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連載小説《Nagaki code》第16話─夜桜に幽霊

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「夜桜、見に行くか」
 照内さんが突然そう言いだしたのは金曜の昼下がりだった。早くもカズさんが目を光らせている。僕もなんだかテンションが上がって、照内さんに聞いてみた。
「どこに見に行くんですか?」
「バッカ長岐君、そりゃー薬師岱公園に決まってんだろ! なあ?」
 照内さんに尋ねるカズさん。
「あ、はい……」
 若干引いたように照内さんが言うけど、カズさんはお構いなしだ。
「この時期、ライトアップもされてるしな!」
「あっ、そっか!」
「綺麗な夜桜の下で飲む酒……うめえぞ!」
「いいですね!」
 カズさんの言葉に、僕もさらにテンションが上がってきた。
「なんなら郵便局のメンバーも誘っちまおうぜ! なあ、テル?」
「そうですね……」
「人数多い方が楽しいからな! よっしゃー! そうと決まれば早速買い出しに」
 僕とカズさんに照内さんの鉄拳が下る。脳が揺れた。僕は「あぁぁ……」と頭を押さえる。「いってー……」とカズさんも頭を押さえている。僕らはしぶしぶ自分の持ち場につくのだった。

「薬師岱公園って言うとさ、」
 午後の休憩中、給湯室でカズさんが口を開く。
「……出るらしいじゃねえか」
「何が出るんですか?」
「もう、鈍いな長岐君。これに決まってんだろ」とカズさんは両手をだらっとさせて前に突き出す。それはいわゆる……おばけのポーズ。
「えっ、出るんですか?」
「出るんだとよ、女の霊が。おー怖い……」
 カズさんは自分の身体を抱いて身震いした。薬師岱公園に出る、女の霊。一体どんな未練でこの世に残っているんだろう。それより、そんな話を聞いてしまったら、夜桜を見に行くのも怖くなってきた。何も出なければいいけど……


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