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<5>「人は10年の人生を10回生きる」短編小説型の人生/キャリア論

新たな自分に変わる方法について書いた1つ前のコラムの最後に「人は一生で一続きの人生/キャリアを生きるのではなく、複数の人生/キャリアを生きる」という短編小説型の人生/キャリア論に言及しました。
(参照:新たな自分に変わる秘訣は3つのステップに有り

それでは、人生物語全体の中の1つの短編小説であるミニ人生/キャリアはどれくらいの期間が妥当なのでしょうか?


人生/キャリアを10年1単位で考える

従来の年功序列型の会社では入社して20年後位に部長になったら1つの事業に裁量権を持って仕事が出来るようになっていました。その為に社員は20年間頑張って部長を目指すぞ!と考えて働くイメージでした。

でも今は20年後どころか10年後だってあなたがやっている仕事があるかどうかなんて分かりません。そもそも現職を続けているとは限りませんよね。社会だって10年後にどうなっているのか、想像もつきません。少なくとも非常に大きく変わっていることでしょう。

そして、そもそもその様な早くて激しい変化の中に身を置くと人間と言うものは適応し成長していきますので、10年も経過したら同じ人でも別人の様に変化していることでしょう。特に、自らの人生をより輝かせたい、自分のキャリアをより良いものにしたいという思いをお持ちの人であれば尚更です。

そこでお勧めなのは、人生/キャリア全体を構成する1つ1つのミニ人生/キャリアを10年で1単位と考えることです。今は人生100年時代と言われています。しかし、我々は100年一続きの人生を1回生きるのではなくて、10年の人生を10回生きるという考え方です。人生10年×10回の法則です。

人生はいつでもリセットできる

1つのミニ人生/キャリアから次の人生/キャリアに移行するタイミングは他人が教えてくれるのではなく、自ら意図的に判断しないといけません。時には「このままで良いのか」という内なる声が聞こえ始めて節目の時期が近づいてきたと気づくときもあれば、節目が近づいているけれども自分自身は気づいていない時もあるでしょう。(この先のコラムでも、従来の人生/キャリアをリセットして、次の人生を始める為の方法を本マガジンでは皆さんに紹介して、更にそれに取り組む為のガイドをしていきます。)

仮に今あなたが自分の人生やキャリアに何も問題が無いと思っていたとしても、人生/キャリアは10年単位で考えることをお勧めします。
尚、10年というのはシンボリックな数字として申し上げているので、それが8年や12年など前後しても問題ありません。

自分が「今の人生やキャリアを変えたい!」「新しい自分に変わりたい!」と思うタイミングで、人生/キャリアはいつでもリセットできるのです。

ライフステージを時系列で俯瞰すると

さて、人の一生を俯瞰して見ても10年×10回は案外、理にかなっているかも知れません。

ライフステージを時系列の視点で見ると、誕生から10歳までで児童から少年少女へ移行して行きますし、10代で中学高校の生徒から成人へ、そして10代終盤や20代初頭は学生から社会人になります。30歳前後は仕事では自らの専門性の確立や昇進して責任を持ち始める時期であり、プライベートでは結婚などもあります。40歳前後は中年の危機とも言われるアイデンティティの大転換期ですし、50歳位からはこれまでの人生/キャリアの総仕上げに入ります。60歳位からは現在の雇用制度では退職があります。将来的には制度が変わっている可能性がありますが、いづれにしても60歳以降は次第に多くの場合は仕事中心の生活から変わっていくことでしょう。

こうやってライフステージを時系列で見ると、人の一生は学生時代~青年~中年~壮年~老後との時間の流れの中で、人は概ね10年毎に内的または(及び)外的な変化の時期を迎える傾向にあることが分ります。そうであれば10年を1つの単位として考えて良さそうですね。10年毎にリセットして、新たな自分に変わるのです。(前述した様に、きっちり10年でなくても10年前後であれば構いません)

外部環境の変化(ジョブ型雇用の広がり)

更に、我々を取り巻く外部環境に目を向けてみると、最近は技術革新と産業や社会の変化のスピードが非常に早くなっています。加えて、日本社会の雇用はメンバーシップ型雇用(職務を特定しない雇用)から、ジョブ型雇用にシフトしていく流れにあります。

ジョブ型雇用では会社が個人のキャリアを決めてくれることはありません。自分の仕事内容をレベルアップすることや年収を上げたければ新たなジョブに就く為に必要なスキルや能力を得て、主体的に成長していかなくてはなりません。しかも、変化が激しく早い社会では同じ職種でも仕事の内容や求められるスキルが変化していきますから(例えば、経理の仕事だと、以前は会計知識があるだけで良かったのが、例えば会計知識に加えてデジタル系のスキルと英語力が求められるように)、同じ仕事を続けていく場合でも新たなスキルを得て、且つ、自分の考えも変えていくことが求められます。

この様に変化が早く、且つ、ジョブ型雇用が広がっていく環境では、我々は一度身につけた専門知識や一度入った会社でまっすぐに定年退職まで働き続けていくという一続きのキャリアや人生を歩む時代では無くなりました。そのような環境の中で我々がサバイバルし、あるいは自分にとっての成功を目指していくのであれば、我々は自分で自分を変えていく必要があるのです。それも、従来の自分に新しいものを足していくだけでは間に合いません。

自分を単にアップグレードするのではなく、自分のOSを入れ替えるかのように新たな自分に生まれ変わることが必要です。自分で自分の人生の時の流れを区切って、その区切りの前と後で別の人間に生まれ変わるがごとく新しい自分に変わるのです。特に、自分の常識、考え方、慣れ親しんだ方法、習慣といった内的な事柄をリセットして、自分を根本的に変化させることは重要でしょう。そして、新たな技能を習得して自分の強みを更に高めていくことも大切です。

人生/キャリア10年×10回の法則

このようにして古くなった人生/キャリアから新しい人生/キャリアへステージを変えて良くのです。このような産業社会や雇用の環境変化の側面に目を向けると、もう我々は一続きの人生/キャリアを生きることは無いと分かるでしょう。

これからは一生の中で幾つかの独立した人生/キャリアを生きる短編小説型の人生を過ごす時代になります。私はその1つのミニ人生/キャリアを10年と考えて、人生100年だとすれば10年一区切りの人生を10回生きるという人生10年×10回の法則をお勧めしています。

10年×10回の人生は、人それぞれ多様なミニ人生/キャリアの組み合わせとなって良いのです。

10年のミニ人生の中身をキャリア中心に過ごす生き方も、そのうちの何回かを仕事、余暇、家庭(またはパートナーとの関係と時間)、学びの4つをバランスよく過ごす生き方も、そのうちのどれかを重視する生き方も、色々あって良いでしょう。

古い自分や10年のミニ人生はいつでもリセット出来ます。今の人生が不本意であればリセットして、次の10年の人生を輝かせれば良いのです。

現在の人生で成功していてもリセットして、次の10年のステージでまた新しいチャレンジをするのです。これからは、人生は誕生から最期まで一続きで1回と考えるのではなく、「1ステージ10年の人生を10回生きる」という人生全体が10個の独立したミニ人生で構成されているという短編小説型の人生を生きる時代です。

(2023年9月19日)
山本恵亮
1級キャリアコンサルティング技能士 

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