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2023年1月の記事一覧

読書日記『いま集合的無意識を、』(神林長平,2012)

読書日記『いま集合的無意識を、』(神林長平,2012)

神林長平作品2冊目。
「伊藤計劃を読んだならこれも」と『言壺』を勧めてくれた友人のおすすめ。

正直、『言壺』に感じたような衝撃的面白さは無かった。連作短編集ではなく、初出がバラバラの短編を集めたものだからだろう。

好きなのは「かくも無数の悲鳴」、次点で「切り落とし」「いま集合的無意識を、」かな。

「かくも無数の悲鳴」は量子力学的なお話で、物理は全然わからないけど、こういう話は大好き。

「切

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読書日記『言壺』(神林長平,1994)

読書日記『言壺』(神林長平,1994)

SFにハマってるんだ、と話したら、中学からの友人がおすすめしてくれた。友人曰く、「神林先生の作品の中では一番理解しやすく、書きたいことが明確なので初心者向け」らしい。

その後、『小説という毒を浴びる』(桜庭一樹)でもおすすめされていたので、期待値を高く読み始めた。

万能著述支援用マシン「ワーカム」を巡る9編の短編が収録されている。

「言語」と「認識している世界」の関係を描いているという点では

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読書日記『たんぽるぽる』(雪舟えま,2022)

読書日記『たんぽるぽる』(雪舟えま,2022)

雪舟えまの歌集『たんぽるぽる』(2011年,短歌研究社)に「地球の恋人たちの朝食」(2001〜2008年,ウェブ日記)を追加したもの。

『はーはー姫が彼女の王子たちに出逢うまで』(雪舟えま,2018)は私が初めて買った歌集だったが、『たんぽるぽる』は未読だったので買った。

表紙がたんぽるぽるしていてかわいい。春になったらピクニックに連れて行こう。きっとそうしよう。

雪舟さんの短歌には、衒いの

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読書日記『侵略少女』(古野まほろ,2022)

読書日記『侵略少女』(古野まほろ,2022)

中学生の頃から追っかけている古野まほろの最新作。

『終末少女』『征服少女』とともに天国三部作と呼ばれている通り、天国と人間と地獄のものがたり。
もちろん、本格ミステリで、古野まほろ節がゴリゴリだ。だから、予定調和的に女子校で、予定調和的に孤島であり密室で、予定調和的に読者への挑戦状がある。分厚さもいつも通りで、本を開くまでのタメの時間が必要だけれど、読み始めてしまえば貪るように読み進めてしまう。

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読書日記『コミュニティデザイン 人がつながるしくみをつくる 』(山崎亮,2011)

読書日記『コミュニティデザイン 人がつながるしくみをつくる 』(山崎亮,2011)

1、2年前に日本農業新聞にて掲載されていたコラムがきっかけで山崎さんを知った。ワークショップの手法や注意点、どんな効果があったのかを中心に書かれていた。もともと美術やデザインといったものに興味があったし、研究室の分野に近いこともあって、その連載を楽しみにしていた。

そんなきっかけで、本書に目をつけてはいたものの、読むのはこんなに遅くなってしまった。読んでから、「もっと早く読んでおけば良かった〜!

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読書日記『パーラ 上・下』(三ラルフ・イーザウ,2004)

読書日記『パーラ 上・下』(三ラルフ・イーザウ,2004)

ミヒャエル・エンデに設定が近くて、(ついでに置いてある棚も近くて、)詩が章扉に書いてあって、その詩が物語の鍵になっていく児童文学が好きだった。もう一度読みたかったけれど、タイトルも作者名も思い出せずにいた。一縷の望みを賭けて、地元図書館の児童文学コーナーで探したら、拍子抜けするほど簡単に見つかった。それがこの本。

これはパーラという想像力と創造力が豊かな少女が、町の人の「ことば」を取り戻すための

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読書日記『本屋さんで待ち合わせ』(三浦しをん,2012)

読書日記『本屋さんで待ち合わせ』(三浦しをん,2012)

作家・三浦しをんの書評集。たぶん既読なのだけれど、内容は忘れていて、再読したくなったので図書館で借りて来た。

三浦さん特有の、砕けた口調がたまらなく好きだ。中高の図書館の、カウンター前のソファーで、司書さんや先輩、友人とダベっていたときを思い出す。

書評集だし、基本的には本の話をしていくのだが、時々脱線したり、フェチズムを語りだしたり、所信表明をしたり。垣間見える「三浦しをん」が興味深くて、つ

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読書日記『みんな、どうして結婚してゆくのだろう』(姫野カオルコ,2000)

読書日記『みんな、どうして結婚してゆくのだろう』(姫野カオルコ,2000)

1997年の同名作品の文庫版。

姫野カオルコが延々と「結婚」について考えるエッセイである。

私が生まれるよりも前の作品なのに、「女が結婚したがっているなんて誰が決めたの?」「選択的夫婦別姓?やったらいいじゃん」「嫁にしたい女優だぁ?なんだその視点は。演技が上手いかどうかで見ろよ!」「避妊について話し合えない男が多い」みたいなことが書かれていて、面白いと思う反面、20年では男女平等やフェミニズム

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読書日記『ゲストハウスがまちを変える エリアの価値を高めるローカルビジネス 』(渡邊崇志・前田有佳利,2022)

読書日記『ゲストハウスがまちを変える エリアの価値を高めるローカルビジネス 』(渡邊崇志・前田有佳利,2022)

ジュンク堂本店で見つけた。
『シェアをデザインする』の読書記録にも書いたが、シェアハウスを運営したい。願わくば、移住者も地元生まれの人も旅人も、いろんなひとが集って新たな関係人口の玄関口になるような、そんな場所にしたい。

そのためには、ゲストハウスという機能もあったらいいなと考え、この本を読んでみようと思った。

勉強になった部分は、「地域融合型ゲストハウス」「未完型」という経営モデルがあること

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読書日記『傷を愛せるか 増補新版』(宮地尚子,2022)

読書日記『傷を愛せるか 増補新版』(宮地尚子,2022)

Twitterで見かけて、タイトルが気になったので買ってみた。トラウマを研究する精神科医によるエッセイ。

この本の中盤まで読んだ時、水鳥の白い羽をイメージした。羽ばたきによって落とされ、刹那だけ宙を舞って水面に浮かび、小さなさざなみを巻き起こすような。
解説の天童荒太氏によれば、「正直であろうと、意思をもって努めている文章」らしい。包帯や医者という白いモチーフに加えて、正直な文章が静かな羽を思わ

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読書日記『シェアをデザインする 変わるコミュニティ、ビジネス、クリエイションの現場 』(猪熊純・成瀬友梨・門脇耕三,2013)

読書日記『シェアをデザインする 変わるコミュニティ、ビジネス、クリエイションの現場 』(猪熊純・成瀬友梨・門脇耕三,2013)

ジュンク堂本店で見つけた。

少し前に、一年ほどシェアハウスのサブスクをしていたことがある。実家とシェアハウスの二拠点生活的な一年は、他人と住む難しさもあったが、それ以上に刺激的で楽しい時間だった。

就職先である北海道の町には、大々的にシェアハウスを運営しているところはないが、シェアハウスに住みたい欲は止まらない。自分でシェアハウスを運営するとしたら、どんな視点を持っていればいいのか、勉強できそ

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読書日記『夏への扉[新版]』(ロバート・A・ハインライン、福島正実・訳、2020)

読書日記『夏への扉[新版]』(ロバート・A・ハインライン、福島正実・訳、2020)

SFと猫が好きな友人から借りた。友人曰く「猫好きが書いた猫好きのためのSF」。

主人公ダニエル・B・デイヴィスと飼い猫・護民官ペトロニウス(通称ピート)のお話。

ピートはジンジャーエールが好物なのだが、もうこの部分だけでピートが好きになってしまう。私も無類のジンジャーエール(辛口)好きだから。
ピート、めっちゃ猫。良い。

内容は古典的SFという感じで、二転三転する流れが面白かったが、女性に若

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