読書日記『傷を愛せるか 増補新版』(宮地尚子,2022)
Twitterで見かけて、タイトルが気になったので買ってみた。トラウマを研究する精神科医によるエッセイ。
この本の中盤まで読んだ時、水鳥の白い羽をイメージした。羽ばたきによって落とされ、刹那だけ宙を舞って水面に浮かび、小さなさざなみを巻き起こすような。
解説の天童荒太氏によれば、「正直であろうと、意思をもって努めている文章」らしい。包帯や医者という白いモチーフに加えて、正直な文章が静かな羽を思わせるのかもしれない。
気に入った部分と、それへの感想をいくつか。
見ていることで誰かを支えられていたら良い。
この文章で思い出したのは、乃木坂46の伊藤万理華が卒業時に出した「はじまりか、」という曲。
究極的には、ファンは推しを見ていることしかできない。傷つく姿も、活躍する姿も、見ていることしかできない。重荷になっているかもしれない。見られない部分があるのも知ってる。それでも、見ていることが、少しでも推しの、誰かの、力になっていれば嬉しい。
弱さを認めること、弱いまま生き続けること。これはとても辛くて、面倒くさくて、投げ出したくなる時もある。
この「弱さを認める」というのは、たぶん宗教や呪術、占いなどが担ってきたのだと思うが、特定の宗教を信じない私はどうしたら良いのだろう、と思っていた。だから、精神科医の著者から、このような言葉が出てくるのが嬉しかった。
読了日:2023/01/11
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