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創作大賞2023応募作品

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#コラム

【エッセイ】シベリア抑留とマッカーサー元帥

【エッセイ】シベリア抑留とマッカーサー元帥

幼い頃に祖父から聞いた物語を敬老のプレゼントに両親へ送ろうと思う。

1.南方作戦

まずは、父方の祖父である、第十のお爺さんについて書きたい。

「ワシはシベリアに3年もおったけんのう」

と親父とは対照的に、いつも朗らかで、ゆっくりと喋る第十(だいじゅう)のお爺さんを僕は本当に大好きであった。

戦前、祖父は第十の家へ婿養子としてやってきた。

どこかの親方の元で丁稚奉公に入り、大工職人として

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マッカーサーとシベリア[全2900文字]

マッカーサーとシベリア[全2900文字]

自分のルーツとされる父方の祖父と母方の祖父との思い出を、脳を振り絞って書くことにしよう。

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まずは母方のお爺さんの話を書きたい。

「わしはマッカーサーに警察官を辞めさせられたんやー」

というのが母の父親、通称"高川原のお爺さん"である。私が子供の頃、近くの警察署へ祖父に連れられ行った思い出がある。

署長室まで通され、かなりのおもてなしを受けたように感じた。

「ご無沙汰です。お元気でし

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パンチの不祥事[中学時代 2000文字]

パンチの不祥事[中学時代 2000文字]

人生の大きな転機となった、中学校の部活について書こうと思う。

中学に入り僕はサッカー部にするか、はたまた陸上部に入るかで悩んでいた。
少年サッカーの友達は、ほぼ全員がサッカー部へ入部した。

1992年。Jリーグ元年のこの春は、サッカー経験のない子や、ボールを触ったことがない者までが、サッカー部へ入るという人気ぶりであった。

さらにサッカー部には、仲のいい先輩がたくさんいた。それに比べて、陸上

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ユニオンジャックの窓[全11話 6300文字]

ユニオンジャックの窓[全11話 6300文字]

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夫婦喧嘩は犬も食わないと言うが、親父が癇癪をおこして一方的にオカンへ怒りつけ、それをオカンは

「ハイ、ハイ」

と聞き流す。そんな感じの喧嘩というか、かなり激しめの癇癪は、日課のように起こっていた。

瞬間湯沸かし器のごとく、癇癪を繰り返す親父はご近所の名物でもあった。

子供の教育はビンタが基本。悪い事をしたら怒るよりも平手が顔や頭に飛んできた。

小学生の頃はそれが当たり前だと思ってい

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