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キャリア形成の幻想

(Twitterはこちら → @yanagi_092)

いよいよ3年目になりました。役職も主任に昇格します。保険金支払いの決裁権限も与えられますので、「総合職」感が出てきます。

年収

あと、苦情対応で役職があるのは嬉しいですね。役職が無いころは、以下のやり取りをしていました。

相手「お前、役職は何だ!」
ぼく「ありません!それが何か問題ありますかっ??」

こういった背景から、役職が付くのは嬉しかったです。嬉しくて、名刺を見ながらニヤニヤしてましたねw

名刺

ちなみに、現在の東京海上の総合職は「副主任」を経てから「主任」になるという人事制度の改悪がありましたので、当時とは状況が異なります。


お客様を放置してきた保険業界

保険金不払問題の渦中にあった保険業界ですが、金融庁さんが検査をするうちに、他の問題も発覚します。

金融庁さん「・・・ってかさぁ、事案放置しすぎじゃない??」

当時、事案の管理は担当者任せであり、組織的に長期事案を管理するルールはありませんでした。正確には、自賠責保険の回収期限(時効)をリストで管理していましたが、これ以外には何もありません。

各損害サービス課において、任意で長期事案のチェックをしていたに過ぎない状況でしたので、金融庁さんの話を聞いた本社は、慌てて全店に指示を出します。

長期事案の管理をルール化します。チェック内容を本社に報告してください
お客様への定期的な経過報告をルール化します

「長期事案の管理」「お客様への経過報告」・・・、サービス業では当たり前のことができていませんでした。保険金不払問題と同じく、金融庁さんのお叱りによって、ようやく当たり前のことに目が向き始めます。

<ご参考:保険金支払問題>


このような顧客放置の構造は、上記の保険金不払問題と同じく、少数派である損害サービス部門に十分な要員を割いてこなかった会社のスタンスが大きな原因であって、損害サービス部門の職務懈怠と決めつけるのは短絡的ではないでしょうか。

なぜなら、保険業界に限らず、規制産業であった金融業界においては「いかに売るか」が大事であって、「いかに顧客満足を高めるか」の重要性は低く、顧客接点を担う損害サービス部門に十分な経営資本(ヒト・モノ・カネ)が投下されなかったことから、最低限の顧客サービスすら実現できなかったのは必然の結果だったと言えます。

すなわち、会社が「損害サービスを通じた顧客接点」の重要性を感じていなかったのです。

今でも「損害サービス部門は人が足りない~」という声があると思いますが、昔はもっと人が少なかったんですよ。とはいえ、昔はルールも少なくて、今に比べると色々適当でしたけど。


金融庁さんキレる

その後、事案管理の問題について、各社は「ぎりぎりセーフ」な感じだったのですが、、、

金融庁さん「まぁ、ぎりぎり許してやる。しかし日本興亜ぁ!、お前だけは許さぁぁぁん!!!」

ということで、数年後に行政処分が決まりました。


とはいえ、これは日本興亜社だけでなく、損害保険会社全体の問題だっと言えます。水面下の攻防で「ぎりぎりセーフ」だっただけで、私の知る限り、東京海上でも上記リンク先に掲載されているような放置事案(&自分の放置事案・・・)を多く見てきましたので、各社ともに似たような「どんぐりの背比べ」だったのではないでしょうか。

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損害サービス部門の強制増員

保険金不払問題だけでなく、事案放置問題も発覚。金融庁さんも黙ってはいません。

金融庁さん「おぅ、お前ら、今後はどうするんや!」
損害保険会社「損害サービスの増員を図ります、営業から異動させます!」

ということで、ピックアップされた営業の中堅社員が、いきなり損害サービス部門へ大量異動となります。自分の身に置き換えるとどうでしょう。30歳前後になって、未経験の苦情処理を中心とした世界に放り込まれるのです。モチベーションの維持でも難しい面もあるでしょうし、この異動の後に「第一線で大活躍している」という人は、あまり聞いたことがありません。(一部例外除く)

ぼく「無茶苦茶な異動やな。けど、これって自分でも起こりうる話だし、会社は怖いな。自分の身は自分で守るためにも、キャリアは考えないと。損害部門だけで潰しが効かなくなると、まずいな・・・」

当時、本当に恐ろしく感じたことを今でも覚えています。メンバーシップ型の会社に人生を委ねることのリスクが顕在化した事件であり、世間一般に「良い会社」と呼ばれる東京海上でも、お客様(金融庁さん)の指示でこれほど冷徹になれるのか、主体的なキャリア形成なんて幻想に過ぎないのか、給与が高いからこんな扱いを受けても辞める人は少ないけど、これって札束で従業員の人生を踏みにじっているだけじゃないか・・・等、色々と考える契機になりました。

直近では、損保ジャパン社の「介護会社へ大量異動」がニュースになっていましたが、似たような話ではないでしょうか。

いずれにせよ、この事件で恐怖を感じた私は、再び転職活動を始めたのでした。

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(続く)

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