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江戸時代の職人の収入と働きぶりを現代の日本人と比較すると?

幕末1861年に来日したシーボルトは
日本で見聞きしたことを日記に記しています。
シーボルトはドイツ人の医師・博物学者で
観察力がするどく医療や動植物の観察だけでなく、
日常で見聞きした町や人の様子が分かりやすく
書かれています。
読むとまるで当時にタイムスリップした様で、
私は江戸時代に来日した外国人の日記を読む
ことが好きです。

で、「シーボルト日記」(八坂書房)に
シーボルトが見た日本の職人についての
記載がところどころあります。

例えば、鍛冶職人と瓦職人については、
次の様に書かれています。

日本の鍛冶職人

江戸で鍛冶職人の仕事場を見た時の
次の様に書いています。
(文字量を減らす為に多少編集しています)

***
鍛冶職人は作業場の土間に座っている。
右足の太ももをぴたりと胸に当て、
ふくらはぎを太ももに引きつけている。

左足はふいごの方に伸ばし、
左足の親指と2番目の指で器用に
ふいごのペダルを踏み、
そして鉄を打つ時には必要に応じて
空気を入れたり出したりしている。

鋏(やっとこ)と金槌を用いるのは
わが国(ドイツ)の鍛冶職人と同じだ。
しかし、その姿勢、土間に座っての仕事は
ヨーロッパ人はそういう姿勢で力を出せないし、
長時間、ましてや一日中は耐えられないだろう。

彼は左足を全然気にもかけていない様に見えるが
すばらしいタイミングで、必要な力を加えて
炭と鉄を灼熱させているのだ。
***

床に座って力仕事を長時間している集中力や、
左足でふいごのペダルを操作して空気を送りつつ
手で鉄を金槌で打つという器用さに驚いている様です。

日本の瓦職人

屋根の工事をする瓦職人についても
詳しく書いています。
瓦職人と書いていますが、
観察したのは「こけら葺き」の屋根の様です。
(柿の木の板で屋根を葺く日本独特の伝統工法。
古いお寺の屋根などで見られます)

***
日本の瓦職人は非常に手際よく屋根を
こけら板で覆う。

彼らはこけら板を正確に重ね、
これを足で踏み固め、独特の金槌を使って、
竹製の釘でこけら板の下部を固定させる。

この様な屋根はとても軽く、水漏れしない。

彼らはその釘を口に含み、
柄の真中に取り付けられた丸い鉄製の板で
押しつけ、これを四角の金槌で叩く。
***

職人の仕事の仕方がリアルに描かれています。
竹の釘を使うのですね。
現代も同じ工法でなされていて、
国の重要文化財の建物などで、
上記の工法で葺かれた屋根があります。

江戸時代の職人の収入は?

シーボルトが見て驚いた真面目で集中力があり、
器用に手際よく仕事をする江戸時代の日本の
職人さん達の収入はどの程度だったのでしょうか?

賃金については日記には記載されていませんが、
「江戸の銭勘定」(山本博文監修)によると
大工さんの年間収入は銀1587匁6分で
現在価値だと約476万円とのことです。
諸説あり他には約250万円や約150万円など
といった情報もあります。

職人は技術や立場で収入に差があるでしょうし、
賃金は銀で支払われていましたが、
当時も銀は相場で価格が変動してましたので
現在価値に引き直すと時期によって
金額はある程度の幅がでるのでしょう。

案外、良い収入の様に見えますね。
当時、大工さんはエリートだったと言いますし、
大都市の江戸ではニーズも多かったのでしょうか。

真面目に働く気質は昔も今も変わらず?

真面目な働きぶりや器用さ、
そして、シーボルトの日記の他の箇所でも
述べられていますが、製品の細やかな出来栄え
などは当時から日本人の特徴として
描かれています。

鍛冶職人が一日中座って仕事…
今は会社勤めだと一日中デスクワークを
していますね。
我々が人に言われなくても、
長時間集中して仕事するなど勤勉なスタイルは
脈々と受け継がれてきたことの様です。

江戸時代の職人は仕事を頑張った後、
握りずし(一貫4文・約120円)と
お酒(一升250文・約7500円)なんかを
楽しんでいたのでしょうか。
でも、お酒が一升瓶で7500円ってちょっと高めですねw

(2022年11月21日)
山本恵亮
1級キャリアコンサルティング技能士

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