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森の中で見つけた、小さな宝もの。

11月になると千葉の山々は、時より赤くそして黄色く色づいてきます。元々、千葉の中でも中心の方で生まれ育ってきたので、山に囲まれて育ってきたようなものです。ただ仕事をしはじめ振り返ってみると、その風景がいつの間にか当たり前というか、そんなに気にも止めなくなっていたりもしてきました。

今回、1月に向けた農業体験の企画をどのようにすすめるか、実際に体験してみよう。ということになり、久々に山のなかや田んぼみちを車で走ることになりました。私がうかがったのが市原市の山口というところにある根本さんという椎茸栽培をしているお宅。

根本さんのお宅に向かう途中、車中からぼーっと外を眺めていても、いつもの山と田んぼの風景。

その程度にしか見えていませんでした。そして根本さんの椎茸を育てている環境とか、はじめてすぎて「どんな育て方をしているんだろう。」と頭の中に描いてみるものの、あまり想像することもままならず、考えることをやめ仕事の話や世間話に花が咲いていたようにも思います。

ただ、その育てている環境を目の当たりにしたときは、驚きを通り越して衝撃にもなり、「椎茸を収穫する」文字にすればたったそれだけの事かもしれないけど、私にとっては貴重でもあり楽しい時間を過ごすことができました。

山の中。

いつも外側から、ぼーっと眺めている風景の中に、こんな魅力的なことがあるとは思いもしませんでした。

今回はそんな田園風景の中にある、少し山の中に育つ椎茸のお話をレポートしていきたいと思います。

初めまして。根本さん。

今回お伺いしたのは生産者根本さん。8月にお米の収穫体験を快く引き受けてくれたものの、生憎の天候で実施できなかったので非常に悔しい思いもいまだにあります。

お伺いした際、すでに先に到着していた先輩社員もいて、すでに談笑されていた。根本さんは、聞けば房の駅オープン当初から椎茸を出荷されていて、そのお付き合いは20年にも及ぶそう。

ただ私が勤務している店舗が、椎茸やお米を扱っていないため、今回はじめての顔合わせとなった。店舗ではお米の名前が有名で「音信米」と書いて「おとずれまい」と読むんだそう。その音信米は、なんと平成三年度に宮内庁に献上されたお米でもあり、房の駅でもとても名が知れ渡っているお米でもある。

なので、お米は知っていたんですが。

という予備知識のない椎茸での今回の訪問。夫婦でお迎えしていただいたものの、はじめてという事もあり少し緊張してしまった。そんな中でも、なんとかお米のこととか椎茸のことを伺ってみると、お二人とも笑顔で受け答えしてくれたおかげで、すぐに緊張も解けていった。

聞けば、椎茸とお米は収穫時期も違うので、なんだかんだで1年中は仕事をされているんだそう。

そして椎茸の栽培方法には、2種類あって「原木栽培」と「菌床栽培」と呼ばれるものがある。と説明していただいた。その2種類の栽培方法の中でも、根本さんの育て方は今も昔も原木栽培。説明を聞いていくと、市場に出回っている椎茸は、ほとんどのものが菌床栽培で育てられたものになるんだとか。

話を伺った時点では、予備知識もうすく違いがあまりわからなかったため、率直に「原木栽培」と「菌床栽培」その違いについて質問をしてみたところ、有無を言わさず返ってきた言葉が、

「味と香り。」

でした。はっきり言えばグルメでもなければ、日頃食べ比べをしているわけでもないので、違いがわかるか不安になったが根本さん曰く、

「食べ比べてみるとすぐわかる。」

らしい。菌床栽培も品種改良によって、ここ最近はすごくよくなってきており、原木栽培より菌床栽培の方がカタチがいいものや、大きいものができるようになってきたんだそう。けれど、樹からたくさんの栄養をもらえる原木栽培は、食べれば違いわかるほどに美味しいと言う。

そんな話をしていたら、目の前に椎茸があるわけでもないのに、なぜだか喉がなり始めてしまった。

ここ数年の環境の変化。

椎茸を育ててきた中で、ここ十数年での出来事は切っても切り離せないくらい大変だったそうです。今もなお記憶に残る東日本大震災。その震災前は、椎茸の原木となる樹を自ら切ったり、県外から多く調達していたそうですが、放射能での汚染問題もあり、簡単に調達ができなくなってしまったんだとか。

今となっては原木を岩手県の方から調達できるルートができたため、安心して椎茸栽培に取り組めているそうですが、その当時は育てていた椎茸自体が出荷停止という事にもなり、頭を悩ませることも多かったんだそう。

さらに震災直後は、離れた市原市でも放射能などの風評被害で1キロ5,000円で売れていたものが1キロ800円にまで落ちてしまったんだそう。そのため、やめてしまった農家さんも少なくない。加えて近年の令和元年房総半島台風でも被害に見舞われ、未だ復旧していないところもあるという。

収穫体験後に、実際に森の中を案内していただいたが、先がわからないほどに木が薙ぎ倒されたままでその先にはとうてい進めることはできなかった。根本さんは「今だから思うけど、あの時もよく乗り越えられたと思うよ」とお話ししてくださった。

このお仕事をはじめてから、いろんな生産者さんからお話を聞くことができるようになって、「震災」と「台風」の被害は決して軽いものではなく、大きな爪痕を残しており今もなお癒えていないのだと、お話を聞く度に思い知らされることの方が多かった。

椎茸が育つ環境。

初めましての挨拶から、いろんな話を伺うことができ楽しいひとときを過ごしてきたが、ついつい長話をしてしまうと本来の目的をも忘れそうになってしまう。

まだまだ聞きたい話もあったが、本来の目的は収穫体験の下調べ。という事で、いざ収穫体験へ!お家の裏側に広がる椎茸ハウスに、案内していただきました。

早速ハウスの中をのぞいて見ると、中には何本もの原木がきれいにズラッーと並んでいた。しかも等間隔に並べられた原木の数も圧巻で、見るとちょっとワクワク感が止まりませんでした。

さらにさらに並びきれない原木は、ハウスの外側にも並んでいて「どんだけ原木が並んでんのよ」とつい口走ってしまうほどの量。この原木の数からは、私の頭の中ではもはやどれだけの量のしいたけが収穫できるのか想像もつかないほどでした。

根本さんのお話では、「ちょうどピークを過ぎてしまって、あまり椎茸もないから宝探しのつもりでやってみて。」とおっしゃっていたが、ハウスに入ってみると目視で確認できるくらい大きいものがポコポコなっていた。

原木からひょっこり椎茸

私の知っている椎茸の倍くらいある大きいものを、根本さんご夫婦はどんどん収穫していく。手慣れた感じで、あまりにも簡単にとるものだから意外にすんなり採れるのかもしれない。と恐る恐る触ってみるがびくともしない。

「え?採れない?」

あんなに簡単そうに採っていたのに。個人的にはポロッと採れるものだと思っていたが、しっかり根付いた椎茸はそんな簡単には採れない。後ろから見ていた根本さんが、軸を上か下に動かすか回すようにすると取れると教えてくれて、再び挑戦。

いざ椎茸を収穫。

軸を持つとしっかり根付いていても、「回しながら」を意識するとポンと採れた。自分の手で大物が採れた事に、ちょっと感動しドヤってしまった。大きさももちろんだが、持ってみるとしっかりとした重みがある。肉厚だからか生なのにすでに美味しそう。

「すぐにでも食べたい。」

そんな事を思いながら、コツを掴んだ私はあれよあれよという間に見つけた椎茸を採っていくことができた。収穫の際に手渡してくれた袋は、椎茸の一つ一つの大きさもあり、すぐにいっぱいになってしまった。

根本さんと一緒に。

その後、根本さんが「今度は、外の方にもあるから連れていくよ。」と、椎茸ハウスの外を案内してくれました。

そこにはクヌギ林があり、その下にも椎茸の栽培に使う原木がズラッと。見たこともない風景に見惚れてしまいました。

ずらっと並ぶ椎茸の原木。

ハウスと違って外にある椎茸たちはゆっくり育つのでより味が良いらしい。椎茸はあたたかいとすぐに育つらしく、最近暖かい日が続いた影響もあり、本来は1日1回の収穫で済むがここ最近は2回も収穫したのだそう。その椎茸の驚くべき成長スピードに、さすがに想像もできず驚くことしかできなかった。

さらにお話を伺って行くと、椎茸って一種類じゃないらしい。いろいろ品種があって中でも「290号(にく丸)」と「エックスアール」という2種類を育てているんだとか。数ある品種の中でも「エックスアール」という品種がおいしいとすすめしてくれました。

このクヌギ林は少し光が入る過ごしやすい空間になる様、7年前に植えたものらしい。そして根本さんの奥様が、

「人が過ごしやすいところは、樹も過ごしやすいのよ。」

とおっしゃっていたその言葉がなんとなくわかるような空間だった。林から漏れる光が素敵な空間。柔らかい光に、とても癒された気分になった。

椎茸だけじゃない。

そして今日は、私の知らない森のファンタジーをも目の当たりにすることになった。

それは「なめこ」です。

今の時期になると、ちょうど「なめこ」の収穫もピークを迎えているという事で、一緒にきていた先輩社員も見たことがないとのことだったので、初めて訪問で「なんて私はラッキーなんだ」と勝手に自分の運の良さを褒めていた。

なめこが育つ場所は、根本さんのお宅から車で移動した森の中にあるそう。途中まで車で移動し、その後は徒歩で移動した。本当に山の中でもあり、森の中。

なめこへの道は、もはや山登り。

車なんてとてもじゃないけど、通れない道を歩いて行くと、途中には猪が通ったあとが至る所にあり、その都度根本さんが教えてくださった。害獣被害の対策として電気柵をめぐらしてあるんだそう。電気柵も万能ではないようで、常に柵の周りの整備を気にする必要があるようで、電気柵を張り巡らせて終わりではないと設備の苦労も教えてくれました。

そんな電気柵を超えた先に、椎茸と違いまばらに設置された原木があった。そこには見たことがある黄色いキノコと見たことのない焦茶色の小さなキノコがいた。

「あれが、全部なめこよ!」

という奥様の言葉に「え?」と思わず絶句してしまった。はじめてなめこが育つ風景。森の中に育つなめこ。育てる樹には桜の樹を使い、なめこと桜の樹の色のコントラストがまた、なめこがキレイに見える色合いで見惚れてしまった。

かわいらしい、なめこたち。

根本さんの話では、なめこは成長して黄色になったものが食べ頃なんだそう。それまでは、焦茶色をしているらしい。こういった生産物の情報を知れるのは、収穫体験ならではだと思う。スーパーでパックされたものしか知らない私は、なめこを食べる度にこの焦茶色のなめこのことを思い出すのだろう。

樹の栄養をたくさんもらっているなめこは、スーパーで見るよりはるかに立派な大きさ。小さいものを探すのが難しいくらいどれも大きかった。奥様曰く「原木だと大きいから、コリコリした食感と香り良いんですよ。」とのこと。またまた食べるのが楽しみになる。やはりお味噌汁だろうか。もはや収穫体験のことではなく、自分が食べるところの事しか頭になかったのは反省するべきところでもあった。

なめこは椎茸より簡単で、力をかけずにポロッと採れる感覚。それは、私がキノコ持っていたイメージのままだった。面白いくらいに採れるなめこの収穫体験が終わり、椎茸の美味しい食べ方を奥様から教えてもらった。やっぱり焼くだけで味わうのが美味しいらしい。ただお醤油もいいけど塩も美味しいんだとか。

「良いお塩買って帰ろう。」

焼けてきたらパラっと軽く振ると椎茸本来の香りが楽しめて原木椎茸の美味しさがわかるそう。ぜひ試したい。はじめての椎茸の収穫体験は、終始食べることで頭がいっぱいになっていた。

食べることで頭がいっぱい中。

今回根本さんの椎茸を収穫体験させていただいて、椎茸やなめこについて新しく知ることが多かった。原木栽培は菌床栽培に比べて場所もお金もかかるが、それでも根本さんのようにこだわって美味しいものをつくっている生産者さんがいる。

私たちは、この魅力をお客様を含め多くの方にに伝えたいと改めて思った体験でした。今回の私が実感できた事を、より多くの方に知ってもらえるように、1月の農業体験に向けて準備をしていきたいと思います。

引き続き、応援のほどよろしくお願いいたします。

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