【短編小説】船から降りる事、降りない事
吾輩が乗っている船が、島に到着した。
島では「おいで わたしたちのもとへ」と書かれたアーチが設置されており、観劇ムードって事だ。
船に乗っていた11人の内、吾輩以外の10人はそそくさと船から降り、島の住人の元へ歩いて行った。
吾輩だけ、吾輩だけが、船から降りずに、自室にこもっていた。
何故降りなかったのか。
それは、吾輩にもわからない。
予感、のようなものだろうか?いや、そうではない。
不安?特に不安は無い。
何度もこの島には来ており、住人はその度に温かく迎えてくれている。