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働きながら博士号をとる方法

「働きながら博士号とろうと思うんですけど,どうですか?」という内容の相談を,就活中の修士学生,修士卒の社会人によく受ける.これはケースバイケースで,細かく状況を聞かないと答えられない. 

博士号には2種類

A)課程博士(いわゆる博士 甲)
博士課程(正確には,後期博士課程)に入学して取得する

B)論文博士 (いわゆる博士 乙)
博士課程に入学せずに論文を出して審査してもらい取得する.

どちらを出せるかは,その大学の学部のルールによる.

社会人として働きながら博士号をとる方法(自費)

社会人として働きながら博士号をとる場合は,この2つの選択肢の双方があり得る. 

1)会社に通勤しつつ大学院にも自費で行く.
 博士号の取り方A)の方法を使う.平日の何処か1日や夜間,土日だけ大学に通い,研究をして博士甲をとる方法.

 メリット
・大学の設備や研究費が使える.
・大学教授も仕事として対応するので,基本は放棄しない.

 デメリット
・学費がかかる.
・会社の理解が必要(残業を減らしてもらう,有給を大学行事日に使う)

 2)会社に通勤しつつ論文を自力で書き,自費で研究費を出す.
 博士号の取り方B)の方法を使う.論文を自分で書いて,大学院で審査してもらい博士乙をとる方法である. 

メリット
・お金がかからない場合もある.短い期間で取得できる場合もある.

 デメリット
・実質自力で書ききれる力が必要.
 博士の審査に通過する論文を書き切れえるのならよいが,実際は教授の論 文指導が必要になる.教授との良好な関係がなければ,論文指導にそこま で時間を割いてもらえない.

・研究費が自腹.結果,入学するより高くつくかも.
 正式には大学の設備や費用を使えないので,研究費は自腹.結果学費より 高くつく可能性もある.(例:博士審査に至るに必要な複数本の投稿論文 の掲載料や国際会議の渡航費の自己負担)

社会人として働きながら博士号をとる方法(会社負担)

会社が業務上博士号を必要とするため,あるいは先進分野わかる人材を探すようり,育てたほうが早いと判断した場合などに,その取得を推奨する場合がある.最近の日本の企業では稀なケースのよう.この場合もA)B)双方の場合がある.

 3)会社で仕事もしつつも,大学に会社の費用で通う.
 動きかたは1)と同じだが,会社を,大手を振って休めるし,残業も減らすように部署が協力してくれるはず.A)の方法で博士号が取得できる. 

4)博士課程の研究が会社の仕事になる.大学院に行く=仕事となる.
 大学院に行って研究をメインで行い,月1回程度会社に(通勤して)状況報告する.とても恵まれた環境である.A)の方法で博士号が取得できる.

 5)会社の仕事内容を論文博士の内容として審査対象としていいとされる.
 研究費や論文投稿費用は会社持ちなので,自己負担なしでB)の方法で博士号をとれる.

 会社負担の場合のメリット
・費用が会社負担でかからない.
・4)と5)の場合は,体力的に余裕をもって向き合える.

 会社負担の場合のデメリット
・博士号が取得できなかった際に,どうなるのか確認が必要.

 派生形はまだあるが,おおむねこの5つのパターンであると思う.4)と5)の場合なら,働きながら博士号をとることはお勧めできるが,他の場合は,労力対効果で博士号取得が見合うのか慎重な判断が必要と個人的に思う.3)の場合は,学費かからないしラッキーと思うかもしれないが,体力的にはツライことに変わりはない. 

 最後に,「働きながら博士号とろうと思うんですけど,できるんですよね?」に対する回答をまとめると,

修士の時点で博士号取得が将来に役立つと考えるのなら

 そのまま進学して博士号を3年より短期で取得する作戦や,学振や奨学金で費用負担を考える道を模索したほうが,キャリア全体でみると,私は効率が良い気がする.なぜ働きながら取得する必要があるのか冷静に考えることをお勧めする.

 既に社会人で博士号取得が将来に役立つと考えるのなら

 会社の制度として,4)5)があるか,あるいは他の手がないか社内で社会人で博士号を取得した人に相談してみる.2年ほど求職して,博士号やMBAを取得する人もいる.あるいは,超短期で博士号を取得できる大学院で審査を受けさせてもらえるか確認する.

例えば,筑波大学ならば,「早期修了プログラム」がある.

 ~~引用
「早期修了プログラム」は、一定の研究業績や能力を有する社会人を対象に、標準修業年限が3年である博士後期課程を『最短1年で修了し課程博士号を取得するプログラム』https://www.souki.tsukuba.ac.jp/

引用終わり~~

遠回りのような近道 大学との共同研究を行う.

 自分の仕事エリアかつ,博士号を取得したい大学の先生を探し,そこと会社として共同研究を行う.そして,共同研究で成果を出して,論文を出せるめどが付いた後に(あるいは1本目を通して),博士号の話を社内ではじめる.この場合,どのパターンで博士号をとる場合でも,スムーズに研究が進むし,様々なリスクを低減できると考える.遠回りなようで,リスクヘッジのできる近道かもしれない.

以上,少しでも参考となれば幸いです. 


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