見出し画像

おいしい温度。燗の利き酒Vol.10『仙禽/クラシック雄町<火入れ>』

日本酒は、自分の魅力と特性を最高の形で表現してくれる温度を求めている。

「同じ日本酒で、燗の温度を変えると味わいがどれほど変化するか」を試す『おいしい温度。燗の利き酒』シリーズの第10段。

今回は、今や日本酒好きの方なら皆さんご存知であろう栃木県 の『仙禽』。今回のクラシック雄町に限らず、綺麗で豊かな酸の味わいがたまらない魅力です。

「ドメーヌ」といって、日本酒の仕込み水だけではなく、仕込み水と同じ水脈上にある田んぼで原料米も作られている、まさしくその土地でしか造れない「ローカル」の王道とも言える日本酒。(こだわりが凄い)。

燗付けの方法は、千葉麻里絵さんの日本酒本にあった以下のアドバイスに従ってます。

1)「温度を5度刻みで上げていき、その都度香りを確かめる」

2)「その香りの変化を体感する」

3)「燗酒の出来上がりは香りの変化で判断する。温度を上げていくと炊きたての米のホクホクした香りが立つ瞬間がある」

4)「そこで急冷しながら再度ゆっくり加熱すると少し甘い香りが立ちのぼる。その瞬間で引き上げる」

画像1

詳細は以下の通りです。

1. 銘柄選定

栃木県 『せんきん』さんの造られる『仙禽』。今回のクラシックシリーズに限らず、とにかく豊かで綺麗な酸の味わいがたまらない魅力。

このように、「丁寧な酸が特徴的なお酒は、燗にしても美味しい」というのが現在のところ自分の中で法則になっていて、これは火入れ/生酒ともに当てはまると思っています。

冷やして飲んだ味わいは以下の通り。

入口はシトラスを思わせる綺麗な酸を思わせる香り。
口に含むと、綺麗な水の透明感に乗って、豊かで綺麗な酸味とお米のふくよかな甘さのバランス、優しい膨らみ感が素晴らしい。
雄町の分厚い旨みと豊かな甘さ、美味しいところのど真ん中を綺麗な酸味で優しく包みましたという味わい。雄町、といっても造り手によって色んな表現方法があるんだなと思わされる。


造りに関するラベル写真です。

画像2


2. 用いた酒器等の道具と燗付け方法

1) 道具
・8勺サイズの利き猪口(磁器)
・ちろり(アルミ製)
・温度計:TANITAの料理用デジタル温度計

画像3


2)燗付け方法

ちろりに入れたお酒を鍋で湯煎。詳細は冒頭に記載の通りで、温度を上げながら5℃刻みで香りを確かめました。

ボウルに張った氷水で急冷し、その後再度温度を上げるという方法を採用してます。

燗および急冷の温度帯は以下の通りです。

3. 利き酒結果

上記の通り、温度を上げながら5℃刻みで都度香りを確認してます。

35℃あたりで甘い香りが大きく膨らみ、綿飴のような香り。口に含むと甘さも旨さも感じるが、ボリューム感が少し物足りない。

38℃あたりまで上げて再度利き酒。35℃よりも断然いい。ただ、酸味が少し前面に出ている気もする。これは好みの範囲。十分美味しい。

40℃あたりで再度利き酒。ここだと思う。お米の甘さと旨さの膨らみ感が、冷やした時にも感じた綺麗な酸に支えられ、アルコールのボリューム感も丁度良い。その全てがバランスしてるのがこの温度に感じる。


試しに、もう一度ちろりに注ぎ直して42℃まで上げてみる。

甘さと旨さの膨らみ、綺麗な酸が柔らかく、アルコールの程よいボリューム感が旨さの膨らみをさらに下から持ち上げる。ほんの少しだけちょっとドライ(いわゆる辛さ)が前に出てくる気もする。ここは好みの範囲。

4. 総評

間もなく真夏を迎えるような気温の中、引き続き燗酒を楽しんでます。

冷房で少し冷えた身体に温かいお茶が嬉しいように、食事中冷房で少し冷えた身体に燗酒は丁度良い。甘酒を口に含んだ時に感じるあの安心感に似た感覚は、季節を問わず共通だなと思います。

今回は「丁寧で綺麗な酸」と「火入れ」のスペックから、燗で楽しめる温度帯のストライクゾーンがもっと広いものと勝手に想定してましたが、

上記の通り2℃単位でも結構味わいの違いを感じました。この辺り、ほんとに繊細な造りなんだと思わせます。

燗で美味しいと感じさせる温度帯は38℃〜42℃。特に40℃付近では、味わいのバランス感だけではなく、このお酒の持つ「繊細且つ懐の深い」顔をみることが出来たと感じます。

素敵なお酒でした。冷やしても温めても同じレベルでここまで美味しいと思わせるお酒は、それだけで実力を感じて嬉しくなります。

真夏に向かって、まだまだ燗酒楽しんでいきたいですね。

ごちそうさまでした!
















この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?