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YAN太郎
2014年4月25日 21:06
安物のビニール傘を、幾千、幾億もの水滴が叩く。 小刻みに傘を叩く時に発する音は、まるで太鼓のように規則的なリズムを刻んでいるようにさえ思えた。 その伴奏に合わせ、僕の傍らで歩く彼女が歌う。――あめあめ ふれふれ かあさんが、じゃのめで おむかい うれしいな―― 確かこの歌には、続きがあったと思うのだが、彼女は止めてしまった。 それに対し、僕が不思議そうな表情でいると、
2014年6月29日 20:13
――ある日、この世界に雨が降った。 ――止まない雨が降った。 次の日も、そのまた次の日も、雨は止まなかった。 そして……いつしか外には誰も出なくなった。 僕は、今日も彼女に会う。 「おはよう」 いつもの公園のベンチに、彼女はいた。 だけど、今日の彼女はまた一段とずぶ濡れになりながら、むくれている。「もう夜だよ?」 彼女は声のトーンを少しだけ低めにして、そう言ったので
2014年6月29日 20:23
「来たね」「来たよ」 翌日の彼女は、少しだけ明るく見えた。「今日はちょっと早いね」「…………」「どうしたの?」「僕は……キミと別れた後、いつも何をしているんだろう?」 ずっと考え続けてきた疑問を口にする。「思い出せないんだ……」「そっか……」 僕の言葉に、彼女は優しくほほえむ。 だが、それはなんのこたえにもならない。「僕は……誰なの?」「アキはアキだよ」「キミは、
2014年6月29日 20:26
雨が降る日には、思い出すことがある。 とはいえ、ぼやけていて正しく思い出せないのだけれども。 安物のビニール傘を差して、街を抜け、公園へ向かう。 そして、誰もいない公園のベンチに腰掛ける。 雨の日は、よくこの公園のベンチで時間を過ごす。 ここで座っていると、もしかして雨が永遠に止まないんじゃないかなんて考えてしまう。 もちろん、そんなことはないんだけれど。 ――止まない雨