見出し画像

人が変わるべき時に変われないのはなぜか

ダンテは人生の道の半ば、三十五歳の歳に暗い森の中に迷い込む~
神曲・地獄編の始まりの言葉です。この物語が書かれたのは700年以上前で読み継がれている古典ですが、人は人生の半ばで悩むものだと述べられているかのようです。

このままで良いのか?

現代社会における我々の生き方を見てみると、20歳前後に社会人になって数年間まずは一人の人間として自立する為に頑張って、30歳前後くらいからは自らを大きく成長させて仕事や家庭など自分にとって大事なことに没頭していきます。仕事では会社で重要な役割を担うようになったり、転職をしてキャリアアップをしたり、中には起業して事業を拡大させるなど、成果を上げ始めることが多い時期ですね。こうしてイケイケで突き進んでいって、
ある日「あれ?このままで良いのかな?」と感じ始めるのが30代半ばから40歳前後です。

皆さんはどうでしょうか?社会人として10年、20年と頑張ってきて活躍もしたけれど、どうも最近これまで上手く回っていたことが回らなくなってきた、興味を持っていたことに興味を持てなくなってきた、人生の目的を見失いつつある、このままでいいのか?という不安は生じてはいないでしょうか?

新たな自分に変わるタイミング

私はキャリアコンサルタントの仕事をしていますが、この仕事をしていると、このような悩みをお持ちの方々に沢山出会います。これ、地味につらいんですよね。心理学用語でmidlife crisis(中年の危機)という言葉があるように、成人中期に差し掛かって不安や混乱が生じることは誰にでも起こる普通のことです。そういうものなんです。

なにがしかのきっかけで自分の心境変化に気づくことが多いのですが、例えば、仕事での昇進や家庭での子供の誕生などにともなう自身の役割の変化がきっかけとなることもあれば、昨今の様に環境変化が激しくなると、今まで自分にとって上手く機能していたことが機能しなくなることで気づくこともあります。

新たな自分に変わるタイミングが生じているのです。

変わりたいのに変われない理由

そのような時期についやってしまいがちなことは、焦って今まで通りの考えとやり方で今まで同じ発想の新たな取り組みを始めることです。

例えば、大学受験に合格した後に目標を見失って空虚な気持ちになった時に、慌ててよく考えずにとりあえず難易度の高い資格試験の勉強を始めるといったようなことです。(もちろん目的があって資格取得に取り組むことは素晴らしいことです。)これは一見新しい取り組みに見えますが、自分が空虚な気持ちになった原因に向き合わずに従来と同じような別の取り組みを始めているに過ぎません。問題を先送りしているだけです。これでは近い将来に同じような問題が生じてしまいます。

この様に自分が変わるべき時期に差し掛かっているにも関わらず、従来の焼き増しをしているだけでは変わることが出来ません。これが変わるべき時に人が変われない時の行動パターンです。

立ち止まって考えるべきこと

ですから、変わるべきタイミングがきたら、反射的に新しいことに取り組むのではなく、一度立ち止まって考えるべきです。
そして、考えることは下記のようなことです。

・自分の周りでどのような環境変化が生じているのか。
・その変化が自分に与える影響は何か。
・自分にとっては何が終わろうとしているのか。
・手放すべきものは何か。

新しい自分に変わるのは、ある日を境に急に変わるのではありません。
変身は切り替えではなく、プロセスです。
まずは従来の古い自分が終わることを認識することが第一歩です。
終わりの認識と手放すべきものを手放すことなしには、新たな自分に変わることも、新しい始まりも訪れません。

終わりを認識すること。
これが変わるためのコツです。

(2022年4月24日)
山本恵亮
1級キャリアコンサルティング技能士
プロフィール 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?