YAN太郎

ゲームシナリオを執筆するお仕事をしています。ここに投稿するようなのは普段書きません。

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マガジン

  • Silent Atmosphere v1.5

    趣味

  • 時ノ雨

    昔書いた雑魚小説。

最近の記事

Silent Atmosphere #1 2/2

 機体のチェックを終えたシュウイチは、艦内の食堂で昼食をとっていた。 「前、いい?」  ジャンクフードを貪っていたシュウイチが顔を上げると、リリカが立っていた。  その手には定食が配膳されたトレーを持っている。  シュウイチは頭を軽く下げ、肯定の意思を示す。  リリカは当然のようにその前に座った。 「またそんなもの食べてるの?」  溜息交じりにリリカが告げる。 「お前も食うか?」 「遠慮しとく」 「美味いのにな」 「何それ。作戦時間中に食べるまっずいヤツでしょ? なんで落ち

    • Silent Atmosphere #1 1/2

      Silent Atmosphere #1<Silent Time>  突如下された命令に、LIFE軍のシュウイチ・フォレスト少尉は首を傾げていた。 「演習?」 「そう。それも大規模」  シュウイチの問いかけに、モニターの先の人物が答えた。  年の頃はシュウイチと同じぐらいだが、ブロンドの髪を持つ女性だ。 「だから、なぜだ?」 「何? 疑ってるの?」 「理由の問題」  ぶっきらぼうにシュウイチが言う。  するとモニター越しに女性は溜息をついた。 「何? 理由がなければ戦えない

      • Silent Atmosphere #dal segno

         ――With.dom  それはかつての統合戦争時代の後、地上を見捨て、宇宙に楽園を志した人々が集まったコミュニティである。  数十年にも及ぶ隔絶された時代は両者の存在を忘れるには十分な時間だった。  地球に住む人々にとって、世界は地上だけしかなかった。  だから、人々は忘れていたのだろう。  今、この瞬間、時が静寂を満たすまでは。  ――ただいま、シュウイチ。  ただこの一時を待ちわびていたかのように、世界は動きを止めた。  何も知らぬはずの獣が空に向かって眼

        • 時ノ雨 終

           雨が降る日には、思い出すことがある。  とはいえ、ぼやけていて正しく思い出せないのだけれども。  安物のビニール傘を差して、街を抜け、公園へ向かう。  そして、誰もいない公園のベンチに腰掛ける。    雨の日は、よくこの公園のベンチで時間を過ごす。  ここで座っていると、もしかして雨が永遠に止まないんじゃないかなんて考えてしまう。  もちろん、そんなことはないんだけれど。  ――止まない雨はないよ。  不意に、どこからか声が聞こえた気がした。  周囲に人影はない。

        Silent Atmosphere #1 2/2

        マガジン

        • Silent Atmosphere v1.5
          3本
        • 時ノ雨
          4本

        記事

          時ノ雨 下

          「来たね」 「来たよ」  翌日の彼女は、少しだけ明るく見えた。 「今日はちょっと早いね」 「…………」 「どうしたの?」 「僕は……キミと別れた後、いつも何をしているんだろう?」  ずっと考え続けてきた疑問を口にする。 「思い出せないんだ……」 「そっか……」  僕の言葉に、彼女は優しくほほえむ。  だが、それはなんのこたえにもならない。 「僕は……誰なの?」 「アキはアキだよ」 「キミは、誰なの?」 「私は私だよ」  沈黙が流れていく。  空を見上げてみた。  雨は

          時ノ雨 下

          時ノ雨 上

           ――ある日、この世界に雨が降った。  ――止まない雨が降った。  次の日も、そのまた次の日も、雨は止まなかった。  そして……いつしか外には誰も出なくなった。  僕は、今日も彼女に会う。   「おはよう」  いつもの公園のベンチに、彼女はいた。  だけど、今日の彼女はまた一段とずぶ濡れになりながら、むくれている。 「もう夜だよ?」  彼女は声のトーンを少しだけ低めにして、そう言ったので、僕は慌てて時計を見る。八時。  空を見上げる。  いつものように真っ暗な空と雨

          時ノ雨 上

          時ノ雨 ―序章―

             安物のビニール傘を、幾千、幾億もの水滴が叩く。  小刻みに傘を叩く時に発する音は、まるで太鼓のように規則的なリズムを刻んでいるようにさえ思えた。  その伴奏に合わせ、僕の傍らで歩く彼女が歌う。 ――あめあめ ふれふれ かあさんが、 じゃのめで おむかい うれしいな――  確かこの歌には、続きがあったと思うのだが、彼女は止めてしまった。  それに対し、僕が不思議そうな表情でいると、 「私、この歌嫌いなの」 「どうして?」  僕の問いかけに、彼女は僅かばかり顔

          有料
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          時ノ雨 ―序章―

          最近ずっと部屋のデスクトップしかPC使ってなかったからな。たまには使ってあげるぞ、ThinkPad。

          最近ずっと部屋のデスクトップしかPC使ってなかったからな。たまには使ってあげるぞ、ThinkPad。

          他にやってる人が中々見つからない(検索機能が無い)ってのも、案外良い物だな。 天城ブリリアントパークのもっふるじゃないけど、Twitterだと時々世の中から取り残されてる気がするし。

          他にやってる人が中々見つからない(検索機能が無い)ってのも、案外良い物だな。 天城ブリリアントパークのもっふるじゃないけど、Twitterだと時々世の中から取り残されてる気がするし。

          フォルマ・ディフェクト あらすじ

          ――時間連続視欠落症候群――22世紀末、全世界に謎の奇病が蔓延していた。 それは現在、過去、未来の認識が曖昧になるという奇病であり、 発症した人間は、やがて死に至る――。 だが、もしその力を制御することが出来たら…… その力は革新へも、破滅へも誘う。

          フォルマ・ディフェクト あらすじ

          フォルマ・ディフェクト ―第二章― 1/2

           空が、熱い。  意識を取り戻した僕を、太陽が照りつけていた。  眩しい。目がくらむ。  屋上に吹き付ける風を痛いほど感じる。  ただそれも、後一歩。  後一歩踏み出せば全て消えて無くなる。  眩しく、けたたましい太陽も。  否応なしに吹き付ける風も。  ふざけた生活。  混濁した日常。    病院からの診断書。  両親からの電話。  ――大嫌いな自分。  後一歩踏み出すだけで、全て消えて無くなるのだ。  ただ、それだけだ。  そう。その一歩を踏み出すまで、どれほ

          フォルマ・ディフェクト ―第二章― 1/2

          フォルマ・ディフェクト―序章―

          「時の流れは、常に一定であるとは限らないよ」  冷たい金属に囲われた、ただただ広いだけの空間に、彼女の声が反響する。  僕は彼女のウェーブがかった色素の薄い髪の毛を見つめていた。 「どういうこと?」 「時間は主観でしかないってこと」  僕の問いへの彼女の答えは、ひどく曖昧だ。  意味など分からない。分かりたくもない。  しばらく茫然と、僕は彼女を見つめていた。 「そうだなぁ。分かり易く言うとね。空間って言う歯車があって、ひとつの大きな機械を動かしているの。その機械の流れを、人

          フォルマ・ディフェクト―序章―