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おいしい温度。燗の利き酒Vol.6『秋鹿/純米吟醸/無濾過生原酒』

日本酒は、自分の魅力と特性を最高の形で表現してくれる温度を求めている。

「同じ日本酒で、燗の温度を変えると味わいがどれほど変化するか」を試す『おいしい温度。燗の利き酒』シリーズの第6段。

みなさん、ちょっと聞いてください。

この秋鹿の無濾過生原酒、冷たくして飲んだ時の綺麗な酸味の厚さがたまらなく素敵で、この酸味の力強さは絶対に燗でいけると確信して試してみたところ、

とっても美味しく出来たんです。嬉しくなってその勢いで書いてます。

燗付けの方法は、最近購入した千葉麻里絵さんの日本酒本にあった以下のアドバイスに従いました。

1)「温度を5度刻みで上げていき、その都度香りを確かめる」

2)「その香りの変化を体感する」

3)「燗酒の出来上がりは香りの変化で判断する。生酒の場合、温度を上げていくと炊きたての米のホクホクした香りが立つ瞬間がある」

4)「そこで急冷しながら再度ゆっくり加熱すると少し甘い香りが立ちのぼる。その瞬間で引き上げる」

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詳細は以下の通りです。

これ、ほんとに美味しくて。こんな燗酒が居酒屋で出てきたら感動しちゃいます。


1.  銘柄選定

1886年創業の、大阪『秋鹿酒造』さんの造られる『秋鹿』。自社畑で無農薬の山田錦を栽培し、純米酒のみを造るこだわりの蔵元さんです。

秋鹿の無濾過生原酒は飲んだことがなかったなということで購入し、冷やして飲んだところ、綺麗で厚い酸味がとっても素敵で、燗付けを試してみたくなりました。

造りに関するラベル写真です。

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2.  用いた酒器等の道具と燗付けの方法

1) 道具
・8勺サイズの利き猪口(磁器)
・ちろり(アルミ製)
・温度計:TANITAの料理用デジタル温度計

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2)燗付け方法

ちろりに入れたお酒を鍋で湯煎。詳細は冒頭に記載の通りで、温度を上げながら5℃刻みで香りを確かめました。

今回は、ボウルに張った氷水で急冷し、その後再度温度を上げるという方法を採用してます。

急冷前の温度は約50℃。これを35℃程度までちろりごと氷水で冷やして、その後再度50℃近くまで上げました。

3.  利き酒結果 

まず冷やした状態での利き酒結果は以下の通りです。

入口はリンゴや瓜を思わせる爽やかな吟醸香に、乳酸のクリーミーな香り、米麹の甘い香りが重なる。
口に含むと、分厚い酸味がそのまま旨みの厚さとなって口の中でどんどん重なっていく。アルコールのボリューム感と、ややドライめなキリッと感のバランス。
いわゆる「濃醇辛口」ながら、まろやかさ、口当たりの滑らかさがある。
無濾過生原酒と言えば、「綺麗な甘さ・ジューシーさ」を表現したお酒が圧倒的多数を占める中、この酸味の厚さが特徴の味わいは独特の個性がある。

燗付けは上記の通り、温度を上げながら5℃刻みで香りを確かめていきました。

30℃〜35℃くらいでは、上記の酸味の厚さが大きく広がりを見せる香り。

40℃あたりから、その酸味の広がりと同時に香りにアルコール感が漂ってきます。

45℃あたりから、酸味の広がりとアルコール感がバランスしてくるような香りとなり、引き締まりを感じるようになる。

酸味とアルコール感が丁度50℃あたりでピタリとバランスを取る感じがあり、さらにほのかにお米の甘みの香りが漂う。

ここで予め温めておいた利き猪口で一度利き酒。

事前の香りで感じた通り、酸味とアルコール感のバランスが素晴らしく、その絶妙なバランス感の上にお米の甘さが広がりを見せる。美味い。このお米の甘さがプラスされる点は、ある意味で冷やして飲むよりも美味しく感じる。

ここで、ちろりごと、そのまま氷水の入ったボウルで急冷。35℃あたりまで冷やした後、再び湯煎。

50℃少し手前でお米の甘い香りが漂ってきたところで、再度温めておいたお猪口に注いで再び利き酒。

この急冷して温め直した後の味わいがすごかった。

一度目の50℃付近の利き酒で感じた、「酸味とアルコール感の絶妙バランス」と「お米の甘さ」は、「味わいの膨らみ」をベースとして感じたところ、

急冷後に再び温めた後の味わいは、酸味・アルコールのバランス感とお米の甘さが、外側のバリア感、輪郭感に守られているような。

お米の美味しさが、ど真ん中に閉じこもっている。口の中でしばらく含んでも、美味しさが形を変えず、逃げないんですね。

4.  総評 

生酒を燗することで、ここまで美味しくなるとは予想しておらず驚きの結果でした。

一度目の昇温後、50℃付近の味わいも十分美味しかったのですが、急冷後に再び温めた後の味わいの良さには、正直びっくりしました。

綺麗で豊かな酸味の広がりとアルコールの絶妙なバランス感が、お米の甘さを綺麗に演出するその味わいが、外側の輪郭感のおかげで内側で丁寧に守られている。味が引き締まるんです。

これが急冷の効果かと。
この違いは本当にすごいなと思いました。

生酒なので冷やした味わいも本当に美味しいお酒なんですが、急冷を含めた燗の味わいは最高に美味しかったです。

他の生酒でも、もっと試してみたいと思います。

丁寧なお酒を造って頂いて有難うございます!って、こんな美味しい味に出会うと、そんな感謝の念で一杯になります。

ごちそうさまでした!



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