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伍魚福のビジネスモデル〜その5「部門の枠を超えた商品開発と市場原理による絞り込み」〜

ファブレス(工場なきメーカー)で、全国の協力工場でものづくりをしている話は「その1」で触れましたが、今回は、今のような多岐にわたる品揃えになった背景についてのお話です。

私が入社した1995年、伍魚福の売上の構成は、酒販店が90%、お土産店が10%というような比率でした。
酒販店(一般の小売店、大型のディスカウントストア、専門店など)がメインのお得意先なので、商品開発も自然に「酒の肴」に特化してきました。

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酒販店をメインの販路とした、1960年代初期(昭和30年代後半)は、ドライ珍味(乾き物)がメインでした。
のしいか、いかの燻製などの海産物、ピーナッツなどの豆菓子、米菓など。

「すばらしくおいしいもの」(経営理念)を模索する中で、1989年(平成元年)ごろ、チルド珍味(冷蔵の珍味)を開発します。
全国のお土産店の冷蔵庫に並ぶ、地元のおいしいものを、一堂に並べたコーナーができないか、というコンセプトで「酒の肴津々浦々」というシリーズ名で開発したのが始まりです。

開発当初は、小瓶に入ったいかの塩辛など、海産物系が中心でしたが、徐々に品揃えを広げ、練製品や、ソーセージ(伍魚福の品名では「ソーセイジ」と表記します)や牛タンスモークなどの畜肉加工品を開発します。

販路は酒販店。

「酒の肴」というコンセプトであれば、商品の種類を問わずに受け入れていただけたことが、品揃えの幅を広げました。

ただ、開発当初は、一般の小売店しか市場に存在せず、店頭での売れ行きは非常に厳しかったそうです。

そこに、お酒のディスカウントストアのブームが来ます。
「お酒の河内屋」さん、「やまや」さんなど、従来の流通を革新する業態ができ、一気に全国に広がりました。

私が入社した1995年(平成7年)はディスカウントブームの中盤。
新規開拓用のパンフレットを作成して、DMを送ったり、お酒のディスカウンター向けの専門誌「酒販流通革新」という雑誌に広告掲載したりしながら、販路を開拓していきました。

伍魚福のチルド珍味もそのブームに乗り、お酒の大型専門店にふさわしい商品、ということで全国で取り扱って頂くようになりました。
お酒ではなかなか利益がでない分、食品を強化したい、という思いにお応えしたのです。

お酒のディスカウンターは、一般の酒販店の敵、という捉え方をされていましたので、地域の珍味問屋が商品を卸さなかったということも追い風になりました。
伍魚福でもそのジレンマは感じていましたが、パッケージを変えたり、一般店では販売困難なチルド珍味を持っていましたので、交通整理をして一般店さんにもご理解をいただいたようです。

この間にワインブームがあったため、ワインに合う商品を希望されて生ハムやチーズ系の商品も増えました。
焼酎に合わせて本場鹿児島のさつま揚げを開発するなど、どんどん商品を開発していきます。

全国の個店としてのお得意先があるので、新製品を開発してもある程度は取り扱っていただけます。
開発してみて、販売してみて、売れるものは続け、売れないものはやめていく。これを何十年もの間、繰り返してきたのです。
つまり市場原理によって、自然に伍魚福の商品は絞り込まれていくのです。

大手メーカーのように、事前に地域を絞ってテスト販売をして、ということはできませんが、伍魚福にとっては、すべての商品を実地にテストしているとも言えますね。

この結果、現在の伍魚福の品揃えは、新製品を除き、すべてお客様の評価を受けたものだということができます。

後年、スーパーマーケットに販路を展開しますが、伍魚福の商品をどこの部門で取り扱うか、悩まれることになります。
結果的に「日配部門」でお取り扱いいただくことが多いのですが、企業によっては「畜産部門」だったり、「水産部門」だったり、「お酒部門」だったりさまざまです。

全くスーパーで販売していなかった「伍魚福」なので、肉も魚も練製品も、チーズも、乾き物もなんでもあるという前提でお取引をさせていただける。
これが、伍魚福の強みになっています。

仮に、肉製品のメーカーさんが、「いかの塩辛」を開発したらバイヤーは受け入れてくれるでしょうか。
練製品のメーカーが生ハムを開発したら。
乳製品のメーカーがソーセージを開発したら。

「担当が違う」と断られますよね。
ですので、そもそもそんな開発をすることはありません。

これも、伍魚福と同じような品揃えをするメーカーが現れない一つの理由となっています。

また、スーパーでも過去いろいろな百貨店ブランドをはじめとするこだわり商品を品揃えしようとされますが、なかなか売れないそうです。
伍魚福のチルド商品は、市場で鍛えられた品揃えなので、「思ったよりも売れる」という(ちょっと微妙な)評価をいただくことが多いです。

本当は、すごく売れるね、と言ってもらいたいところですが、嗜好品であるということもあり、わかるお客様にはわかっていただけ、ある程度賞味期限のうちには買っていただける、品揃えを評価いただける商品となっているのです。

現在の品揃えができているのも、酒販店さんから始まったお得意先小売業の皆さんのおかげです。
今からやろうと思っても、一朝一夕にはできない、他社には模倣しにくいビジネスモデルであるといえるでしょう。

最後までお読みいただきありがとうございました! 伍魚福の商品を見つけたら、是非手にとってみて下さい。社長のいうとおりになってないやないかーとか、使いづらいわー、とか率直なコメントをいただけるとうれしいです。 https://twitter.com/yamanaka_kan