シリコンバレーで起きている格差は、日本の将来像か?

宮地ゆうさんの著書「シリコンバレーで起きている本当のこと」を読みました。ITベンチャーが続々と生まれているシリコンバレーは、アメリカンドリームが実現されている夢の場所という姿だけでなく、すさまじい格差がある状況をリアルに描いています。

IT企業の高給取りの人々が集まる陰で、家賃が上昇してもともと住んでいた人達が賃貸可能な住宅が不足していることや、低所得の人々が家を借りることが出来ずホームレスになっている、ことなど。冬の夜は24時間巡回バスがホームレスの人々の寒さをしのぐホテル代わりになっている、というエピソードなどをリアルに紹介しています。

資本主義が徹底されている自由な競争社会の行き着く先の光と影を垣間見ることが出来る臨場感ある内容の本でした。私もアメリカに住んで仕事をしていたことがあるので、この本で述べられていることが皮膚感覚で分かります。病気をしたり、怪我をしたりして働けなくなったら、職を失って一気にホームレスになってしまう恐怖と隣り合わせ・・・という感じです。

この本はアメリカの社会問題を描いていますが、読後感としては、そこに書かれている様子は日本の近い将来像を表しているかも、と感じてしまいます。

すでに現在の日本の状況も、6人に1人が貧困であることや相対的貧困率で日本はアメリカに次いで4位であることなど、既にお世辞にも豊かな社会とは言えない状況に陥っているのですが、私は人の職に関わる仕事をしているので、それがとてもリアルに見えます。

30歳~34歳の平均年収を厚生労働省の賃金構造基本統計調査で見ると270万円弱です。この中でも会社規模や性別、学歴などで差があり、例えば、大企業の男性は約320万円、小企業の女性は約210万円と100万円ほどの開きがあります。

この100万円ほどでも大きな差だなーって感じますが、統計ではなく個別の年収水準を見ていくと、もっとリアルな差が浮き上がります。例えば、同じ30代前半の年齢層で、外資系金融機関やコンサルティング会社等の専門職では年収2000万円以上だったり、国内系企業でも大手商社や金融機関の本社勤務などのエリートコースだと1000万円以上です。

ただし、年収2000万円といっても、毎年昇格しないと解雇というUP or OUTの環境であったり、土日もなく連日朝~深夜2時まで仕事で、勤続3年以上の人は稀という職場であったりして、皆さんご苦労されているのですが。

とは言え、金額だけに着目すると、こうしてみると日本でも、30代前半の若い年齢層で全国平均と一部の高給層で5倍、10倍の格差があるのが見えてきます。10倍ってすごいですよね。

この平均年収200万円~300万円を下回ると、家族がいると食べていくのがやっとになってしまいます。昔のように年齢と共に収入が上がるならいいですが、今はそんな時代ではなくなっており、労働者としては収入を上げるのが大変な社会になっています。

この傾向が10年20年続いてしまったら、と考えると恐ろしいですね。収入を上げられず、その場に固定されるというのは社会問題です。ほんと「シリコンバレーで起きている本当のこと」と似たことが起きるような社会にならないように祈るばかりですが、祈っていても仕方が無いので、こんな厳しい社会を上手く泳ぎ回る知恵を身につけたいものです。

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