学校全体を巻き込む!!子どものクリエイティブな学びを引き出す授業の土台作り〜柏市立逆井小学校の実践から①
ご挨拶
はじめまして。F.ラボアンバサダーの高村ミチカです。小学校教員を11年経験後、現在はフリーランスライター/編集として活動をしています。
元教員だからこそ、学校と学校の外側をつなぐ学びの結び目のような存在でありたい。「本物の学び」を引き出すお手伝いをしたい。そんな思いで、F.ラボアンバサダーとなりました。
プロと関わったことがきっかけになって、子どもたちが主体的に学びに向かったり、社会と関わる実感を持てたりする。Film Educationには、学びを本物にしていく力があると確信しています。
私が担当する記事では、各学校での実践を通して、Film Educationの魅力についてたっぷりとお伝えしていきます。学びの輪が全国に広がっていきますように。
F.ラボの教育メソッド<Film Education>とは?
F.ラボの教育メソッド<Film Education>では、「動画をつくって楽しい」で終わらせない、その先の学びを大切にしています。目指しているのは、映像表現を通した「生き抜くチカラ」の獲得。学校に配布されたタブレット1台で映像制作を完結できるメソッドを構築し、先生に実践者になっていただくことを最優先に考えたプログラムです。
映像制作を活用したクリエイティブな学びをつくるヒント〜柏市立逆井小学校の実践から
プロを招いて出前授業をしてもらっても、一回きりのイベントになってしまう。
ICT活用をもっと進めていきたいけれど、苦手な先生もいるから学校全体で進めるのにはハードルがある。
そんな風に感じている先生はいませんか?
学びの連続性を作っていくためには、プロにお任せではなく先生自身が実践者となることが求められます。
昨年度<Film Education>のプログラムを実践した柏市立逆井小学校では、夏の職員研修を活用して、職員間の共通理解を図り、授業実践へとつなげていきました。
本シリーズでは、逆井小学校で行った<Film Education>について紹介することで、どうやって学校全体を巻き込みながら進めていくのか、また映像制作を活用したクリエイティブな学びを作るヒントをお届けします。
の全4回シリーズです。
第1回目の今回は、<Film Education>を成功させるための土台作り、夏休みの職員研修のお話。
始まりはFacebookのメッセージ
一昨年の夏休み、山﨑カントクのFacebookアカウントに届いた一通のメッセージ。
「本を拝見しました。ぜひ映像制作を取り入れたICT教育をやりたいと思っています」
そこが、全ての始まりでした。
差出人は、市内の小学校で当時柏市立大津ヶ丘第一小学校で教頭を務めていた竹森正人先生。(翌年異動され、逆井小学校の教頭先生に。)
以前からICTを活用した授業に関心があり、コロナ禍やGIGAスクール構想などの時代背景によりその想いを一層強くしていた中で、山﨑カントクの著書「探究活動ではじめる動画・映像制作 ~映画監督がひもとく 1人1台タブレット時代の新しい学び~」に出会ったそうです。
映像制作を活用した教育の可能性を信じる二人はあっという間に意気投合し、「来年度からぜひ取り組みましょう」という流れに……。
まずは先生がワクワクする場をつくる
とはいえ、4月からいきなり実践。
ではなく、まずは職員の共通理解を図るために、夏休みの職員研修を設定しました。
何のためにか分からないまま、プロを招いて出前授業をする。
子どもたちは、何となく楽しめたし、いいかな。
そんな授業にはしたくなかったからです。
本当の学びにしていくために大切なのは、先生自身がワクワクしているかどうか。先生が「これいい!」って本気で思えるかどうか。
だからこそ、夏休みの1日を使って映像制作の魅力に触れる時間を作ったのです。
夏の職員研修「映像制作教育」
職員研修は1日かけて行いました。目的は、1人1台配布されたタブレット端末をいかに活用をしていくか、そして子どもたちのクリエイティブな学びをどう作っていくのかということ。理論だけではなく、体験的に学ぶことを意識しました。
研修は2部構成で、以下のような内容です。
ワーク1では、2人1組となって自己紹介の映像制作を行いました。
山﨑カントクから教えてもらった
・タブレット端末の扱い
・構図の作り方
・プロっぽく撮るコツ
を使いながら、撮影。
何となくカメラを向けるのではなく、意図を持って撮影することを意識するだけでも、プロっぽい映像になります。初めは緊張していた先生方も、撮った映像を見返すうちに、映像表現に段々と慣れてきた様子でした。
ワーク2は、3人1組で行うインタビュー映像の制作にチャレンジ。ゲスト、インタビュアー、そしてカメラマンと、役割を分担して行います。
・三脚やピンマイクなど機材の扱い
・主体的な映像と客観的な映像の違い
・インタビューのポイント
などを山﨑カントクから学んだ後、インタビュー映像の撮影へ。先ほどの自己紹介との大きな違いは、客観的な映像であるということ。正面を向いてカメラ目線で話すのではなく、少し斜めに体を向けてインタビューに応えていく姿は、まるでドキュメンタリー番組のようです。
撮影の場面で意外と盛り上がったのは、ピンマイクを付けるところ。(ちなみに、ピンマイクを付ける練習をするために、先生方には事前にいろんな服装で着てくださいとお願いをしていました。)お互いにピンマイクを付けることで、「これからインタビューを受けるんだ」と、気持ちがぐんと高まるそうです。ちょっとした仕掛けでやる気になるのは、大人も子どもも一緒ですね。
撮影後は、構成を考えて編集を行いました。撮影時間は1人あたり2〜3分ですが、完成版のインタビュー映像の尺は1分。どうやって時間内に収めるのか、情報を取捨選択する必要があります。グループで、映像を切り取ったり入れ替えたり、ゲーム感覚で楽しみながら試行錯誤する先生方。まさに、協働的に学ぶ瞬間です。
最後に、完成した映像を発表し合いました。なかなかプロっぽい映像に、先生方から「おー!!」という歓声が上がるほど。先生たちが本気でワクワクしている姿を見ることができました。
先生のワクワクは子どもたちに伝播する
職員研修の学びは、映像制作の技術に留まりません。先生方が、実際に映像制作を活用した学びを体験することで、学びの価値を実感してもらうこと、何より「楽しい!」「やってみたい!」とワクワクしてもらうことがとても大切です。なぜなら、先生のワクワクは子どもたちに伝播していくからです。
さらに、もう一つ大きな価値があります。それは、職員間の多様なコミュニケーションが生まれることです。今回の研修のグループは、意図的に学年や経験年数などバラバラに組むようにしました。普段関わりが少ない人とも、職員研修をきっかけにコミュニケーションが生まれていく感覚。それは、子どもたちがグループで協働的に学ぶことで、多様な人間関係を構築していく感覚と似ています。映像制作を活用した授業から、他の教科・領域、普段の生活場面へと広がっていくイメージを共有できたのではないでしょうか。
今回は、子どものクリエイティブな学びを引き出す授業にするための土台作りのお話でした。次回は、公立小学校で、どんな機材を揃えたのかどうやって費用を捻出したかなど、なかなか普段は聞けない舞台裏のお話をしていきます。お楽しみに。
▼お金がない、機材がないを言い訳にしない<Film Education>〜柏市立逆井小学校の実践から②