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ナポリ風ズッキーニのスパゲッティ

 2000年以降、食卓にのぼるようになった夏野菜といえばズッキーニ。当初はみんなキュウリの亜種だと思われていたようですが、実際にはカボチャの仲間。ちなみにズッキーニの皮や種には胃腸を刺激する毒素成分があるのでキュウリのように生食するとお腹を壊しますのでご注意を。死にはしないですが…。
 で、このズッキーニは収穫するのが大変で、ある日いっせいに実をつけ、半日もほおっておくと巨大化してしまうんですよ。大きすぎるズッキーニは食べられないことはないのですが、種が大きくなることと、中心部が柔らかくなりすぎて調理するとぐずぐずになってしまうのです。
 この大量に収穫されるズッキーニを飽きずに美味しく、たくさん食べるための料理。それが、今回のナポリ風ズッキーニのスパゲッティ。正確にはナポリではなくアマルフィやネラーノですが、なかなか日本人には伝わりにくいので当店ではナポリ風と表記しています。

作り方

(村上春樹を読んだ直後なのでちょっと小説風に書いてみました)

 まずはズッキーニを素揚げにする。切り方は厚さにばらつきをもたせた銀杏切りか輪切り。日本人のように神経質に均一な厚さで切っては「らしく」仕上がらないのだ。正確に言おう、「食べ飽きる」のだ。不揃いの部分が微妙な味の変化に繋がり、食感にも変則的なリズムが生まれるのだ。
 地中海に面した温暖な気候のイタリアは日本以上に食材に恵まれている、一方で大量に収穫される食材の「飽き」との戦いでもあるのだ。日本人にはない、イタリア人特有のおおらかさ…というかテキトーさがこの戦いの勝利に功を奏しているのだろう。

 話を料理の行程に戻そう。フライパンにオリーブオイルと潰したニンニクを入れ火にかける。ニンニクの香が出始めたところにバジルをちぎり、ケッパー、パスタのゆで汁、揚げたズッキーニを入れ、ズッキーニを少し潰しながら 加熱する。潰したトロっとしたズッキーニとゆで汁、オイルが徐々に乳化し、もはやズッキーニのシチュー!
 茹で上がったスパゲッティを入れ、パルメザンチーズとエクストラバージンオリーブオイルをケチらずに入れて手早く混ぜる。
 皿に盛り付け、仕上げにパルメザンチーズを削り、挽きたての黒胡椒を少々。
 
渾然一体となったズッキーニのソースが絡んだスパゲッティ。そこへスパイスの役割のケッパー(風鳥木という木の実の酢漬け)と黒胡椒。香りのバジルとニンニク。無駄のないシンプルな構成でありながら飽きこないイタリア料理のエッセンスを感じる一皿。これは「ピッツァ マルゲリータ」「スパゲッティ カルボナーラ」を初めて食べたときの感覚に通じるものがある。


初期の頃につくったもの。
コースの〆として。潰す作業をハンドミキサーでおこなったのでより一層ソースにシチュー感がでた。

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