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お酒と徒然。

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ひとりで呑みに行くのが好きだ。いや無論、いつの間にかひとりでは、なくなっている。独りの時間に考えていた事が隣りでグラスを傾ける人と共感しあう話になる。独りが1人になり2人になり、…
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#コラム

ジントニックと煙と月の狭間。

ジントニックと煙と月の狭間。

「誰でもいいなら、誰かで埋めてよ。」

そう言って、彼女はジントニックに口をつけた。

午前2時。
常連客がちらほら残っているだけの店内は、薄暗い。

彼女の隣に座っている僕は、返す言葉を見つけられず、ただ耳を傾ける。

「でも、結局さ、私じゃないとダメな場所なんてないんだよね。誰でもいい場所に、たまたま辿り着いただけ。それを運命だなんて嘯いて、適齢期だからって結婚して、不倫は文化だなんて都合のい

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グラスの中に旅路

グラスの中に旅路

ハイボールを飲んでいる。
ディワーズというスコッチウイスキーの。

すっきりとした味わいで飲みやすい。

ただいまライブのリハーサル終わり。
今宵は、バーライブ。

ライブの前には飲んだり飲まなかったり。
いやほとんどの場合は、飲まない。
やっぱり多少なりとも演奏に支障があるから。
でも今日は、ソロライブ。
飲みながら色んな話をして歌を歌いたい。

人の身体って実直だよね。
そんな事を思いながらグ

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お酒を”詩”だと言うと、酔っ払ってると君は思うかしら。

お酒を”詩”だと言うと、酔っ払ってると君は思うかしら。

「色に例えると透明じゃない?」

遠くに引っ越した知り合いが手土産で持ってきたバーボンウイスキーを飲みながら、そんな矛盾した事を呟いていた。

それなのにも関わらず。

「でしょ。ほんとに。そうだね。」と、その人は、頷くのだった。

「まるくて、透明。」
琥珀色の液体を飲みながら、味をそう表現する。

お酒を飲む事が好きなのは、例えばそんな言葉を分け合えるからなのかもしれない。

味に硬さやまるさ

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私と三軒茶屋のBar

私と三軒茶屋のBar

その日の夜。
三軒茶屋で、友達と会う用事がなくなったので
せっかくだから何処かで飲むかと写真を撮りながらその街をふらふらとしていた。

オーセンティックなBarという気分でもなく
かといって、若い人達が集うような賑やかな場所でもないなぁ。と、思いながら行ったり来たり。
カジュアルかつ、カウンターだけのBarが、いい。そんなことを思いながら歩く。

知らない街をこのお店は、どんな感じだろう。
どんな

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私と393BURGER

私と393BURGER

池尻大橋にあるバーガー屋さんで
ハンバーガーを頼まずにポテトとビールで長々と居座っていた。

圧倒される程のエネルギーを放つマスターと
個性豊かなスタッフさんと、アットホームな店内。

ついつい長居をしてしまう。
ファーストフード。
そのイメージが強いようなハンバーガー。
その中で、温かみや豊かな時間を感じられるハンバーガー屋さん。

「のんちゃん、お前はさ、幸せになりたいの?」

気づけば
ビー

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