見出し画像

「最高です!」としか言い表せないのが悔しいほど最高なアンディー・ウィアー最新作

世界的特大ヒットを記録したThe Martian (映画邦題・オデッセイ)の著書アンディー・ウィアーの最新作「Project Hail Mary」。今作も最高です!ウィアー様!!と叫びたくなるほど、とにかく面白かったです。

高校で化学の教師をしているRyland Graceは、ある日昏睡状態から目覚めます。Grace は宇宙船に乗っていて、地球とは異なる太陽系にいることを突き止めますが、一体なぜ自分がそこにいるのか、そして自分が誰なのかすら思い出せません。

宇宙船を捜索すると、Graceと同じ昏睡状態であったクルー2人を発見しますが、2人共既にミイラ化しており、Graceはたった1人きりで宇宙を彷徨っている現実を理解。Graceは徐々に記憶が蘇り、彼は地球滅亡の危機から人類を救うべく立ち上げらた計画「Project Hail Mary」のチームの一員としてTau Ceti(くじら座タウ星)へ送り出されたことを思い出します。

人類は大きな宇宙船をTau Cetiまで送り出されたとしても、地球に帰還させるエネルギーを作れないまま、刻一刻と迫る地球滅亡のタイムリミットに直面。
その結果、地球上の軍隊や公安的組織、非合法的な科学組織など、ありとあらゆる組織を動かせる権限を持ったプロジェクトリーダーEva Stattは、Tau-Cetiで得られた地球滅亡の原因だけを超小型の無人宇宙船4機に乗せて地球に送り返す、という選択をします。

つまり、Graceの乗り込んでいる宇宙船は片道切符。たった1人でミッションをやり遂げ、そして最後は自殺するという絶望的な状況の中、Graceは教師になる前に目指していた科学者としてのパッションを爆発させていくのですが…

アンディー・ウィアーの小説は毎回本当に面白いなぁ、と思う理由の1つは、普通の人間だったら発狂して死んでしまいそうな逆境を、サラリとかわしてしまうところなのですが、今作でも存分にその身軽さのようなものが発揮されていました。

ただ今回の主人公Graceは、The Martianの主人公マーク・ワトニーよりもより人間味があって「もうどう考えても無理だよね」という場面に出くわすと泣いたり怒ったりするので、なんだかすごく応援したくなってしまう。最終章でのGraceの選択には、著書アンディー・ウィアーの化学に対する芯の通った情熱のようなものを感じたのですが、その情熱をGraceに語らせることで深刻になり過ぎていない、ヌケ感というか明るさのようなものを感じられるのも凄く良かった!!Graceと友達になりたい!!と思ってしまいました。

話は少し脱線するのですが…
「地球滅亡」という設定が似ているNetflixのオリジナル映画「Don’t Look UP」を本書を読んでいる時に鑑賞しました。どちらも科学的に「地球は滅亡する」と分かっていて、科学者たちは警鐘を鳴らすのですが「Don’t Look Up」ではそれが政治的に利用され非常に残念な結果になり、「Project Hail Mary」では世界のリーダーが協力し合い政治力をもって何とか解決しようとします。

これは現在進行形のコロナ問題、気候変動問題にも通じるところを感じたのですが、どれだけ科学者が警鐘を鳴らしても、結局は問題回避に舵を切られるリーダーを私たちが選ばなければ、地球は残ったとしても、人類はかなり住みにくくなってしまいます。

もし、トランプ政権のアメリカでCOVID が襲ってきていたら、と考えると「Mask Up」より「Don’t Mask Up」になってしまっていただろうな…と。そういう意味で、「Don’t Look Up」はフィクションというよりSatireであり、「Project Hail Mary」もフィクションだけれど、少し現実味を感じました。なぜなら「Hail Mary」は「神頼み」という意味なので、科学者たちが警鐘を鳴らした時は必ず耳を傾けましょうね、というリマインダーのような気がしたからです。

「Project Hail Mary」は、洋書ファンで楽しみにしている人も多い毎年末恒例オバマ元大統領の2021年推薦本に選書され、こちらも大人気ビル・ゲイツの年末リーディングリストにも選書されるなど「とにかく面白い!!」と大絶賛されていました。
ライアン・ゴズリング主演で映画化が決まっているようで、攻殻機動隊に出てくるタチコマのような存在の登場人物をいかに映像化するのか、今からとても楽しみにしています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?