とっておきの水を飲んだ受験生
◇◇ショートショートストーリー
義幸は大学進学のために自分なりに頑張っていました。塾には行かないで自分の力で合格したいと思っていたのです。
義幸のお父さんは3年前に、突然くも膜下出血で帰らぬ人となりました。下の弟と二人、お母さんを助けながら、コンビニエンスストアなどでアルバイトをしながら高校に通っています。
お母さんは、夫が亡くなるまで、働いた経験がありませんでしたが、今は清掃会社で朝早くから昼頃まで、働いています。
大学進学を諦めようとしていた義幸でしたが、母はとにかく息子に進学をして欲しいと願い、地元の国立大学への受験を勧めたのです。
義幸は、数学と、物理が苦手で、テスト結果も、その2教科が、いつも思わしくありませんでした。
お母さんは息子の大学合格のために、週末、こっそりあることをしてきました。
善幸はそのことは全く知りませんでしたが、とにかく合格するために、毎日遅くまで受験勉強していました。
何故か、お母さんは毎朝、テーブルに水を用意して「ヨシー、あんた、水飲んどいき、水分補給が大切じゃんけんね」
「お母さんは、ホントうるさいねー、このサーモの魔法瓶も、持っていかないかんのー、邪魔くさい」
「あんた、これはねー、特別な水ないんよ、水は絶対にお飲みよ」
義幸は、面倒くさいなーと思いつつ、母親の言う通りに、水を欠かさず飲んでいました。
ある週末、義幸は、母親が叔父さんの軽自動車で出掛けるところを目撃しました。車に10リットルタンクを4個も積み込んでいたのです。
義幸は、「お母さんは何をしよんじゃろか」と不思議に思っていました。
ある日、訪ねて来た叔父さんに聞いてみることにしました。
「お母さんが、大きなタンクを持って出掛けよるんじゃけど、何処に行きよんかなー」と聞くと叔父さんはこんな話をしてくれました。
「お前のお父さんが昔住んどった久万高原町の露峰に、博士の水言う湧水があってなー、その地域の人から博士号をとった人が7人も誕生しとるとこがあるんよ」
「へー、博士の水、知らんかった」
「お前のお父さんもそこの水を飲んで大学進学したけんなー」
それを聞いて、義幸はお母さんがいつも水にうるさかったのが分かりました。それから義幸は、母が差し出す水を文句を言わず飲んでいました。
大学受験の日も、合格発表の朝も、母から差し出された水をゴクゴク飲んでいきました。
博士の水の効果なのか、義幸は希望の大学に見事合格したのです。
そして、次の日から、お母さんは弟に「あんた、水お飲み、水筒も持っておいき」とうるさく言うようになりました。
【毎日がバトル:山田家の女たち】
《私もそれ飲んでもうちょっと賢くなりたいね》
リビングで相変わらず、イラスト制作に夢中のばあばとの会話です。
「水飲んで良かったねー、その湧き水はほんとにあるんかね」
「ハーイ!私も取材したことがあるんよ、久万高原町の二名(にみょう)あたり」
「それ飲んで、私ももうちょっと賢こなりたいわい」
「お母さんんは、遅すぎるんじゃない」
「あんた何言よん、まだまだよー」
何だか落ちのトークのようですが、本当の私たちの会話です。ばあばは中々のおばあちゃんです。
【ばあばの俳句】
白鷺の舞いて降り立つ朝の川
白鷺が餌を求めて川に降り立つ姿は何とも優雅です。母は美しい鷺の姿に見とれています。その光景は夏の暑さを忘れさせてくれるようです。
嬉しい事に私たち親子がよく使っているバス停近くの川で、鷺を目撃することが多いんですよ。
▽「ばあばの俳句」「毎日がバトル:山田家の女たち」と20時前後には「フリートークでこんばんは」も音声配信しています。お聞きいただければとても嬉しいです。
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