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トマトから透ける生産・流通小売・消費の実情【八百屋から見た“食”no.54】

個人農家、特に少量他品目栽培の農家は、少人数の家族(チーム)経営・少ない労働力総量で多岐にわたる品目&工数をいかに効率的に合理的に労働投入少なく効率よく、栽培管理・収穫・調整・袋詰・梱包・受発注・出荷準備といった作業がこなせるかに、営農の継続(量✕単価≒売上)がかかっています。

生産や栽培にどんな理想や信念があっても結果的に上記に抗えません。
栽培品目&品種選択も、理想と作業合理性の狭間で揺れます。

大玉トマトほど形が暴れず、ミニトマトほど量が暴れない。
ヘタが残った状態での出荷等、見栄えに対する手間がかからない。
味が乗りやすく、見た目・重量も稼ぎやすいミディトマトが近年では特に少量他品目生産者に選ばれやすいです。
もしくは時期を限定し、他の栽培品目を絞って大玉トマト・ミニトマトの栽培&出荷に注力する方もいらっしゃいます。

売場ではミディトマトの認知はまだまだマイナー。少しずつ支持されているものの、大玉やミニトマトと比較すれば雲泥の差。「弁当に入れて栄養価と見た目が充足する」目的の家庭内利用では、ミニトマトの支持が圧倒的です。家庭内の食事では大玉トマト購入もあるものの以前ほどの通年需要はなくなりました。世帯の少人数化&高齢化&単身化で敬遠されがち。

ミディトマトを好むのは飲食店です。
大玉より管理しやすく食材としても使いやすい。

ミディトマトの家庭内の普及は量的には難しいと考えています。
購入行動や流通体制から推察して現行の6−8個入りも実需に即した3−4個入も普及するとは考えにくいです。

あくまで八百屋の肌感覚での推測ですが、
昭和団塊世代の後期高齢者への年齢移動で、いよいよ大玉トマトの購入量がガクッと減ります。
※トマト以外では、きゅうり・白菜・ほうれん草・大根・漬物・白米(&佃煮ふりかけといった飯の友全般)・和菓子・米菓も同様。

大玉トマトは小売での展開を見出しづらくなり、中食&惣菜&加工への利転用がさらに増えるでしょう。
ミニトマトも堅調ではあるものの人口構成変化で、消費そのものは縮減します。
ミディトマトはまだまだ新たな分野。パイが広がるのか狭まるのか判断する規模ではない気がします。

フルーツトマトと呼ばれる分野は、商圏(や利用目的)が限定的で狭いにもかかわらず参入が多すぎてすでに供給過剰が10年以上続いています。
開拓余地があるのではなく開拓余地がなくもともと商圏も狭い。
甘さや糖度を競ってもトマトはトマト。果実需要にトマトは本質的に対応できません。
栽培技術としても熟度や水分調整といった変数調整でコントロール可能。
フルーツトマトの呼称は糖度8以上の証明があればどの大きさでも流通は可能。実際には大玉でもミニトマトでも糖度8を超える方はたくさんいらっしゃいます。

本来、栽培技術に加え、収穫タイミング(熟度)や収穫後の時間経過が、食味や糖度といった状態(≒商品力)を決定づけるはずのトマト。
変なブランドやストーリーの認知ではなく、直売所・直売コーナー・直接仕入れのメリットは、もっと享受されていいように思うし、実際には生産・小売・消費者も“うっすら”メリットを体験しています。もっと自覚して実際の出荷や販売に落とし込み、反映されていいように思います。

顧客の目的に合った生産と採算が叶えば継続するし、価格・食味・購入者支持と販売量や採算が釣り合わなければ撤退縮小でしょう。

トマトに何を求めるか。
生産者も流通小売業者も消費者も、提案や時流に反応しながら目の前の支持を次(の購買)につなげることでしか維持や拡大は難しいと考えます。

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