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2022年10月の記事一覧

読書日記『生きるためにつながる』(石鍋仁美,2013)&『つながるカフェ コミュニティの〈場〉をつくる方法』(山納洋,2016)

読書日記『生きるためにつながる』(石鍋仁美,2013)&『つながるカフェ コミュニティの〈場〉をつくる方法』(山納洋,2016)

3ヶ月間、北海道の中山間農業地域でひとり暮らしをした。バイト先である牧場と家を往復する毎日で、知り合いも少なく、とても寂しかった。
唯一、ひとと繋がれる場所は、夏の間だけ開いている山の上のカフェだ。店主の方が話しかけてくれたり、面白い人と引き合わせたりしてくれて、とても元気が出る場所だった。

来年度からその町で就職するにあたり、自分が自分のままでいられるような居場所を持てるかは精神的死活問題だな

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読書日記『死刑にいたる病』(櫛木理宇,2017)

読書日記『死刑にいたる病』(櫛木理宇,2017)

『チェインドッグ』(2015)を改題・文庫化したもの。安部サダヲ主演で映画化もされてる。

櫛木さんは『ホーンテッド・キャンパス』シリーズで知って、『世界が赫に染まる前に』(2016)『寄居虫女(ヤドカリオンナ)』(2014)を読んで好きになった。

櫛木さんの小説を読んでいると、雨が降りそうで降らない、黒くて湿った曇り空を想像してしまう。そして、「日常」というものがぐんにゃりと歪んでいて、それに

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読書日記『雨の降る日は学校に行かない』(相沢沙呼,2014)

読書日記『雨の降る日は学校に行かない』(相沢沙呼,2014)

実写ドラマ化中の『medium』の原作者でもある相沢沙呼さんの本。私は図書館でこの本を借りたのをきっかけに相沢さんを知った。

この本を初めて手に取ったのは、中学2年生か3年生のときだった気がする。中1の時、いろいろあって、不登校→保健室登校か図書室登校、時々教室みたいなことをしていた。中2からは教室に行くようになっていたけど、学校に行きたいと思ったことはなくて。そんな時にこのタイトルを見かけたの

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読書日記『虐殺器官[新版]』(伊藤計劃,2014)

読書日記『虐殺器官[新版]』(伊藤計劃,2014)

『ハーモニー』と共に友人からオススメされた。『ハーモニー』が結構タイプだったのでこれも購入した。

この本を読み終わって思ったのは「虐殺『器官』というネーミングは違うのでは」「アンチナタリズムも『虐殺器官』のようなものかもしれない」「面白かった!」の3つだ。
今回の感想文はこの3つについて、書き連ねていきたい。

*ネタバレ注意*

1.虐殺「器官」というネーミング

「ことばは、人間が生存適応の

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読書日記『あなたを奪うの。』(窪美澄ほか,2017)

読書日記『あなたを奪うの。』(窪美澄ほか,2017)

『きみのために棘を生やすの』(2014年)を改題、文庫化したもの。ジュンク堂で表紙に一目惚れして、題名に二目惚れして、「窪美澄」「宮木あや子」なら面白いはず!と購入した。5人の女性作家が略奪愛をテーマに書く短編集。

雰囲気が一番伝わる気がするので、作品の最後の方で好きな文章だけ記録しておく。私の感想は邪魔になってしまう。

朧月夜のスーヴェニア 窪美澄

戦争が始まれば、この子も身を焦がすような

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読書日記『乙女の教室』(美輪明宏,2022)

読書日記『乙女の教室』(美輪明宏,2022)

美輪さんが美しい乙女になるための心構えやハウツーを教えてくれる、という本で、課題1〜課題24までがある。2008年に出版されたハードカバー版を図書館で読んだことがあったけど、手元に置いておきたいと思ったので購入した。

初めてこの本を手に取ったとき、まだ中学生だった。他人との向き合い方についてグルグルと悩んでいた時期でもあった。そんな時に読んで心に残ったのは

「親友というゴミ箱に愚痴を捨てていま

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読書日記 『あなたにオススメの』(本谷有希子,2021)

読書日記 『あなたにオススメの』(本谷有希子,2021)

「推子のデフォルト」と「マイイベント」の2編構成。どちらも最近書かれた感じが溢れてると思った。
極端な行動をする、少し狂っているけれど現実にいそうな人間を本谷さんは良い塩梅で書く。

推子のデフォルト

超情報化社会であり、「等質性」「仮想空間に居続ける能力」が重要となった日本が舞台。ゴリゴリに自分をオンライン化している推子(おしこ)とその娘・肚(はら)ちゃん、オフライン依存症の疑いをかけられたこ

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