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パラレルキャリア時代のプロ音楽家の在り方ついて示唆に富む話〜「複業作曲家の時代」トーク動画公開

 終身雇用で、江戸時代の藩のように会社に奉公するのが美徳という昭和の高度成長モデルが終わり、個人の生活が大切で、輝いている社員がいるのが良い会社という価値観に日本社会が変わりましたね。その文脈で、パラレルキャリアが推奨されるようになっています。副業(サイドビジネス)ではなく、複業(パラレルワーク)と言われるようになっています。ライスワーク(食うための仕事)とライフワーク(自己実現としての仕事)のバランスという考え方が出てきていますね。

山口ゼミの最大の魅力は多様性を持ったコミュニティ

 僕が主宰する山口ゼミの基本コンセプトは「プロの作曲家を育てる」なので、兼業作曲家みたいな在り方を推奨することに最初は正直、戸惑いがあったのですが、時代を先取りしている側面もあることに気づきました。「ライスワーク」として、いわゆるお勤めをしながら、自己実現と夢を追う「ライフワーク」として作曲家活動をするという選択は、なかなかイケています。作曲家にはヒットを出してたくさんの印税収入を得るという夢もあり、何より音楽を創るという自己実現が達成できる喜びがあります。
 山口ゼミ、そして卒業生によるクリエイターチーム「Co-Writing Farm」の最大の価値であり特徴は多様性です。150人のメンバーは、職業、年齢、キャリア、住んでいるところなど、本当に様々な人が、この場を経由して自己実現をしています。
 一部上場企業の総合職で働いて、管理職まで務めている女性が年間100曲以上の楽曲デモを制作してコンペに参加し、結果を出しています。指導してきた僕が驚くほどの頑張りを「複業作曲家」として見せる人達が出てきているのです。

成長と成功のためには素直さが大切

 今回のトークイベントで改めて3人のこれまでを振り返り、なぜ、そんなにできたのかを掘り下げました。僕がプロパガンダ的にぶち上げた「年間100曲デモを作る生活をしよう」を当然として実現したのに、山口さんは驚くとか後から言われれてもww、と永野は不満げに語り、CWFのコーライティングキャンプに参加してくれたLA在住の大作曲家ヒロイズムが「1曲で3時間でつくる」「仮歌は一回しか歌わない」という意見をそのまま取り入れたとKazは語っています。
 「真に受ける」「鵜呑みにする」が大切というのは示唆深いですね。人間の成長って、素直さから始まるんだなと改めて確認できました。

自分の環境設定が最重要

 詳しくは動画を見ていただきたいのですが、おそらく一番重要なメッセージは、自分で環境設定することの重要性でしょう。人間が、特にクリエイターが成長するために一番大切なのは、良い環境にいることです。
 会社と両立させる時間の使い方のノウハウ云々よりも、「音楽を放っておいてもつくる環境に自分の身を置くことが大切」なので、「締切がある」「仲間がいる」からできる。というのは真実なのでしょう。「人間は意思だけでは(どんなに音楽が大好きでも)やらないもの」という長沢の意見は象徴的で、説得力がありました。
 コミュニティの価値は、リアリティのあるノウハウの伝搬と共有が自然とできていることです。Co-Writing Farmから生まれてくる作品が、新メンバーが加わって人数が増えているのに、クリエイティブのレベルが上がり続けているのはノウハウの共有ができるからなのだと思います。
 作家事務所は同じ事務所内でも作家同士のデモを聴かせないというのが普通だそうで、本当にもったいないことをやっているなと思います。Co-Wring Farmは入会すると過去7年間の全情報にアクセスできるようになります。Co-Writing Studioを使うようになってからの4年半は、どのコンペにどんなデモが提出され、どういう評価をされたのか知ることができ、そしてそのデモを創った作家とコーライティングすることも可能なので、作曲家の成長の場としては理想的な環境となっているのだと、改めて確認しました。

 ZOOMの動画で、僕の姿勢が悪い&顔がデカイことが気になる以外は、素晴らしい動画だと思うので、(音だけでも良いので)是非、観てみてください。

<スピーカー>
永野 小織 Songwriter/Arranger、理系ギター作詞作曲家。山口ゼミ9期生。
都内IT企業に勤務しながら2016 年よりCo-Writing Farmメンバーとして作家活動を開 始。 戦略的楽曲提案、および、女性目線/理系出身の感覚を活かした歌詞を得意とし、Co- Writing Farm所属作家および外部シンガーソングライターを含む多数コーライト経験をもつ。
Works:ClariS「このiは虚数」、=LOVE「ズルいよ ズルいね」、Girls2、SOLIDEMO、22/7、 井上苑子ら、様々なアーティストの楽曲を手がけている。

長沢 知亜紀 Singer, Rapper, Songwriter, Pianist, Trackmaker, 山口ゼミ9期生
3歳からピアノ、7歳から作曲を始める。高校3年生の時に、TEENS MUSIC FESTIVALで Zepp Tokyo出演。その後、バンド活動を10年ほど経て、2016年よりCo-Writing Farm メンバーとして作家活動を開始。
Works:22/7、mirage2、lovely2、ClariS、FAKY、= LOVE、≠ME、岡本信彦、AIMIetc

Kaz Kuwamura Singer・Songwriter・Artist・英語講師(上智大学・立教大学・二松學舍大学) 大阪音楽大学助教。山口ゼミ14期生。
2017年 NHK WORLD J-MELO Breakthrough Artist Showcase にてJ-MELO AWARD受賞。 17年からCo-Writing Farmメンバーとして作家活動を開始。単身ヨーロッパ (London,Barcelona,Stockholm,Copenhagen)のWriting Sessionにも多く参加。
WORKS:Da-iCE「CITRUS」(日テレ系日曜ドラマ “極主夫道”主題歌)、伶「Call Me Sick」(映画「小説の神様」主題歌)、けやき坂46、遊助、22/7、 mahina、BATTLE BOYS 

 そんな「山口ゼミ」は3ヶ月毎に開催しています。2013年1月開講なので、10年を節目に自分の関わり方は見直したいと思っています。最近は「いつまでもあると思うな山口ゼミ」と脅かすことにしていますww

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