#おすすめ名作ドラマ「おじさまと猫」(2021年)
草刈正雄、神木隆之介(声)、升毅、小関裕太、武田玲奈、平山浩行、他
TVerで再配信されていて、以前に視聴した際に、意外にも感動してはまってしまったことを思い出した。
正直このドラマを知った時、最初はあのぬいぐるみと草刈正雄さんの写真だけを見て「これは何?」と異様な感じがして視聴しなかった。おそらく同じように思う人がいるのではないかと思う。
なので、一旦スルーしていたのだが、一度観てみたら・・・ちゃんと感情移入して、感動して、泣いてしまった。
なんでだか自分でもわからなかったが、その時の精神状態が影響していたのかもしれない。
あの、どこからどう見ても作り物のぬいぐるみの猫を、リアル猫としている画を見てこんなに感動するものか、という驚きがあった。
物語の描き方もシンプルで、ドラマにリアリティを求める人からしたら、「はーーーー?!」となるであろう作りかもしれない。
普通にドラマ好きな人からしても、「?????」となっておかしくない。
それが、それなのに、感動するのだ。
というか、あの作りだからこそ、想像力がリアルを超えて感情移入しやすいのかもしれない。
最初はなぜぬいぐるみなの?と困惑すら感じたのだけれど、原作のイメージを再現するにはこうするしかなかった、というのもわかる気がする。
これは食わず嫌いをせずに、一度見てから評価してほしい。
さて、ストーリーについては、主人公がふくまるという猫と出会うことで心や行動が変わっていく話だが、ただペットに癒される内容ではない。単なる猫との友情や愛情物語というのとも違う。もちろん猫との関係も大事な部分となっているのだが。
主人公が、喪失感や挫折(おそらくパニック障害的なもの)、苦しみの中にいたところから、ペットを通して見えてきたことや、人と積極的に関わることで、徐々に心をほどいていく話だ。
私は、温かな時間の中で、ゆるやかに孤独から解放されていく様に、激しくない流れだからこそ、余計に感情移入ができたと思う。
とてもシンプルに描かれている、そしてあの全くリアル感のないぬいぐるみを使った演出によって、思わず心をつかまれ、涙が滲んでしまうような感動を覚えた。
各話のエピソードの中で、他の登場人物もそれぞれ葛藤を抱えていたり、主人公を温かく見守ったり、優しいおせっかいをやいたりする様子が描かれているのも良かった。主人公が心を開くことで、周りの人たちも、その素直さに触れて、変わっていく流れが物語を温かく優しい方向へもっていく。
私はやはり物語の中に、人の苦悩や、ダメなところ、やっかいなところ、綺麗ごとじゃないところ、正論ばかりじゃないところ、そういう部分が描かれているものに魅かれてしまう。
能天気でふりきったくだらない作品も、ただただ映像が綺麗な作品も好きだが、ヒューマンドラマについては、映像のリアリティよりも、台詞や設定のリアリティよりも、人の内面や、描きたいこと、訴えたいことが響いてくるものが好きだ。
このドラマはそういう点で、私の心の琴線に触れる作品だった。
エンディング曲「ふたりで居れば(阿部真央)」も印象的で、この曲を聴くとちょっとウルっときそうになる。
それにしても、この作品の演出は本当に斬新だった。
「おじさまと猫」といい、「直ちゃんは小学三年生」といい、テレビ東京のドラマは攻めてるなぁ・・・と改めて感心する。
<文・見出しイラスト/犬のしっぽヤモリの手>
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