時ノ雨 終

 雨が降る日には、思い出すことがある。


 とはいえ、ぼやけていて正しく思い出せないのだけれども。
 安物のビニール傘を差して、街を抜け、公園へ向かう。
 そして、誰もいない公園のベンチに腰掛ける。
 

 雨の日は、よくこの公園のベンチで時間を過ごす。
 ここで座っていると、もしかして雨が永遠に止まないんじゃないかなんて考えてしまう。
 もちろん、そんなことはないんだけれど。

 ――止まない雨はないよ。

 不意に、どこからか声が聞こえた気がした。
 周囲に人影はない。
 それでも、僕は小さく頷いた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?