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キャリアの「問題の先送り」ができない問題。

自分の友人で、到底敵わないほど優秀な人間がいる。

異様なほどの業務執行力があり、ロジカルさと気合と根性のスキルセットも持ち、なおかつ人への気遣いも抜群な優秀な人で実績もある。

でも、その友人は「自分にはやりたいことがない」と、飲みに行く度にしきりに口にしていて焦っていた。

きっと仕事柄や業界柄もあるが、スピードと効率性を重視する社会常識に、肩どころか脳天まで浸かっていたのだと思う。

その焦りから、「何か新しいことを始めねば」と本をとにかく読んだり、英語の勉強を突然しようとしたりなど、端から見れば社会的に上手くいっているようで、内面では苦しんでいた。
(この中で、目の前の問題に「いかに素早く・正しく答えるべきか?」を考え続ける姿勢を見てはやっぱり敵わないなぁと思えて仕方がない)


と、ふとこの話を思い返した時に「似たような問題を抱える人はきっと多いだろうな」と思い、今回筆を取ってみた。


「自分はビジョナリーな経営者タイプでもない」。

「かといって、没頭できる仕事や趣味も持ち合わせていない」。


とりわけ若い人だと、人生経験値の堆積度合いも多くはないから、自分の未来を考えたくても内省する素材が薄いもんだから、無理やり出したとしても出てきたものに納得度も覚悟も滲まない。

その結果としてキャリア相談やコーチングからの帰路で、「はて、さっきの時間で見えたことは本当に自分のやりたいことなのだろうか?」と首を傾げてしまう話もよく聞く。


それでも、社会や会社ではキャリアプランをやたらと求められ、「お前はどうしたい?」と将来のビジョンを迫られる。

そして、そんな時間を乗り切ったのも束の間、休憩時間にSNSを開けば友達がキラキラと社内表彰されたり、夢や目標の旗を掲げて独立したりなんかし始めているもんだから、「即断即決・効率主義」の波に乗れないことへ自罰的になることへの拍車がかかってしまうのも仕方がない。


そんな具合で考えていくと、

・果たして、その状態の人に「答えの即断即決」を求めても意味があるのだろうか?
・それは、逆に「非効率の極み」なんじゃないだろうか?

と、ふと思ってしまう。

とかく現代社会ではスピードと効率性が求められるが、その先では真逆の現象が起こり始めているのがなんとも皮肉的だなぁと感じてしまう。

その先で生まれるのは「無理やり感のある意志」だから、なんでも突き詰め過ぎると振り子のように反動が襲いかかってくる。


さて、問題提起ばっかりしていても仕方がないので「ではどうすればいいのか?」を考えてみたいと思う。

とはいえ、自分の答えはタイトルに書いてあるのだが、

攻めの「問題の先送り」

がそれに当たる。


どういうことかを説明するために、冒頭の友人の話に戻る。

彼から「アナタから飲みの席でもらった言葉に助けられた」と後日聞いて「ああ、そういえばそんなことも言っていたな」と思い出させられたのだが、

「何か突き動かされるものが見つかるのはタイミングの問題だから、いま判断しなくて良いんじゃない?

と答えていたようで、その言葉が心に安心を呼んだらしい。


お酒の抜けた頭に戻って考えてみても、やはり「無理して何かを絞り出す行為」は不自然だと思えて仕方がない。

簡単な例で言えば、「親がこう言うから何かをやらねばならぬ」で動くと、人生のどこかで自意識の歯車が狂ってくるのと同じだ。

無理やり走るようにセットしても、後で壊れる時限式のそれを「自発性」と呼ぶなら、それは「自発性」でもなんでもなく、親や経営者や上司のエゴでしかない。

自分は仕事柄、「個人や組織が自走するとはどういうことか?」をコーポレートブランディングや組織マネジメントの観点で考えることが多いが、やはり「自然に本人から嘘偽りのない意志が出てくるまで待つこと」が美しい形だと思うし、結果として機能するケースが多い。


だから「考えることを一度やめ、“判断を留保すること”の方が最終的に効率的である」と、先ほどの言葉が出たのだと思う。

彼は素晴らしい頭脳と行動力を持ち合わせているが故に、考え続けられるし動き続けられる人間だが、このままだと「問題の先送りができない問題」の公転周期から抜けられないだろうなと、酔っ払った頭で感じたのだ。

また同じ問題に数年後ぶち当たってしまうのは、非常にもったいない。


しかし、この「待つ(=攻めの「問題の先送り」)」という非効率的な行為ができない人が多いし、そうさせてくれる環境も少ない。

では、なぜそうのか?

答えは簡単で、「“非効率な行動が効率的”である場合も存在する」という価値基準を持ち合わせるような教育・体験が過去の経験値の中に無いからだ。

家庭でも学校でも会社でも習わなかったなら、それは「世間の答え」である「効率主義こそが答え」という意見を疑うことは難しくなる。


とりわけ組織マネジメントの観点からは、「早く成果を......」と待てない気持ちから、ついスピードを押し付けてしまう。

押し付けられた側もそれが「正解」だと思っているから、「自分が悪い」と思って苦しくなってしまう。

最悪の場合、ヒトによってはそれで心を壊してしまうこともあるから小さな問題ではない。


このように、多くの組織が求める「自発的に動く人」「自走する組織」を阻害している原因は、「価値観の余白の無さ」だと思う。

これは「異文化理解」みたいなもので、いろんな価値観とそれが構成されるまでの背景に対し、リスペクトの念を持ちながら理解しようと歩み寄ることで、この余白はつくられる。

そのため、「多種多様な正解」をマネジメント側や先生、親が知っていれば、この問題はまだ防ぎようがあると考えているし、これが本当の「ダイバーシティ(多様性)」だとも思う。

もちろん、個人が自分ひとりで気づくのも大事だが、これはなかなか自分で気づきづらい問題なので、より先んじて知っている側の人が気づいて教える方が構造的には防ぎやすい。


話を戻せば、「問題の先送り」という“非効率さが呼ぶ効率性”が守りや逃げではなく、むしろ「攻め」であることに対して理解のある人・組織が少しでも増えれば、表面的な効率主義に踊らされることも減るし、より楽しんで働いたり生きられる可能性が広がるだろうなと思う。


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