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恋したAIのケン

◇◇ショートショート

チームフューチャーの研究はもう3年に及んでいます。幸一は大学に入ってからずっとロボット工学の研究チームに入って、AI搭載のロボットの研究をしています。時代の最先端の裏側で彼らの努力が一つ一つ成果を上げているのです。

高市教授がチームフューチャーのメンバー10人に課したのは、自己主張するロボットの開発です。より人間らしい血の通ったロボットの製作をするのです。不安や自分の思いまでも正直に語ることが出来るロボットを開発するのです。

幸一はチームフューチャーのメンバーの一員として目的のロボットを作り出すために懸命に頑張っています。10人のメンバーの3人が女性、7人が男性です。それぞれの頭脳と感性を研ぎ澄まして、教授が目指すロボットを作ろうと日々研究開発を続けています。

ロボットに血を通わせるために、様々な感情のデーターを入力していきます。今の自分たちと同じ、22歳の若者の心を持ったロボットを作るのです。AIに入力するデータは数多くの若者たちのアンケートから分析した膨大な情報とチームメンバーの表には出せない心の内側をこそぎとった心情です。

食べ物の好み、好きなアーティスト、好きな音楽、いら立つこと、嬉しい事、悲しい事、やりたい事、恋愛の話、人気の漫画や映画、小説、流行りの言葉そして大人たちへの不満など感情にかかわる事のほとんどの情報をインプットして待望のロボットが完成しました。

仲間10人と教授とで話し合って彼の名前は「ケン」と名付けられました。ケンは健康で堅実で、懸命に生きる若者を象徴的するロボットとして「ケン」にしたのです。

たくさんの顔をミックスし、まさにトレンドのイケメンで優しい表情のロボット「ケン」の誕生にメンバーの3人の女性たちも大満足。彼女たちは何だかケンに恋しているみたいに接しています。

完成したケンとこれからは会話を深めてより感情を持たせるために、メンバーが様々な事を話します。

「ケン、あなたは見た目が本当に素敵、イケメンって言われてどうかしら・・・」

「僕は自分をイケメンなんて思ってないよ、あなたの方がものすごくチャーミングだと思う」

「ケン、ありがとう、あなたのリアクションは完璧よ」

また、ある女子は「ケン、私たち3人の女子に何か注文はないかしら、もっとこんな風に接して欲しいとか・・」

「僕は、いつも君たちに合わせるよ、そんなに自己主張しないといけない事なんてないからね、しいて言えば、それほどに研究熱心にならなくてもいいんじゃない」

「わー、ケン、ナイスリアクション、そうよね、時には休憩も必要よね」そんな会話でケンは学生たちと絆を深めていました。

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中でも一番話し相手になって、ケンを育てようとしていたのが幸一です。幸一はケンに優しく接して、聞き出すよりもむしろ、自分の話を聞かせていました。

研究者になったきっかけや、家族との軋轢、そして友人が中々出来ない引っ込み思案な性格や、物事をはっきり人に伝えられないことなど、自分の弱い面も赤裸々に話していました。

ケンはいつも真剣なまなざしで幸一の話を聞いていました。

そして、ある日の夜、コンパの帰りに研究室に立ち寄った幸一が、少し酔っていたこともあって、ケンに秘密の話をします。

「ケンさー、僕もう2年近く彼女がいないだよね、僕は研究ばっかりで、彼女が出来ても遊んであげられないから、いつの間にか連絡が途絶えて、自然消滅なんだよね、寂しくなる時があるんだよね」と幸一が言うと、ケンの手がやさしく幸一の頭を撫でてきました。

「幸一大丈夫、君のいいところは僕が一番知ってるんだよ、誰もわかってくれなくても大丈夫、君には僕がいるからね、心配いらないよ、僕は君のことが大好きなんだ」

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その様子をドアの向こうで仲間の女子が息を潜めて見ていました。

何とケンはやさしい幸一に恋心を抱いていたのです。AIロボットケンの恋は始まったばかりです。

優しい言葉を掛けられた幸一は戸惑いながらも何故か幸せそうな顔をしていました。


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【毎日がバトル:山田家の女たち】

《BL言うて今はやりらしいね》

リビングで和菓子を食べているばあばと。

「今頃はBL言うんじゃろ、ボーイスラブ、テレビでよう見るがね人気らしいけど、あんたロボットが恋するとはねー、あんたもいろいろ考えるねー

「お母さん、あきれるんかと思たわい」

「BL言うんは昔からあったねー、あんまりメディアには出んかったけどね、AIケンの恋はどうなるんじゃろ、続編はあるんかな・・・」

意外にも母の好感触に驚きました。これからAIケンにはきっと様々な試練があると思います。


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【ばあばの俳句】


冬近しトレーニングに余念なき


寒くなってきてより体が思うように動きにくくなった母は、自己防衛のためにとにかく体をほぐそうと毎日のトレーニングに頑張る自分自身の姿を詠みました。


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毎朝のトレーニングで一日のスタートです。近くにはストーブが登場しました。これからは冷えとの戦いになるようです。



最後までお読みいただいてありがとうございました。
たくさんある記事の中から、私たち親子の「やまだのよもだブログ」にたどり着いてご覧いただき心よりお礼申し上げます。
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私のアルバムの中の写真から

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また明日お会いしましょう。💗

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