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小説に関すること

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日本における歴史小説史関連書籍紹介

日本における歴史小説史関連書籍紹介

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 本エントリにおいて、「歴史小説」の語を「歴史的事実、歴史上の人物の事績が深く物語の構造に関わる小説群」と定義する。各論者の用語を引く際にはその限りではない。

忙しい人のための日本歴史時代小説史概略

 日本の歴史小説は大きく分けて
・西洋のnovelを咀嚼して誕生した「歴史文学」
・落語、講談や戯作を淵源とする娯楽「大衆文芸」
 二つの場で展開されてきた。
 歴史文学は「novel

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12月と来年1月に本が出ます(鬼が笑う)

12月と来年1月に本が出ます(鬼が笑う)

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 はいどうも、谷津でございます。

 さて、『廉太郎ノオト』の発売一ヶ月プロモーションも終了したところで、そろそろ次回作のお話を始めなければ、というところでございます。
 実は来年の話もしなくてはならないのですが、鬼が泣きますよマジで。

 まずは、今年12月に、WEB潮さんで連載していた『桔梗の人』が『桔梗の旗』に改題の上、刊行されます。
 名前の通り、明智光秀関係の小説となります。

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頼むから自創作物の講評のためにプロのクリエイターに凸しないでくれ

頼むから自創作物の講評のためにプロのクリエイターに凸しないでくれ

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 実は結構告知したいことがたくさんあるのですが、そういうわけにいかない事情が出てきまして。

 ここのところ、Twitterアカウントを持っているプロのクリエイターに向け、自作の講評を頼んでくる人がいるそうなのです。いや、まさか本気でそんなことをやる方がいらっしゃるとは……。
 少し前、わたしはTwitterで「わたしには送ってくるなよ」と、やや腰の引けた物言いをしましたが、はっきり言

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拙作『柳生剣法帖 ふたり十兵衛』(角川文庫)が重版かかるみたいですよ

拙作『柳生剣法帖 ふたり十兵衛』(角川文庫)が重版かかるみたいですよ

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 昨日既にTwitterでは報告したのですが、『柳生剣法帖 ふたり十兵衛』(角川文庫)、近々重版がかかるそうです。

 柳生十兵衛というと隻眼の剣客のイメージがすごく強いですが、彼の描き残したものは異様なまでにロジカルで、かつ古典作品からの引用が多く、すごく学者肌な印象を受けるんですよね。一説には沢庵和尚の薫陶によるものという話もありますが、いずれにしても、軍学者っぽい柳生十兵衛という

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谷津の小説をグループ分けしてみた

谷津の小説をグループ分けしてみた

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 ここのところ、ある編集者さんからこういうことを言われました。

「谷津さんって、作風が安定してませんよね」

 間違いなく誉め言葉ではないのですが、一方、事実過ぎてぐうの音が出ません。実際、わたしはいくつかの作風があって読者様に混乱を招いている面があり、実に申し訳ないなあと思っている次第です。
 という反省がありつつ、あんまり改めるつもりがないのがわたしなのですが、けれど、読者様から

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「曽呂利」「某には策があり申す」ライナーノーツ⑤雑賀孫市

「曽呂利」「某には策があり申す」ライナーノーツ⑤雑賀孫市

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 ライナーノーツ五回目の今回は雑賀孫市です。

雑賀孫市
曽(×) 某(〇) 孫(〇)

「曽呂利」には一切登場しないものの(実は文庫化の際に登場させようか悩んだのですが、「曽呂利」のテキストのイメージに合わないために見送りました。登場させることも可能だったはずです)、「某には策があり申す」「三人孫市」において登場します。っていうか、「三人孫市」においては主役ですね。
 実はこの雑賀孫

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国立科学博物館に展示されているミイラと死者の尊厳、そして歴史小説

国立科学博物館に展示されているミイラと死者の尊厳、そして歴史小説

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 今日はライナーノーツはお休みです。
 というのも、今、書き留めておきたいことがあったからです。

 先日、リフレッシュ(と九月刊行予定の「廉太郎ノオト(仮)」の最後のロケハン)と称して東京上野に行きました。ただ散策するだけではつまらないですし、かといって博物館・美術館の企画展に惹かれるものがなかった(すみません!)ので、いっそのこと……と国立科学博物館の常設展に入りました。
 そうい

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「曽呂利」「某には策があり申す」ライナーノーツ②石田三成

「曽呂利」「某には策があり申す」ライナーノーツ②石田三成

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 というわけで、ライナーノーツ二回目は石田三成です。

 石田三成
曽(〇) 某(〇) 孫(×)

 いや、豊臣政権の話を書くにおいて、石田三成は非常に便利なんですよね。政権に深く参画していましたし、のちの関ヶ原合戦での暗躍もあったおかげで著名ですしね。この実感は何もわたしだけではなく、軍記ものの著者さんや古の講談師、はたまた明治期以降の歴史小説家の間でもそうだったようで、かくして様々

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「曽呂利」「某には策があり申す」ライナーノーツ①豊臣秀吉

「曽呂利」「某には策があり申す」ライナーノーツ①豊臣秀吉

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 はい、「曽呂利」「それさく」ライナーノーツ第一回です。
 前回、「三人孫市」も含めて三部作、というお話をしました通り、実はこの三作は連動しています。というわけで、人物紹介をしていくうちに三作の特徴が浮かび上がるのではないかなと思い、人物紹介を先行させて行っていく次第です。

 で、わたしは今後、冒頭でこういう表記をしてゆきます。

 豊臣秀吉
 曽(〇)  某(△)  孫(△)

 

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歴史小説は今、『歴史離れ』のほうがやばいんではないか②

歴史小説は今、『歴史離れ』のほうがやばいんではないか②

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 すっかりご無沙汰しちゃいましたが、前回の続きなんだぜ。

 前回は「歴史離れのほうが歴史其儘よりよほどやばいんじゃない?」というお話でした。

 しかしながら、前回エントリで、わたしが説明していない事実があります。実は、「歴史離れ」系歴史創作は、今でもめちゃくちゃ隆盛なのです。

 ことを小説、特に大衆文芸から影響を受けた狭義の歴史小説に含めてしまうから視野狭窄に陥るんであって、深呼

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新人作家さんがSNSを利用する場合、やらないほうがいいこと七選

新人作家さんがSNSを利用する場合、やらないほうがいいこと七選

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 Twitterを眺めていたら、こんなつぶやきが流れてきました。

 このツイートを眺めながら、「そうだよなあ」と思わずつぶやいてしまいました。
 そもそも作家のSNS運用って難しいんですが(そもそも正解がない)、新人作家さんだと業界の不文律的なものにも通じてらっしゃらず、勝手がわからないんじゃないかなあと思います。

 かくいうわたしもそうでした。
 今でこそ、解説で自己のキャラクタ

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歴史小説は今、『歴史離れ』のほうがやばいんではないか①

歴史小説は今、『歴史離れ』のほうがやばいんではないか①

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 前回の続きなんだぜ。

 前回までの議論は主に歴史小説における「歴史其儘」は生き残ることができるのか、というお話でした。「まあ、なんとかなるんじゃね?」というのがわたしの観測だというのはご説明させていただいた通りです。なので、「歴史小説の『歴史其儘』は絶えるのか」というタイトルを改めた次第です。

 わたしは今のところ「歴史離れ」系歴史小説家です。史実に対して冷淡すぎて同業の方に叱ら

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歴史小説の「歴史其儘」は絶えるのか③

歴史小説の「歴史其儘」は絶えるのか③

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 やっぱり前回の続きなんだぜ。

 前回、「なんだかんだで歴史其儘は残るんじゃないか」という話をしましたが、今回はその続きです。

 わたしとしては、「歴史其儘」は「歴史的正しさ」という錦の御旗があるがゆえに、細々であっても生きてゆけるのではないかという感想を持っています。
 世の中には、物語という形でしか物事を摂取できない人々というのが一定数いて、「歴史的に正しい歴史物語」には一定の

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歴史小説の「歴史其儘」は絶えるのか②

歴史小説の「歴史其儘」は絶えるのか②

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 前回の続きなんだぜ。

 明治以来日本の歴史小説を引っ張ってきた「歴史其儘」が今危機的状況にありまっせ、というお話をしました。その上で、「歴史其儘は滅ぶのか否か!」とハリセンを叩いたところで前回は終わったわけですが……。

 結論から申し上げると、「歴史其儘」は滅びません。否、歴史小説ジャンルが滅びない限りにおいては大丈夫、という方が正確かもしれません。

 なぜわたしがそう考えてい

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