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誰も教えてくれない、「センス」の正体。

こんにちは、ブランディングプランナーのヤマグチタツヤ(@yhkyamaguchi)です。

毎回noteの導入部分で同姓同名ネタでボケるのが自分の様式美なのですが、「センス無いね」って言われることが増えてきました。めげません。


さて、本題です。

最近、お仕事の中で自分のスキル内製化を図ることが増えているのですが、その中でタイトルにもある「センス」について考えることが増えてきました。

どんな仕事もそうですが、


「それはアナタだから出来るんですよ!!!」


と言われることって非常に多いですよね。

そうした暗黙知を僕らは「センスがある・無い」と形容する訳ですが、

・この「センス」とは一体何なのか?
・この感覚的な言葉の仕組みを言語化できないか?
・センスを身につけられるようにできないか?

と、ここしばらく考えていました。


そして最近、ようやくその輪郭が見えてきたので、今回はこの「センスの正体」を自分の仕事に絡めつつ解体していきたいと思います。


◆「センス」の語源から解体する

考えるにあたって、「センスの言葉の構造」が気になったのでまずはここから解体してみました。

いつものブランド解体新書シリーズ同様、"言葉"にもブランディングでいうところのMVVのようなコアイメージがあるので、まずはそこから紐解いていきます。

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Senseという英語、元々はラテン語の「sentire」が語源とのこと。

今でもイタリア語の中に「〜を感じる」という動詞としてsentireは残っているようです。

Senseの意味性を含む派生語としては

consent(同意), discent(同意しない), sensor(センサー), sensitive(敏感な)

このような言葉が「sen-」というsenseの一端を含んでいます。

イディオムだと「make sense(意味を成す)」などがありますね。

こうしたところから、言葉としてのセンスは「感覚、意味」と言えることが分かります。


ただ、これだけではまだ正体が掴みきれません。

「それ、センスあるよね!」=「それ、感覚(意味)あるよね!」

とは、まだちょっとなりにくい気がします。

果たして、僕らは何を感じ、どんな意味を汲み取って、「センスがいい」に辿り着くのでしょうか?

言葉の背景を思考の下地にした上で、一度振り出しへ戻ります。


◆センスの正体は「文脈」

次に「コーポレートブランディングの実務」から考えることにしました。

企業ブランドを考える上で、社長・社員の深層にある哲学や思想を引き出すためにヒアリングを必ず行うのですが、その時の思考回路を分解していくと......

「この人はこういう服や小物が好きで、こういう言葉のトーンマナーと声色で、こういう趣味があるのか。それはこういう過去があるからそこに起因していて、それが地続きとなって今こういう感性の人間になっているのか!」

と、毎回その場で相手の「感性・存在意義」を目と耳で拾える要素から脳内分解して言語化しています。

つまり、先ほどの言葉のブランド解体から考えると、これは相手の「センス」を分解して言葉に落としているとも言えます。

(※ちなみに合コンでこういうヒアリングをすると、すごい勢いでモテなくなります)


このように、左脳では「感性の構造化」と言えるのですが、感性とは何か?がうまく言えないのが悔しい......。

そこで、今度はこの感覚を右脳で捉えられないか模索してみます。

自分の頭の中を絵に描いて、それに近しい画像を探してみると下図がしっくりきました。

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言い換えれば、この紐は「その人を織り成す背景の1つひとつ」のようなもの。

それらが複合的に絡まると、つまり何なのか?と考えると、すごくシンプルな答えが出てきました。


「センス = 文脈」です。


もう少し噛み砕くと・・・

「この人はセンスがある="自分が良いと思っている文脈"を対象物に盛り込んでいる」

このようになります。

仕事のセンスも洋服のセンスも、「自分たちが押さえるべきだと感じているポイントを的確に押さえてくる=センスがいい」という意味合いで説明することができますね。

仮にその文脈をきっちり言語化できなくても、「過去に良いと思ったもののカタチを何かしら含んでいる」と脳が認識すると、それが無意識下で想起されて"センスがいい"に変換されるのでしょう。

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逆に"センスが無い"は「自分の知らない・分からないものを目の当たりにした時」に感じます。

「その服のセンス、どうなってるの?」と感じる時は、往々にして自分の脳内データベースにその文脈が無い時です。

センスに絶対的なものはないので「これセンス無いわ〜」と思っていても、別の誰かが「これめっちゃセンスあるな!」と思うこともしばしば。

とはいえ、センスがあると言われるものは「そのセンスを理解できる母集団の人数が多いこと」なので、自分のセンスを過信しすぎず世間の反応をみることもとても大事です。

※ちなみに、著名な芸能人や雑誌で意味不明なコーディネートが「これが今のトレンド!」と出て、権威性が担保された上で知識として自分にインプットされると、これは"センス"になります。


実際の事例でも見ていきましょう。

過去に書いた米津玄師のブランド解体noteの後半で、「なぜ『Lemon』がヒットしたのか?」をまとめましたが、ここにも実は"センスの正体"が紛れていました。

彼は、中年層以上も持っている"歌謡曲"という文脈をあの曲に織り交ぜています。

結果、『Lemon』は「その人たちにも肌馴染みの良い曲(=多くの人と文脈共有できる楽曲)」になり、幅広い人に"米津玄師=センスがある人"と認定されたと言えます。

(King Gnuやサカナクション、もう少し昔だと9mm Parabellum Bullet辺りのバンドも、この歌謡曲の文脈を取り入れることでスターダムを駆け上がっていった節があります)


改めてそれぞれの具体例で見えたことをまとめてみると、このようになります。

・センス=文脈
・センスがある=相手と自分の文脈が一致している
・センスがあると多くの人に思われる=多くの人が持っている文脈を内包している(=普遍的な要素を取り入れている)

では、「センスの正体」が分かったところで、最後に「他人のセンスを自分に取り入れる方法」を考えていきます。


◆センスを身につける2大要素は「観察力」と「解体力」

センスの正体である「文脈」、これをどのように普段の生活で鍛えればよいのでしょうか?

あくまで自分がよく行うことなのですが、対象の人のセンスを身につけたい場合、具体的なプロセスとしてこのようなことをしています。

①対象の人を徹底的に観察する

②捉えたい文脈を言語化する
 (「クールさ」「頭の回転」「服のセンス」など)

③話しながらその人の文脈を構成する要素をメモする
 (仕草、判断基準、洋服の色合いや柄など)

④なぜその構成要素が特定の印象を与えるものなのか?を考えるorググる
 (黄色=注意を引く色なのはなぜか?他に黄色のものは何があるか?など)


・赤や青の原色でビビッドな服を着ているから、エネルギッシュな印象を受けるのか!なんでビビッドな服が好きなんだろう?

・この人の口癖は"要するに〜"だから、ロジカルな思考回路を好むのかな?なんでこんなにロジカルなんだろう?

といった具合に、表面に見えるアウトプット要素を観察し、それぞれの意味と背景を確かめていきます。

※ちなみにですが、インナーブランディング・組織開発にこの思考法は転用できます。
人のセンスを深掘りしていくと「その人固有の過去・経験」に行き着き、それを逆再生すると「あ、だから自分はこの仕事をしているのか!」"自分だからこその仕事の意味"を見出すようになります。
すると、何も上から強制しなくても、個人が仕事への主体性を持つようになるため、今まで以上に楽しく仕事へ励めるようになります。


もちろん、色を見て「この色は"爽やかさ"を想起させる」などは最初のうちは分からない可能性もあるので、そういう時は間髪入れずググりましょう。

※日本カラーデザイン研究所が公表している「カラースケール表」はかなりオススメです。
http://www.ncd-ri.co.jp/about/image_system/imagescale.html

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また、「センスの構成要素」としてはこのような例があります(あくまで一部)。

髪型,髪色,服装(色・柄・形),持ち物,言葉選び,話の速度,視線の動かし方,声色,仕事内容,仕事で面白いと感じる瞬間,つまらないと感じる瞬間,得意なこと,苦手なこと,趣味,好きな本や音楽,尊敬する人物......etc.

これらを観察・解体をして見えてきた要素を自分の生活や仕事に混ぜるようにすると、「他人のセンス」を身に纏えるようになっていきます。

(※コンテンツのセンスに関しては「ブランド解体新書マガジン」に入っているnoteをご覧いただければ、どのような流れで観察・解体しているかが分かりやすいかと思われます)


ただ注意点として、ブランド構築の観点においては"センスを全て丸パクりしないこと"が重要です。

「守破離」と同じ構造で、いくら先人の真似だけしてもそれ以上には行けません。

逆に、そこへ自分の文脈(=意志)を混ぜていければ独自性が増します。

例えるなら、受験勉強の方法も学校や塾で学んだものをベースにしつつ、自分流にカスタマイズして「朝は1日10分英単語を覚える!」などのように変えていくイメージです。


"青は藍より出でて藍より青し"という言葉がありますが、型を学びつつ、少しずつトライ&エラーで自分独自の型を編み出していく行動と意志こそが、自分だけのセンスを生み出す重要な要素となります。

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◆「センス」は努力で身につけられる

というわけで、今回は「センス」をブランド解体して考察してみました。

ヒトに限らず、どんな物事にも文脈(成り立ち・背景)は必ずあります。

そこに対して「なぜ?」と考え続ける"知的好奇心"と"思考体力"をつけていければ、ググっても出てこない「センス」を身につけられるはず。

この週末は在宅で本やエンタメのコンテンツに触れる方も多いかと思うので、まずはぜひそれらを観察・解体して、そこに宿るセンスを言語化してご自身に転用してもらえれば幸いです!


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