コラム14 2024年に向けて「これからの訪問リハビリテーションのあり方」と「事業所運営のあり方」を考えてみた
2021年11月18日追記
このコラムを含む内容のオンライン講義を11月21日(日)に開催します。
詳細はこちらからどうぞ↓↓
2021年5月25日追記
このコラムのことをオンライン講義で話しました。講義動画を掲載しています。
===ここからコラムの本文===
このコラムは以下のコラムや動画と合わせてご覧いただくと理解が進みます。
◆コラム10 「訪問看護からのリハ」と「病院や診療所からの訪問リハ」のこれからのあり方について考える1(2021年3月)
◆コラム11「訪問看護からのリハ」と「病院や診療所からの訪問リハ」のこれからのあり方について考える2(2021年3月)
◆コラム13 通所介護や通所リハを併用している訪問リハの利用者さん
◆オンライン講義6「訪問によるリハビリテーションの適正利用を考える」
=====ここから本文です。=====
2021年版noteでは、これだけ訪問のリハ(訪問看護のリハ、病院や診療所からの訪問リハ)について取り上げています。それだけ2021年介護報酬改定のインパクトは大きいと感じているからなのです。
改定のことや2025年の訪問のリハ領域のこと等については2021年版noteに書いていますので興味ある方はそちらをご覧ください。
◆2021年版「生活期リハの視点で病院リハと地域をつなぐ・変える」
今回のコラムでは、訪看リハ、訪問リハ(病院・診療所・老健)をより良いものにしつつ、2024年や2030年の同時改定においてよい方向になるようにどのような実践が求められるのかということを書いていきたいと思います。
◆コラム13 通所介護や通所リハを併用している訪問リハの利用者さん
◆オンライン講義6「訪問によるリハビリテーションの適正利用を考える」
上記2つのコラムでも書いていますが、今回の2021年介護報酬改定においてては、要支援の利用者さんの長期利用の減算や訪看リハの指示書や報告書の変更、リハマネ加算の再編などがありました。
これらの改定の大きな狙いは、不要な訪問リハを減らすことだと捉えています。公的保険のサービスによる訪問のリハビリテーションで不要と考えられるサービスを減らすことが大きな狙いだと捉えています。特に訪問看護ステーションからのリハビリテーションがその対象なのです。
通所リハにおいても要支援の12カ月以上の利用については減算となっていますが、サービスの利用を極端に抑制するものではないと感じました。むしろ、訪問のリハビリテーションよりも通所リハを積極的に利用する方向だと捉えています。地域でリハをするなら、訪問のリハよりも通所リハを優先し、通所リハで対応できないのであれば訪問のリハビリテーションを活用するという方向性ですね。
じゃあ訪問によるリハビリテーションが否定されているのかといえばそうでもなく、訪問リハ(病院・診療所・老健)においては退院・退所直後の訪問リハについては回数の増加が認められる改定となり、必要な時期に適切な対応を行う訪問リハのあり方は評価されています。
2024年の同時改定に向けた、訪問リハ(病院・診療所・老健)、訪看リハ、通所リハそれぞれの役割分担などについては以下のオンライン講義で解説しています。
また、上記のオンライン講義でも話しているように、訪問看護ステーションからのリハビリが不要だとは思わないのです。訪問看護ステーションからのリハには訪看リハでしか対応できないことがあるので、そちらに力を注ぐことが必要。
そのうえで訪問リハ(病院・診療所・老健)と訪看リハのこれからの運営にあたって、報酬改定や時代の流れにマッチした訪問のリハビリテーションを実践するためには、いくつかの課題があると考えています。
1、「かかりつけ医」と「ケアマネジャー」のリハビリテーションへの理解
2、事業所の管理者や所長クラスを含めた事業所の方針
この二つについてきちんと考えながら訪問のリハビリテーションを提供していく必要があると感変えています。
訪問のリハビリテーションの正しいあり方とは
これまでの訪問のリハビリテーションの処方の経緯は
ケアマネさんから事業所に依頼
家族や本人さんから依頼
かかりつけ医から依頼
退院調整の時に依頼
などがあるでしょう。これらのパターンについてはこれまで通りこれからもあまり変わりはないと思います。
むしろ、それらの依頼の中から「ほんとに訪問リハが必要なケースはどれなのか?」ということをきちんと判断する、アセスメントすることが必要なのです。
2021年介護報酬改定において訪看リハ・訪問リハどちらも
訪問のリハの目的を明確にすること
期間や回数をきちんと決めること
が求められるようになり、そのことが報酬に反映されました。
目的が不明瞭であったり、回数や期間の設定理由があいまいであるような訪問のリハビリテーションははっきりいって不要なのです。訪看リハの指示書の改定はその表れでしょう。
依頼が入る⇒空き枠のあるセラピストのスケジュールを組む
という順序での訪問のリハビリテーションの運営は正しい訪問リハのあり方とは言えなくなってくるのです。
依頼が入る⇒事業所のスタッフが利用者宅を訪問しアセスメントを実施する⇒かかりつけ医やケアマネと協議⇒訪問期間や訪問回数を設定する⇒訪問リハ開始⇒3カ月ごとくらいを目安に継続の必要性を判断する
というようなパターンになることが理想だと考えています。
すでに病院・診療所・老健で算定できるリハマネ加算では上記のようなプロセスになりつつあります。
さらに退院・退所直後の訪問リハの場合は、速やかに訪問リハを開始するために
退院前カンファレンスに参加⇒退院直後の訪問リハの目的や目標を明確にする⇒訪問回数や期間を設定する⇒訪問リハ開始⇒訪問開始2週間~1カ月の間に再評価⇒ケアマネや主治医と協議⇒訪問リハ継続の必要性を判断する⇒訪問回数や期間を改めて調整
ここで言うアセスメントとは、訪看リハであればセラピストのアセスメントだけではなく、看護師の視点からの評価も行った上でどの程度の訪問頻度や期間で訪看リハを開始するのかという判断が必要になる。
病院や診療所の訪問リハの場合は、同じ事業所の主治医とセラピストがアセスメントを実施の上で訪問の頻度や期間を判断する。
そうしてどのようなパターンの場合であっても、ケアマネジャーのアセスメントに基づいて、訪問のリハビリテーションで達成すべき目標や解決すべき課題は何であるのかということを明確にすべきなのです。
指示を出す医師とケアマネの役割
介護保険の訪看リハについては2021年4月より指示書の中に訪問時間、訪問回数を記載することが必要になりました。
病院や診療所の訪問リハでは猶予期間が設けられているとはいえ診療をする医師の要件が指定されています。
そんなことから考えると、訪問のリハの指示書は「形式的なもの」とはいえなくなりつつあるのです。医師と検討の上訪問の頻度や期間をきちんと吟味していくことがこれから必要となる。
そうして、目的があいまいな訪問リハとならないようにするためには、ケアマネジャーさんのケアプランの中身が重要になる。だって以下のような資料が厚労省から出ているんですから。
今回の2021年改定の中で出されている上記2つのスライドの中身はそれくらい大事なもんなのです。
何のために訪問リハビリテーションを実施するのか?そのリハビリテーションは通所リハでは不可能なのか?
この部分を考えることが出来ないあいまいなリハビリテーションは不要なのです。
空き枠があるからとりあえず週3回の訪問を実施するとか、ケアマネや家族が希望するからなるべくたくさん訪問するというような、収益目的だけのサービス提供ができない時代になっていくのです。
事業所としての対応
空き枠があるから依頼があったら何でも引き受ける
というスタンスではこれからの改定のたびに訪問リハは厳しくなっていくだろうと予測しています。
改定が厳しくならないように厚労省にどう訴えかけていくのかという発想ではもうダメですね。2021介護報酬改定でも、訪看リハの看護師比率6割問題に対してPT/OT/STの3協会が署名活動に乗り出しましたが、そのような対応ではダメなのです。
厳しくならないように団体を通じて厚労省に働きかけるのではなく
厳しい改定となることを予測して、厳しい改定になっても事業所の運営ができるような体制を整えていくことが必要なのです。
例えば今回の看護師比率6割問題にしても、すでに看護師比率6割の事業所は焦ることもなく対応できたわけですよね。それと同じように、どのような改定になってもあわてることのない事業所運営を目指すべきなのです。
そのためには事業所の運営そのものを見直す必要がある。
出来高で稼ぐセラピストのstyleを再検討!
空き枠があるからそこを埋めるために訪問回数を増やすという発想があるのは、出来高で算定できる訪問リハならではの発想だと思います。事業所側もセラピストも訪問件数を増やすことで収益が増えるし給料も増えるのですが、その結果が今回のような改定につながっていると考えることもできるのです。
上記のオンライン講義でも訪問リハの適正利用について話しているのですが、
空き枠があるから訪問をする、ケアマネから依頼があったから軽度の人であっても週2回とか3回の訪問を行うという事業所のstyleではアカンと思うのです。
訪問でしか対応できない利用者さんの達成目標に対して、必要な頻度で必要な期間、訪問によるリハビリテーションを提供することが必要なのです。
くりかえしになるのですが、そのために必要なのは
訪看リハにおいては、看護師とセラピストによるアセスメント
病院・診療所・老健においては医師とセラピストによるアセスメント
をサービス提供前、もしくは初回のサービス時に実施することです。
そうしてケアマネジャー、利用者さん、ご家族さんを交えて
訪問頻度、訪問期間、目標
を明確にすることです。
安易に空き枠を埋めるような運営スタイルを見直すには、セラピストの給与体系も見直しが必要になってくるかもしれません。
出来高だけで給与設定をするのではなく、日給制や月給制を検討することも必要になってくると思います。
また病院・診療所・老健であれば、通所リハと訪問リハ部門をうまくコントロールすることが必要になってくると思います。リハ部門のすべてのセラピストは通所リハと訪問リハに関与する方がうまく運営ができるのではないかと、現在通所リハに勤務しながら考えています。
通所リハメインだけれども訪問にも出るセラピスト
訪問リハメインだけれども通所リハに関わるセラピスト
この配分は事業所によって異なると思うのですが、訪問スタッフの空き枠をうまく通所リハに関わってもらうことで、リハマネ加算のリハ会議などを効率よく実施できるのではないかと考えています。
そのことはオンライン講義でも少しお伝えしています。
ケアマネジャーさんへのリハビリテーションのあり方を伝える
その地域において、ケアマネジャーさんリハビリテーションのあり方を伝えていく必要があると思うのです。
リハビリテーションは万能でない
リハビリテーションは元に戻すことではない
ということを理解してもらう必要がある。
目的達成にはいろいろな手段があります。
期間や頻度をきちんと吟味するということは、事業所として結果を求められることになります。
目的が明確になるということは、それを達成できたかどうかということも明確になります。
そうして事業所としての成果をきちんとケアマネジャーさんに伝えていくことが、事業所としての信頼につながっていくと考えています。
軽度や重度の有無に関係なく、いつでも気軽に希望する回数を引き受けてくれる事業所が良い事業所
ではなく、
目標を達成することをキチンと考えたり、対象者の方のアセスメントをきちんと行い、多職種・多事業所連携を行っていく事業所が良い事業所
となっていくべきなのではないでしょうか?
収益第一ではなく、訪問リハの中身を第一に考えて実践していくことがこれからの時代に求められる事業所運営だと思います。
訪問看護ステーションでは看護師とセラピスの連携、病院・診療所・老健では医師とセラピストとの連携が事業所運営には必須なのです。
ここに書いていることは理想論かもしれません。だけど、地域リハビリテーションに長く関わっている作業療法士として、これからも地域の現場でセラピストが訪問によるリハビリテーションを実践するならこのような考え方がもっと広まるべきだと考えています。
できることなら、現場のセラピストだけではなく現場の管理をされている
ケアマネジャーさんや、訪問看護ステーションの管理者さんや運営者さんにこのコラムが届くといいなと思っています。
気に入っていただいたらお気軽に連絡ください。これからの訪問によるリハビリテーションのあり方についていろいろお話させていただきます。
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