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ネオサイタマ・ランドスケープス

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『ニンジャスレイヤー』二次創作小説を発表するマガジンです。 毎週土曜日更新予定。
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記事一覧

ザ・マレフィセント・セブン #1

◆一人目◆  茶室のショウジ戸を蹴破ったリフォーマーは素早く辺りを見回した。誰もいなかった。孤独が恐怖を増幅させ、気が狂いそうになってくる。耳の奥で、破裂寸前の心臓が熱い鼓動を繰り返しているのが感じられる。頭のなかでニューロンが、ついさっき知った秘密に耐えきれず、悲鳴を上げている。  彼は、再び周りを見回す。やはり、誰もいない。だが、周りを見回すことをやめようとしなかった。自分は、今、独りなのだ、という現実を認めたくない気持ちが、リフォーマーを半ば狂った行動へと駆り立ててい

ザ・マレフィセント・セブン #2

◆二人目◆  ラパチーニの目の前で、リフォーマーが糸の切れたジョルリめいてタタミに倒れ込んだ。彼の「ドクシン・ジツ」は今回も敵を一撃で倒した。全身の皮膚から劇毒を発し、接触した相手を死に至らしめる。このジツを逃れることのできたものはいない。  だが、彼には勝利の余韻に浸る余裕などなかった。耳の奥で、破裂寸前の心臓が熱い鼓動を繰り返しているのが感じられる。頭のなかで、ニューロンがついさっき知った秘密に耐えきれず、悲鳴を上げているのが感じられる。……彼は素早く辺りを見回した。

ザ・マレフィセント・セブン #3

◆三人目◆  ショーグンになることを夢見るニンジャがいた。名は、フライングキラーという。 ◇ ◇ ◇  かつて、平安時代はカラテが支配する時代であった。だから、ニンジャに限っていうならば、誰もが栄達の機会を与えられているも同じだった。  だが、現代にはそう簡単にゆかない。ニンジャは影の存在となり、世界は複雑になった。金、政治、ネットワーク……純粋なカラテ以外にあらゆる力が存在する。  しかし、ここに希望がある。  ロード・オブ・ザイバツしろしめすニンジャ千年王国を提唱

ザ・マレフィセント・セブン #4

◆四人目◆  これまでの人生の出来事が、今際の際にニューロンに再生されることをソーマト・リコールという。  人間の死ぬ瞬間はそういうものだと、レッドステッチは知っていた。  かつて人間としての彼の死の瞬間が、まさにそうだったからだ。 ◇ ◇ ◇  キョート共和国は二層に分かれている。東のネオサイタマを始めとした「外国」からやってくる観光客むけのアッパーガイオンは、共和国として独立する以前からの古い町並みを残す法規制と秩序に守られた美しの都市。  しかしてその下層には、ア

ザ・マレフィセント・セブン #5

◆五人目◆  六体目……すなわち、四人目の裏切り者の爆発四散の跡は、電源の切られたカケジク型モニタの連なる回廊にあった。  放射状に飛び散った肉片の中、片目がぽっかりと空洞になったニンジャの頭を、ネオサイタマ製耐毒ワーキングブーツが蹴り飛ばした。 「やめろ」  ランチハンドはアプレンティスを叱った。 「ヘッ、いいじゃン。どうせもう死んでンだぜ」  アプレンティスは唇を尖らせて不敵に言い放った。  が、ランチハンドがじっと見つめると、その小ぶりな鼻から盛大に息を吐いて

ザ・マレフィセント・セブン #6

◆六人目◆ 「今の見たか、ワックスワーク=サン」  去ってゆくワッチドッグを呆然と見送るワックスワークの背中に声がかかった。  グランドマスター・ケイビインの部下として、ともにキョート城の中庭エリアとビジター区を警備するストラングラーヴァインである。 「消えちまったな、さっきのやつ」  ストラングラーヴァインはヒュウと口笛を吹いた。  確かに、恐るべき猟犬ニンジャ・ワッチドッグに追われ、恐怖に歪んだ顔で、キョート城中庭と、彼らのいるビジター区を隔てる強化ガラスを叩い

ザ・マレフィセント・セブン #7

◆七人目◆ 「イヤーッ!」  そのカラテシャウトを耳にした時、リフォーマーは失われた味覚を悲しんでいた。 ◇ ◇ ◇  ……彼は生きていた。  ラパチーニのドクシン・ジツを受けた瞬間、己じしんにトリケ・バヤ・ジツをかけ、皮膚感覚と味覚を入れ替えたことで、即死を免れたのだった。  その後、コディアックベアの爆発四散に紛れるまで、己の死を偽装した彼は、ホンマル内の緊急治療室に潜入し、手当たり次第薬を用いて解毒を済ませた。  しかし、トリケ・バヤ・ジツを解除しても、味覚

スリー・ニンジャズ・アンド・ベビー #1

プロローグ  月。  我らが地球の姉妹星。夜を照らす無慈悲な女王、神秘と隠秘の守護者。その白銀のオモテに浮かぶ模様は、かつてマツオ・バショ―がハイクに『ウサギがカメ殺しの魔剣を鍛える』と詠ったほどに、神話伝説めいてポエット。  しかし、今、マッポーの近未来都市ネオサイタマの上空に輝くそれを、読者はなんと見る?……しかり、ドクロだ。ポエットとはほど遠いサツバツとしたレリーフ。いかにその模様が刻まれたか……遠く電子戦争以前の出来事を語る時は今ではない。  では今は何を語る?  

スリー・ニンジャズ・アンド・ベビー #2

ホラー・アット・ デイ・ナーサリー  深夜……ネオサイタマの闇を駆ける者あり。  高層ビルから別のビルへ、軽々と飛び移るは何者?  ……しかり、しかり。イグザクトリー。それはニンジャである!  メンポの上の虚ろな眼差しは、目の前の光あふれる近未来都市のマンゲキョめいた美しさに小ゆるぎもせぬ。ただ己の行く先のみを見つめ、跳躍と疾走のルートを判断するための、ニンジャ知覚力の情報源としてのみ活用する。彼はニヒリストであり、リアリストであった。  アドバンスド・ショーギのグリフ

スリー・ニンジャズ・アンド・ベビー #3

ワット・イズ・ デッド・アイズ・ウォッチド  ズダダダダダ! ギョワギョワギョワ! 「コ・ロ・セ! コ・ロ・セ!」ボーカルのヘルボーイが朱塗り顔を突き出し叫ぶ! 「「「「コ・ロ・セ! コ・ロ・セ!」」」」ステージを覆うのパンクスどもがコール! 「ブッダの首を、賭けろ!」 「「「「賭けろ!」」」」  ギョワーン!  その時!  SPAAAAK! ステージサイドの巨大スピーカーが火花を散らす! 「「「「アンタイセイ!」」」」沸き立つファンたち! 「ヘッ、またやッてら」  ライ

スリー・ニンジャズ・アンド・ベビー #4

スリー・ポートレイト・ オブ・ニンジャ・ファミリー「……父者、どうだ?」 「……感知できぬ。逃げられたか」  タイラントは憎々しげに吐き捨て異常発達両足を踏み鳴らす! BOOM! アスファルトに亀裂が走る。 「忌々しい小娘め! 切り刻んでやれたものを!」  リヴィングディスパイアも憎々しげに吐き捨て、テレビアンテナを切断! SLAAASH!  ピーピーポ! ピーピーポ! サイレンが近づく。ネオサイタマ消防署の鎮火ビークルが出動したのだ。しかし、親子ニンジャは炎上ビルの屋上に

スリー・ニンジャズ・アンド・ベビー #5

オーファンズ・クライ・イン・マーシレス・ワールド ……前夜。 「恐いか」アンバサダーは問うた。 「うッせェ」イグナイトが応える。  いつもの減らず口。しかし視線を合わせぬ。炎のような赤い瞳を縁る長いまつげが震える。  そこにアンバサダーは怯えを見た。 「では……いくぞ」 「おう……」  二人の距離が縮まった。イグナイトが目を閉じた。 「ダア!」  アンバサダーの腕の中、彼の装束の飾りをいじっていた赤子が、それ離してイグナイトを見た。 「ダア! ダア!」  小さな手を、邪悪ドラ

スリー・ニンジャズ・アンド・ベビー #6-1

スリー・ニンジャズ・アンド・ベビー「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」  リヴィングディスパイア連続斬撃! 両腕の振動ブレードはさながらサミダレ・レインめいて付け入る隙なし!  しかし! 「フーンク! フーンク! フーンク!」  インペイルメント見事! 機動性で劣るザオ・ケンをニンジャ膂力で制御し、連続斬撃を完全防御! タツジン!  さらに! 「イヤーッ! いい加減死ね! イヤーッ!」  リヴィングディスパイアの頭上に、炎の輪が花火めいて点火! 怒りの炎が舞い降りる! マッ

スリー・ニンジャズ・アンド・ベビー #6-2

スリー・ニンジャズ・アンド・ベビー(後編)「ドーモ、ストーンコールド=サン」  シルエットの片方……薄汚れた高級スーツに身を包んだニンジャが、トラディショナル意匠のメンポの奥からアイサツ。その瞳が冷徹なニンジャの怒りに燃える。 「アンバサダーです」 「ドーモ、ストーンコールドです。ホホ」  ストーンコールドはアイサツを返し、もう一方のシルエットを睨みつけた。その瞳は再び狂気に塗りつぶされている。 「また、ホホ、邪魔しに、きた。ホホホ、返せ、私の、ホホ、アカチャン、返せ」 「こ