連載小説《Nagaki code》第14話─郵便配達員・長岐洋介
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給湯室のドアを開けると、そこには先客がいた。
「あっ、長岐君! お疲れ様!」
聞こえてきたのは、併設する薬師岱郵便局で働く椿恵理紗(つばき えりさ)さんの声だ。椿さんは20代後半くらいで、とても優しく、色白で美人だ。本当の秋田美人だと思う。でもこう見えて、たまに女王様キャラが出る……らしい。休憩中、よくここや休憩室にいる。それは、薬師岱郵便局で働く他の局員の方々も一緒だ。
「お疲れ様です」
「コーヒー入れに来たの?」
「はい。照内さんのです」
「そっかー。私はお茶をもらいに」
急須を手に取り、ポットからお湯を入れる。何やらキャラクターが描かれている自分専用の湯呑みに、椿さんはゆっくりと緑茶を注いでいく。
「じゃあ、お先に!」
手を振りながら、椿さんは給湯室を後にした。キラキラしたオーラを振りまくその背中を目で追いながら、僕はしばらくボーッとしていた。
ここで、薬師岱郵便局の局員の方々を紹介したいと思う。
まずは、局長の高瀬総志(たかせ さとし)さん。歳は佐伯さんとだいたい同じくらいだと思う。何やら怪しげなオーラの漂う人だ。
椿さんと同じく20代後半くらいなのが、清家恭斗(せいけ やすと)さん。おっとりとした人で、パッと見は草食系男子にも見えるけど、意外と積極的に意見を言う人らしい。
薬師岱郵便局の局員の方々とも連携を取りながら、僕達、薬師岱郵便事業局の職員は頑張ってる。
そんな薬師岱郵便事業局で働くことになった僕、長岐洋介(ながき ようすけ)は、21歳の新人郵便配達員。周りからは、ご覧の通り苗字に君付けで呼ばれている。音楽を聴くのが好き。J-POPからクラシックまで、いろいろ聴いてる。身長174cm。体重は……秘密。女々しいでしょ。
まあ、可愛いわけでも、かっこいいわけでも、人気者でもない。ただの平凡な人間。見た目も、中身も。
でも、まだちょっとしか勤務してないけど、通常業務は楽しいと思ってる。黙々と郵便物を区分けする作業なんて、僕にぴったりだ。配達は、地図を見ながらなのにたまに道がわからなくなる難しい仕事だけど、その分やりがいがある。だんだん、この仕事を生きがいとしてきてる自分がいる。そんな姿を見てか、働いてる姿が輝いて見える……と、照内さんがそんな事を言っていた。