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特別支援教育におけるFilm Educationの可能性〜練馬区立光が丘第三中学校の実践から〜

こんにちは。F.ラボアンバサダーの高村ミチカです。小学校教員を11年経験後、現在はフリーランスライター/編集として活動をしています。元教員だからこそ、学校と学校の外側をつなぐ学びの結び目のような存在でありたい。「本物の学び」を引き出すお手伝いをしたい。そんな思いで、F.ラボアンバサダーを務めています。

F.ラボは現在、小中高大や特別支援学級の他、フリースクールや塾など20以上の教育機関と連携して、50以上のワークショップや授業プログラムを実施中です。

今回お邪魔したのは、練馬区立光が丘第三中学校の特別支援学級です。

2コマのプログラム「非言語だけで映像表現をしよう!」と、放課後に「特別支援教育におけるFilm Educationの可能性」をテーマに教員向け研修を行いました。

本記事では、授業や研修の様子を通して特別支援教育におけるFilm Educationの可能性を探っていきます。

プログラム「非言語だけで映像表現をしよう!」


<プログラムの概要>

授業の目的

・非言語で映像表現を作る活動を通して、その方法の特徴やよさについて理解し、伝えたいことをより効果的にアウトプットする手段を増やすこと

授業の目標
・映像表現は、言語表現と非言語表現の掛け合わせでできていることを理解する
・言語表現と非言語表現の違いを理解する
・非言語表現は、主に動画、静止画、サウンドの3要素でできていることを理解する
・非言語表現を使いこなせるようになる

時間数
2コマ(総合的な学習の時間)

対象
中1〜中3(特別支援学級)
※当日は学級閉鎖のため2年生未参加

実際の映像成果物
時候の挨拶を題材に、動画や静止画、サウンドといった非言語表現を組み合わせて作った30秒程度の映像

<プログラムの流れ>
1.非言語表現の特徴に関するインプット
2.テーマの提示とグループ協議
3.撮影・素材集め
4.教室にて編集
5.シェアタイム

プログラムの詳しい内容については、こちらのnoteの記事も併せてご覧ください。


学校を飛び出し、公園へ。「こうしたい」と思いを持って撮影をする子どもの姿


ワークショップの題材は、その日の天候を鑑みてカントクが決めています。授業当日は10月初旬、ようやく秋を感じるようなそんな日でした。

今回のテーマは次の3つ。

<テーマ>
A 涼風の候(暑い日が続きますが、涼しい風も吹き始める季節となりました)
B 秋涼の候(夏が終わり、秋の涼しさを感じる季節となりました)
C 清秋の候(空が澄み、清々しい秋を感じる季節となりました)

今回のプログラム、当初は学校内で撮影をする予定だったのですが、校長先生の粋な計らいで、学校の隣にある公園で撮影をすることになりました。

学校を飛び出し、いざ公園へ。子どもたちは、思い思いに秋を感じる素材を探しました。

黄色く色付く葉の間に、まだ少し夏の面影が
木や花や葉など、公園で秋を感じるところを探す子どもたち

担当の大坂先生は、今回のプログラムの中で次のような子どもたちの変化を感じたと言います。

「一番驚いたのは、これまでは『ここが撮影スポットだよ』と誘導しないと正直難しかった生徒も、今回は自分から季節を意識して撮影をしていたことです。公園から出たところで、足を止めて撮影をしている生徒もいました。自分で『こういう映像がほしい』と意図を持って撮影をしているところに大きな変化を感じました


公園の外で足を止めて撮影をする姿


子どもたちの授業後のアンケートからも、活動に興味を持って取り組めたことが伺えます。「授業内容には興味を持てましたか?」の設問には全ての子どもが「興味を持てた」と回答。「なぜこの授業をするのか、目的をきちんと理解できましたか?」の設問には、85%以上の子どもが「目的を理解できた」と回答しています。


「こうしたい」という意図を持って主体的に学ぶ姿は、まさにFilm Educationで大事にしていることです。ただ単に動画を撮るだけなら、子どもたちは「面白い」と思うかもしれませんが、主体性を引き出すまでは難しいでしょう。明確なゴール設定とちょっとしたプロのワザが加わることで、子どもたちの主体性をグッと引き出すことができるのです。


2時間で映像をつくり上げる経験。「私の作品も見てほしい」と次々に手を挙げる子どもたち

ワークショップの最後には、子どもたちの作品をシェアする時間をとります。

流れる雲、長く伸びた影、セミの抜け殻……
集めた素材を上手に使って、初秋を表現した子どもたち。

これが、たった2時間でできてしまうんです。

ここで注意したいのが、最終的に映像を完成させることが目的ではないということです。作成途中であっても、制限時間内に自分たちで工夫し、つくり上げた映像を発表し、振り返りの時間を持つことで、学びが深まります。

今回もプログラムの最後にシェアタイムを行ったのですが、途中までであっても堂々と発表をする子どもの姿が印象的でした。カントクが作品についてコメントをすると、子どもたちが「私の作品も見てほしい」と次々に手を挙げるという場面も。自分たちで作品をここまで作り上げたという経験が、子どもたちの自信に繋がったのかもしれません。


特別支援教育におけるFilm Educationの可能性とは?


放課後は、「特別支援教育におけるFilm Educationの可能性」をテーマに職員研修を行いました。

キーワードは、大きく3つ

1.協働作業
2.メタ認知
3.自己肯定感

映像制作には、協働作業が欠かせません。映像制作は、制作過程が複雑で、作業量も処理する情報量も多く、一人で作り上げることは難しいため、明確なゴールの共有、スケジューリングと役割分担などチームでの「協働作業」が必須です。コミュニケーションに課題を感じる子どもたちだからこそ、協働作業の経験をすることは大きな価値があるはずです。

また、映像表現はメタ認知にも繋がります。例えば、日々の活動の様子やインタビュー映像を撮り溜めておき、1年間を振り返るという手がかりにすることが可能です。

さらに、映像制作は「できた!」という達成感を感じやすいのも大きな特徴と言えるでしょう。今回のプログラムでも、子どもたちは2時間で一定の作品を仕上げることができました。「できた!」の積み重ねが、子どもたちの自信を生み、自己肯定感を高めるきっかけとなります。

最後に、子どもたちの作品を紹介します。
「清秋の候」をテーマに、身近な木々や花の様子を組み合わせて作り上げた作品です。

▼作品紹介(クリックで再生)


今回の授業と研修を通して、Film Educationは子どもたちの可能性を広げるプログラムだと改めて感じました。

さぁ、次はあなたの学校で。
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