それさく文庫書影

「曽呂利」「某には策があり申す」ライナーノーツ⑤雑賀孫市

【PR】

 ライナーノーツ五回目の今回は雑賀孫市です。

雑賀孫市
曽(×) 某(〇) 孫(〇)

「曽呂利」には一切登場しないものの(実は文庫化の際に登場させようか悩んだのですが、「曽呂利」のテキストのイメージに合わないために見送りました。登場させることも可能だったはずです)、「某には策があり申す」「三人孫市」において登場します。っていうか、「三人孫市」においては主役ですね。
 実はこの雑賀孫市、「三人孫市」の設定を色濃く引き継いでいる上、下手に書くと相当ネタバレをすることになってしまうので、「某には策があり申す」での孫市についてあれこれ書いていこうと思っています。

 実在の孫市は史料上あまり認めることができません。とはいえ、いくつかの戦国史料にその名前が飛び石のように存在します。それをまとめると、信長と本願寺との戦いの際、本願寺側について活躍したのち、本願寺の住職である顕如とともに脱出、鷺ノ森で暮らしていたとされています。しかしその後小牧長久手の戦いの際に秀吉方の鉄砲頭として名前が見え、関ヶ原合戦の際にも石田方としての活動が認められ、やがて水戸藩へ仕官するという史実が知られています。
 この動きを眺めていると、雑賀孫市は秀吉の紀州攻め以前に秀吉に仕えていた様子が伺えます。わたしもその説を採りました。
 「某には策があり申す」では藤堂高虎と行動を共にする凄腕の鉄砲使いとして描いていますがこれはフィクション。前作「三人孫市」の設定を引き継いでいます。なので、もしも「某には策があり申す」を読まれて作中の雑賀孫市にご興味が出た向きは「三人孫市」を読んでくださると大変うれしいです。
 あと、本作において、孫市が特殊な鉄砲を三丁持っている設定になっていますが(愛山護法 陸・海・空)、これも「三人孫市」の設定をそのまま用いています。
 と書くと「三人孫市を読んでいないと某には策があり申すを楽しめないのでは?」とお思いになる向きもあるでしょうがさにあらず。サブストーリー程度に収まっておりますので、安心してご覧いただければと思います。もちろん、どちらも読んでいただけるとわたしとしてはうれしいです。

 なんというか、「某には策があり申す」での孫市は角が取れて普通の人になってくれ、大変良かったなあと思っている次第です。もっとも、その人間離れした鉄砲使いっぷりは健在ですが。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?