2019.07.28 ファッキン元気ババアめ!

最近疲れが歯に来るのよ~まぁケロリン飲んだら治るんだけどね、大抵のことはケロリンでケロリんよ、なんちゃって、ふふふ、面白くない!あはは、全然面白くない!やだぁもうぅ!オヤジギャグなんて!トシねぇ~!やだやだ!

と一人ツッコミで盛り上がっているのは、この情報社会においてフルネームがメアドという最強にロックな生き方をしている祖母、御年92歳、オヤジなんて軽く凌駕してスーパーババアである。
もはや妖怪にカテゴライズされてもよいのではと思えてならない。

去年まではメールでやり取りをすることが多かったが、
とうとう文字が読めなくなったので出来るだけ連絡は電話にして頂戴、
と言われ最近は電話をかけるようにしている。

だが人と話すというより音量が確実にシャウトに近い祖母は、
アリーナのみんなぁぁぁ~!
のテンションと声量でコール&レスポンスを始めてしまうので、
電話が終わった後はしばらく耳にアイスノン、
せせらぎだけを聞いて生きていきたい…
と虚空を見つめる時間が必要になる。

寄る年波には勝てず腰も痛くなってきたので、
重いものを運ぶときは座布団にのせてスベリをよくしてから、
カーリングの要領でホウキを使って廊下をツルツル滑らせて運搬しているらしい。
このファッキン元気ババアめ!

(あらゆる意味で)死ぬまで乗るんだろうな…
と思っていた車もついに手放すことに決めた模様で、
次の大安には免許を返納するということであった。
無駄に吉日を気にしがちなところも祖母の魅力の一つだ。

本人は、“神様に返納するって形にならなくてよかった~”
とスーパーババアギャグをかましていたが、
ギャグがワキガ並みにキツイのでやめてほしい。

だが田舎は車がないと本当にどこへもいけない。
スーパーまで徒歩40分とかザラにある。
20代はいいのよ、と桃井かおりも以前どこかで言っていたように、20代ならいい。
祖母はそのほぼ5倍の年齢だ。全然よくないのである。

スーパーの帰り道にパタと倒れてしまっても、
どうせカカシか何かだろといって救急車さえ呼んでもらえない可能性も高い。

そんな田舎あるあるを危惧してか、
息子二人(私の父と叔父)が車の代わりになるアッシー君を買おうとしてくれているとのことであった。

や:電動自転車なら楽だしいいんじゃない?よかったじゃん。
祖:それが自転車じゃないのよ
や:バイク?それ車より危険じゃない?
祖:バイクならまだよかったわよ。三輪車よ、さん、りん、しゃ!

自動車から車輪が一つ減っただけではあるが、
三輪車を与えられる年齢になってしまったことに大ダメージを受けた祖母は、
何の罪があってこんな苦行を…
と歯(自前)をギリギリ言わせて乗車を拒否している。

ババアプライド。
女にだって意地はあるのだ。

たとえそれがハイテク三輪車(イケてるヤツ)であっても、
三輪車であるという事実は変わらない。
どんなに頑張っても車にはなれない、自転車(二輪)でもないのだ。

クソ野郎が!次に三輪車を私の前に持ってきたらアイツらごと燃やしてやるわ!

と息巻くロックなババアなら、道で倒れて血まみれになっても自力で起き上がって帰宅しそうなので、まぁ今のところは大丈夫だな…

妖怪の孫はそう呟くとそっとスマホを暗転させ、
冷凍庫からアイスノンを取り出すと、しばし虚空を見つめた。

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