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連載百合小説《とうこねくと!》東子さまvs元カノvsキス魔vs私……!?(1)

 《前回のあらすじ》
 高校時代の彼女・南武ちゃんのことを思い出していた恵理子ちゃん。東子さまと一緒にいても、どこかうわの空……
 翌朝、ふたりは海辺を散歩。「抱えていることがあったら海に向かって吐き出しなさい」という東子さまの前で、恵理子ちゃんは思いの丈を叫びます。
 その時、聞き覚えのある声が恵理子ちゃんを呼び──!?



 みなさん、こんにちは。北郷恵理子です。
「な、南武ちゃん……?」
 そうつぶやいた私の視線の先をたどり、戸惑いの表情を見せた奥さま──神波東子さまの付き人をしています。

 高校卒業から10年。しばらく会っていなかった南武ちゃんの髪はショートボブからロングになったけど、顔立ちや雰囲気は全然変わっていませんでした。驚いた顔で私の顔を5秒ほど見たあと、南武ちゃんは満面の笑みを浮かべて──

「北郷ちゃん!」
 
 こちらに向かって駆けてきて、私にハグをしました。

「南武ちゃん!?」
「会いたかったよー!」
 力強く南武ちゃんにハグされる私。ひさびさの再会はとても嬉しいはずなのに、とても複雑な気持ちです。
 
 高校時代は南武ちゃんの彼女だったけれど、今は……

 南武ちゃんの背中あたりでさまよう私の両腕。そして、さまよう視線の先には東子さまが──


「……」
 
 ──とても険しい表情で、こちらを睨んでいました。
 
「ひさしぶりだね! 元気してた?」
 両手を解き、南武ちゃんは私に問いかけてきました。
「う、うん、元気だったよ」
 自然と言葉がぎこちなくなります。
「今、何してんの?」
「今……今はね、奥さまの付き人をしてるの……」
 そう言って東子さまの方を向くと、東子さまはまだ険しい表情を浮かべていました。
「奥さま?」
 不思議そうに私の視線をたどった南武ちゃん。すると、さっきまで険しかった東子さまの表情が一変します。
「こんにちは」
 満面の笑みで腕組みをして、東子さまは言います。そして、言葉を続けたのです。

「神波東子です。恵理子ちゃんの『主人』よ」

 東子さまの笑みは、どこか勝ち誇ったようなニュアンスを含んでいました。

「と、東子さま……!」
 私は何を焦ったか、東子さまの名を呼んでいました。
「主人……? 『さま』……?」
 南武ちゃんは完全に困惑しています。でも、その表情はすぐに変わります。さながら戦闘モードのように……

「それはどうも! 私、南武有希です! 北郷ちゃんの『元カノ』です!」

 ……ああ、間違いありません。高校時代から、南武ちゃんのその声は変わっていません。私を差別していたクラスメイトに向かって南武ちゃんが発した声と同じです。

 これは、南武ちゃんが相手と本気でケンカする時の声のトーン……

「あら、そう。『元カノ』さんね」
 うっすらとシニカルな笑みさえ浮かべる東子さまの声は至って冷静です。
「『元カノ』で悪い!? だいたい『主人』とかなんなのよ!」
 打って変わって、血相を変えた南武ちゃんの声はヒートアップしています。
「『主人』は『主人』よ。それが事実。恵理子ちゃんは私のモノ」
「何よそんなの! アタシはね! そんな訳わかんない関係じゃなくて北郷ちゃんと愛し合っていたんだからね!」

 ああ……どうしましょう。「私のためにケンカしないで」なんて悠長なことを言っている場合ではないのです。初対面なのにさらに熱を帯びてくるふたりの口ゲンカは、私だけの力では止められそうにありません。いったい、どうすれば……

「あら……どうなさったんですか……?」

 その時、また聞き覚えのある声がしました。ゆったりとした、影のある幼い声──



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