具体的なアドバイスが書かれています。

未来を表現する技術

ストーリーテリング、コピーライティング、視覚デザインの技術が紹介されています。
例えばコピーライティングでは、

1. 呼び名を変える
2. ずらす
3. ひっくり返す
4. たとえる
5. 反対を組み合わせる

 といった具体的な技法が紹介されています。

問いを立てる技術

地域に対して、問い続けたい、解決したいと思う課題を定める技術です。
問いを定めるプロセスとして

1. リアルに体験する
2. 素材を集める
3. 問いの形に文章化する
4. 3つの視点で検証する

2では「野外採集の手口」として地域で問いのタネを見つける方法を紹介しています。
たとえば、

1. 真上から見下ろしてみる
2. 叩いてみる
3. 古き良きを感じてみる
4. 誰かになりきってみる
5. 誰にでも挨拶してみる
...
31. ご当地を味わってみる

 これだけでは何のことか分かりにくいですが、本ではこういった31の手段がイラストで紹介されていて、面白いアイデアだと思いました。

発想する技術

地域が抱える課題を解決するアイデア、豊かな生活や新しい事業をつくりだすアイデアを発想する技術です。
方法としてブレインストーミングが紹介され、ルールとして下が挙げられています。

1. 質より量
2. 判断延期・批判禁止
3. 自由奔放・非現実的・突飛さ歓迎
4. 組み合わせ・改善・便乗歓迎

 また、アイデア発想の型として3つ紹介されています。

1. 「現場の声」から発想する
2. 「生活接点」から発想する
3. 「未来の芽」から発想する

 どれも発想について面白いフレームを提案してくれています。

様々な概念やモデル、原則など外でも適用できそうな新しい気づき

地域は機械?生命体?

無生物(機械)はパーツを外したら動かなくなるが、生物(生命体)は欠けた機能を他科埋め合わせ全体を最適化する。その概念を適用すると地域は生命体。

関係の質が成果の質を高める

1. 人間関係といった「関係の質」が高まると
2. 考えや意欲といった「思考の質」が高まり
3. 人や組織の「行動の質」が高まり
4. 利益や経済規模といった「成果の質」が高まる 

地域再生に必要な4つ環境

1.  つながり協働し高め合う「地域コミュニティ」
2. 一人ひとりの生きがいを創る「チャレンジ」
3. 未来を切り拓く力を育む「次世代教育」
4. 道を照らしみんなを導く「未来ビジョン」

 それぞれの詳しい内容は実際に本をみていただければと思います。
地域課題解決だけでなく、ビジネスや個人的な課題など様々な場面で適用できることがたくさん含まれたぜひおすすめしたい本です。

本記事内のすべての引用:筧裕介著|「持続可能な地域のつくり方ーー未来を育む「人と経済の生態系」のデザイン」

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