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呪いのしっぺ返し

◇◇ショートショート

和也は仕事ができる男です。決めたことはとことんやり、新しいことにチャレンジするやり手です。

昇進も早く、自分の下で働いている部下には何人も年上がいるくらいです。

和也は思うことをハッキリ相手にぶつけ、忖度などしない。それが彼の仕事のスタイルです。

しかし、出来る人の側では密かに涙を飲んでいる人がいるのです。
和也のチームには体調を壊した後輩が何人かいます。最近の誠がそうです。見た目は変わらないのですが和也のパワハラに心を病んでいました。

「誠くん、最近少しおかしいよね、食事が喉を通らないんだって」
会社のお局的な存在の雅子さんが、誠のことを心配しています。

「彼のハートはガラスですから、打たれ弱いんです、同期でもまじめなタイプですから」
桜子さんが、心配そうに言っています。

誠は、会社に出てこられなくなって1ヶ月、長期休暇をとることになりました。

会社を休んでいる間に、診療内科に通っているらしいと言う噂が広がりました。
しかし誠は人知れず神社参りをしていたのです。

それは知る人ぞ知る神社です。
誠はインターネットでその神社を調べ、深夜その神社に参って祈りを捧げていました。
紙人形に呪う人の名前を書いて、奉納します。

その人物の名前を心の中でも何度も唱えて人形に、呪いを込めるのです。誠は毎週末その神社に通い続けました。

呪いが叶って誠にとってはこの上なく嬉しいことが起きました。

ある朝、和也がパソコンから大切な資料を取り出そうとした時、間違って記録を削除してしまったのです。

和也は大きな声を上げました。
「あー、大変だ、資料を、削除してしまった、ゴミ箱まで空にしたよ」
真っ青になった和也は、急いでまた新しい資料を打ち込み始めました。翌日の朝までかかって、やっと資料を再現して事なきを得たのです。

その話を同期の桜子さんから聞いた誠はガッツポーズをしました。
「やった、あの神社のご利益だ、恨みが晴れてスッキリした」と、心の中で呟きました。

しかしそれは大きな間違いでした。
誠が会社に復帰してから悟ったのです。
上司の和也はピンチを迎えると一段とパワーアップするタイプでした。

和也はあの一件からこれまで以上にやる気を出して、部下に対する要望も一段と厳しくなったのです。

誠はインターネットに書かれていた言葉を思い出しました。
「あなたの恨みは一時的に解消されたかに見えますが、実はその恨みはあなたに倍になって返るのです、そのしっぺ返しをお忘れにならないように」と。

誠はその通りになってしまったと肩を落としました。


【毎日がバトル:山田家の女たち】

《今日のショートショート私は好きじゃない》

※92歳のばあばと娘の会話です。

「誠さんよっぽどじゃったんじゃねー、人を呪ったら返ってくる言うんは昔から言われとったけんねー、あんたの今日のショートショート、私は好きじゃないわい

「お母さんは面白なかったんよね」

「あんた、もっとためになる物語を書いてや

母にとって気持ちのよいショートショートではなかったようです。人を呪うと自分に返るので、恨まない人生を過ごす方がいいと伝えたかったのてすが、母にとってはそれが上手く響かなかったようです。


最後までお読みいただいてありがとうございました。
たくさんある記事の中から、私たち親子の「やまだのよもだブログ」にたどり着いてご覧いただき心よりお礼申し上げます。
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また明日お会いしましょう。💗


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