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要らない人材の反逆

(Twitterはこちら → @yanagi_092)
※このnoteは、毎週土曜の夕方に投稿しています

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前回記事のとおり、果たして自分が「出世のレールに復帰した」のか「奴隷」なのか分かり兼ねる状況でしたが、次年度の管理職への昇格に大きく影響する中間評価の時期になりました。


運命の中間評価

それは11月下旬のことでした。中間評価のフィードバックを受けるため、それぞれ個別に会議室へ呼ばれます。

上司「今年はよく頑張ってくれているのだけど、まだStageEに昇格して間もないということで・・・」

このように、人事評価の結果は芳しくありませんでした。この年は勝負の年と思っていましたので、なりふり構わず、繁忙期は31日間の連勤をしたこともありました。得意のエクセルを駆使して、少しずつ「テンテンチェック(←膨大な紙資料の突合)」を撲滅するフローを確立したり、私なりに成果を出していたのですが、人事評価はイマイチでした。

いつもは極めてロジカルな上司なのですが、この時の人事評価に対する明確なフィードバックがありません。全て「StageEになったばかりだから・・・」との説明に終始していました。

ぼく「この人事評価だと、来年も管理職への昇格は無いだろう。というか、いつもロジカルな上司なのに、今日は歯切れが悪いな。いずれにせよ、僕が『奴隷』で確定していることは分かったよ・・・」

未来


奴隷に人事評価は付かない

実は、中間評価の前から、綿密なリサーチをしていました。全ての情報、持てる人脈を最大限に駆使し、自分の置かれている状況を徹底的に調べ上げたのです。このリサーチ力は、損害サービス部門で不正請求事案の調査をしていたときに培われたのだと思っています(笑

まず、東京海上の総合職においては、入社11年目に「StageE」への選抜が行われます。この選抜に、ストレートもしくは1年遅れまでに選ばれた場合、選抜人材を育成するためのシステムにエントリーされます。そして、このシステムに入り込むことができれば、将来の幹部候補生として各人毎に育成計画書が作成されます。具体的には「いつまでに昇格をして、どのような研修を受ける必要があるか」等のレールが引かれますので、大きなミスをしない限り、ある程度の会社人生は保証されます。

一方で、このシステムにエントリーされない大半の従業員は、この時点で入社年次毎に人事考課を管理する「年次管理」から外れ、全ての年次がごちゃ混ぜになった「バルク」(←バラ積み貨物の意味)と呼ばれる集団にまとめられます。この「バルク」に入ってしまうと、ここから先の昇格は極めて難しくなります。その結果、どんなに頑張っても「過去ダメだったから、この程度の頑張りでは挽回できない」等、バルク従業員に対して納得感の無いフィードバックが横行しています。

そして、終身雇用を前提とする日本企業において、このような仕組みを従業員に通知することはありません。なぜなら、日本型終身雇用の会社において、解雇できないバルク人材の活用は至上命題であり、人件費ファンドの縮小により昇格等の給与で報いることができないにもかかわらず、「やりがい」や「活躍」という名の下に、バルク人材が「働かないおじさん」化しないように躍起になっています。これは東京海上に限った話ではなく、日本経済が構造的に地盤沈下を起こして30年が経過し、終身雇用制度の負の側面が顕著になってきているのではないでしょうか。以前のnoteで述べましたが、1980年代における社会主義国家の状況(頑張らせたい国家 vs 頑張る意義を失った労働者)によく似ているように思います。

なお、東京海上に限らず「私ってバルク扱いかも・・・」という懸念がある方は、上司からの人事考課フィードバックによく耳を傾けてください。年次管理から外れたバルク人材に対しては、飼い殺しが前提となる結論ありきのフィードバックですので、「どんなに突っ込んで聞いても、論理的な回答が来ない、明確な指摘も無い」「とりあえず過去のせいにして終わる」等の内容に該当する方は、バルク人材である可能性が高いと思われます。

日本型終身雇用の会社に長く在籍していると錯覚しがちですが、会社と従業員の関係において、常に利害が一致する訳ではありません。特にバルク人材になった場合は、原則的に双方の利害が一致することは無いと考えられますので、会社側からの結論ありきのフィードバックを正面から受け止める必要はありません。

奴隷


奴隷に残された選択

選抜人材育成システムへの復帰を目指していた私にとって、「奴隷」が確定していたことはショックでした。帰宅時、東京駅の山手線ホームで立ち尽くしながら「社内公募でコーポレート部門へ異動しなければ良かったのかな。損害サービス部門に残っていれば、こんなことにならなかったのかな・・・」等、どうしてもタラレバを考えてしまいます。

奴隷である以上、頑張ることに意味はありません。むしろ、頑張り損になることは明らかです。いち早く「頑張らない」方向に舵を切り、「働かないおじさん」を目指すことが最も合理的な選択であることは理解していました。

しかし、他人からの評価ばかり気にしてきた私は、他人の目が怖いし、嫌われる勇気も持てない。他人から「やなぎも落ちぶれたなぁ、昔は頑張ってたのにぃ~」と言われることを想像するだけで、とても怖い、手が震える。このように、臆病な私は簡単に「頑張らない」方向に舵を切れそうもないので、最も非合理的な「奴隷の身分で頑張る、未来の無い頑張り損」の道しか残っていませんでした。

1時間くらい駅のホームに居たでしょうか。何をどう考えても「頑張り損」の結論しか出てきません。

ぼく「残りの人生を『頑張り損』のために会社に奉げるのか・・・、奴隷と君主の関係かよ。なぜ奴隷から抜け出せないんだ、そうだよ安定だよ。安定と言う名の愉悦と引き換えに、バルク人材は奴隷に甘んじるしかないんだよ」

ぼく「東京海上はいい会社と言われるけど、何を根拠に?親世代の主観的な幻想に過ぎないのではないか。今は自動車保険バブルが崩壊して給与も下がる一方だし、足元の状況を正確に理解するには比較対象が無いと分からないよな・・・、そうだよ比較だよ!」

ぼく「比較しようぜ、何を考えても『頑張り損』の結論しか出てこないなら、他社と比べればいいんだよ」

ぼく「USCPAの勉強を始めたばかりだし、合格してからでもいいんじゃないか・・・、いや良くない。とりあえず行動、行動するのはタダだ!今すぐ動くのだ!」

そして、私はスマホでリクルートエージェントのサイトを開きました。記入する内容が多かったので、PCでやればよかったのですが、「思い立った瞬間、そこが出発点」ということで、山手線のホームでスマホを駆使しながらリクルートエージェントの登録をしたのです(親指がつりそうになりましたw)。

ちなみに、なぜリクルートエージェントで登録をしたかというと、「有名なリクルートだから大丈夫っしょ」というノリで、何のリサーチもしていません(笑。綿密な調査も大事ですが、この時はとにかく行動しないと人生が終わるとの危機感から、行動を優先させたのでした。


山手線

(続く)

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