井上ひさし『言語小説集』を読んで
『言語小説集』井上ひさし 2014.11.28 発行 新潮文庫
言語を様々な角度から捉え、視覚的記号、文、音、方言など多岐にわたって言語感覚を表現している、言葉遊びの短編集。
「括弧の恋」
多くの記号を擬人化しています。それぞれの記号の役割が上手いなと思いました。
「耳鳴り」
雑音の世界を描いたものですが、見方を変えれば普段気にしない音がふと意識を向けるとそこには今まで気づかなかった気色を見出してくれることもあるなと思いました。
「言い損い」
ものを言い損なう癖のある青年の話。
誰もが説明するときなど、所々言葉を端折ることは多々あります。それだけでも理解できる場合もありますが、勘違いされる場合もあります。
しかし、言い損ないが多すぎると話にならないですし、会話にもなりません。そう考えると、最初の一時的な状況では笑って済ませられる話が、それ以外の状況ではそれがしんどくなり、会話すらままならないと思いました。
「五十年ぶり」
方言もので、人が喋るのを聞いただけで出身地を当てる言語学者が出てきます。方言を聞いただけで出身地を当てることは、いくら調べても極めるのは難しいだろうし、それを物語に落とし込むのはすごいなと思いました。
好みははっきりと分かれると思いますが、他にもギャグ要素があり、面白いと感じる部分がありました。
言葉がとてつもない力が宿っているのは自分の中ではある程度分かっているつもりでした。しかし、まだ知らない言葉の持つ様々な側面を垣間見ることができ、それぞれの物語でそれを身をもって実感しました。
また、言葉が持つ魅力がより一層引き立てられていると感じました。よくこのような表現方法、発想が思いついたなと驚嘆し、言語の成り立ちについて考えさせられる作品でした。
ここまでお読みいただきありがとうございました。また次の記事でお会いできたらと思います。
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