2013.07.18 勇み足がすぎるわたしは今日も筋肉痛

坊主になり損ねた。
これでもう5回目だ。
いつもいつも思う。
今回ばかりはあたしゃやるんや、やったるんやと。

ATSUSHIさん見といてや!
まつもっさん待っといてや!
自分、一髪刈り上げるさかいに!よう見といてや!と。

前の晩何度も、何パターンもシュミレーションした。
(DJケミカルの妹オーディションがあったらどうしよう)
(坊主オブザイヤーに選ばれたら何を着よう)
(シャンプーか石けんか)
とか。色々。

坊主ライフが見せてくれる夢を、余すことなく見ていた。
はずなのに。
またしても坊主にはなれなかった。

「うん、いつも言ってるけどさ、坊主ってメンテめんどくさいし、今はこのぐらいが似合ってるからいんじゃない、ね?」

という担当S子のクールなサジェスチョンに、易々とピヨってしまった。
我ながら見事な寝返りだ。

〈言いたいだけ、あんたは坊主にしたいって言いたいだけや。ほんまにヤるヤツはしたいと言う前にするヤツや。〉

と内心は極妻モードにも関わらず、
毎回「やめとけ」とナイストスを出してくれるS子のお陰で、
わたしは毎度「やっぱやりません」という貧弱アタックを決められるのだ。

苦しくったって悲しくったって、コートの中ではプロの美容師なのだ。
S子、S子ナンバーワン!

しかしどうしてこれほどまでに坊主に憧れるのだろうか。
何か因縁めいた物や人がいたからだろうか。
そう思って過去を思い返してみると、やはりI田君の事ぐらいしか思い当たらず。
というか海老蔵I田君以外に坊主の知り合いがいない。
だからきっと、I田君のせいだ。

高校時代ずっとずっと好きだった。
入学式から卒業式まで、おはようからおやすみまで、ずっと好きだった。
坊主なのにこんなにカッコいい人がいるんだ…と胸が熱くなった。

友達や先生やミニスカートや寄せてあげてブラや
後輩や先輩やフェロモン香水やさりげないメールの数々…。
わたしは持てる全てを稼働させてぶつかっていった。

なのにI田君は一ミリもなびかなかった。
岩のようにそこから、動かなかった。

わたしの何がダメって全部がダメで、なんかもう、
生理的に受け付けない部類に入れられてたんじゃないかと思う。
酸味が強すぎる、思い出、思い出、思い出…(エコー

顔を忘れた今もI田君の幻想のような坊主頭が瞼の奥でキラキラとしていて、
手に入れられなかったモノに対する強い憧れやシンパシーみたいなものを、
だからこそ余計に感じてしまうんじゃないかなと思う。

まぁ坊主頭になったところでI田君は手に入るわけでもなし、
むしろお揃いの頭に気味悪がられますます溝が深まってしまうだろうし、
そもそもI田君は今坊主なのかどうかも分からないしで、
勇み足がすぎるわたしは今日も筋肉痛なのでありました。

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