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イマダニ コレガ ワカラナイ。

「うわぁぁー!!」

リアルにこんな声が出た。

弟(46歳)と週末ウォーキングでの事だ。

何が起こったって、私は夜の川沿いの遊歩道で盛大に転けたのだ。

転んだ瞬間、昔の事を思い出した。

小さい頃、母と手を繋いでいると、転けそうになる度に手をグイッと引き上げられ「ちゃんと下を見なさい!」と怒られた。
そして言われた通り下を見て歩いていると、外に置いてある看板にぶつかりそうになり今度は「ちゃんと前を見なさい!」と怒られた。

「前と下どっち見て歩いたらいいのー?!」だ。
私的に理不尽極まりない。

そんな疑問を解決できないまま、私は47歳になっている。

まぁ、それはさておき私は受け身も取れず絵に描いたような姿勢で転けた。
2.3歩分先に歩いていた弟もその声に驚き振り返った。

お姉ちゃんという矜持をかなぐり捨て、おっさんの様な声で叫んでしまった事を恥じ、直ぐ様立ち上がろうとしたのだが、右足首が痛くて立ち上がれない。

その様子を見て弟は「あ!やった?!」と言った。痛みと痺れは有ったが、ボッキリいった感覚ではなかったので「大丈夫、大丈夫!OK!」と言った。

何とか立ち上がると弟は「今日はもう帰ろう。ちょっとヤバそうやで。おんぶしようか?」と、言われた。

弟におんぶ。

んなもん、35年ぶり位なんじゃなかろうか。
しかしながら、このコロナ禍で4キロ太り、まだ戻る気配のない私は「大丈夫!」と全力で固辞をした。

あの頃と違い、弟に「ねぇちゃん、重い。」だなんて言われた日にゃ、豪快に転けただけでも恥ずかしいのに、私のプライドはズタズタになるだからだ。
私はお姉ちゃんとして威張りたいのだ。

元々、サッカーと空手をやっていた弟は怪我に敏感。「捻挫を甘く見たらアカン!」と引き続き激しくおんぶを推奨してきた。
しかし、余りにも私がそれ以上に激しく嫌がるので渋々諦め「せめて肩を貸すわ。」と、河原で殴り合った強敵ともを支えるように私の腕を自分の肩に回した。

弟、身長173センチ。ガッチリタイプ。
私、身長152センチ。
腕を回されたら私の体の一部が浮いた。
引きずられる様に歩く事、数歩。

「ねえちゃん。」

それでも私の身長に合わせて中腰になり歩く弟が続けてこう言った。

「…僕、左肩、今四十肩なの忘れてた。」

「ヘイ、ブラザー。使えなくなるの早いな。」

どんな人格者であってもぶん殴ってくるであろう暴言を吐くワタシ。血を分けた姉弟だからスルー出来るものだと思う。

「しょうがない。腕貸して。」

私は弟の腕にしがみ付き歩いた。
ウン。歩ける。やはりボッキリとはいっていない。少しホッとしながら数歩歩いた。

しかし、またもや弟は

「…ねぇちゃん。腕、しがみつかれたら肩も引っ張られて痛い。」

と、抜かした。

使えぬ。(暴言)

家まで約1キロ。
腕にぶら下がるスタイルから、結婚式のバージンロードを歩く新婦とその父親スタイルになり、最終的には何処からどう見ても歩行を補助する介護ヘルパーさんとその利用者さんに近しいスタイルに落ち着いた。

あのスタイルにはちゃんと理由があるんだなぁと身を以て体験する。

「おんぶしなくても大丈夫かー。」と、まだしつこく言う弟に「そんなに痛くない気がするんやけど…」と、言った途端、

アレ?イタイ。

その様子に弟が「…痛くなってきたんやろ…。」と見透かした様に言った。

家に帰り玄関で「夫に呆れらて怒られる…。」とベソリと言うと「ちゃんと僕が言うたるから」と慰められ家に入った。


ソファに座らされる。
「また転けたんかー。」と想定過ぎるセリフを言う夫。

私は案外何でもないところですっ転ぶ事が多いので、夫は"私が転ける"というイベントには慣れっこだ。

呆れ軽く言う夫に弟が「いや、結構な感じで転けてたで。」と、言い私に靴下を脱ぐように言った。

脱いだ靴下の下からは、くるぶしの周りに半分に切ったゴムボールがくっついた様な腫れ方をした足が出てきた。

弟「あー。」
夫「あー。」

そう言いながら夫は冷凍庫から柔らかめの氷枕を出してきてくれ、弟は「兎に角、冷やして。最初はガンガンに冷やして。今日は土曜やし明後日、朝一番に必ず整形外科行って。」と心配そうに私の足を上から下から見ながら言った。

夫は気を遣いながら患部に氷枕を当ててくれる。

足は何だか段々痛くなっているし、床に着こうとしようものならば痺れるような、なんとも言えない痛みが走った。

しかし、普段から元気で当たり前のお母ちゃん業に勤しむワタクシ。
滅多にしてもらえない心配に満更でもなかった。

アラオヤ。ワタクシ、チヤホヤされているわ。

そんな事を思っていると、弟が急に「でもねぇ。不注意過ぎる。なんであんな所でコケるのかなぁ。」と、言い出した。

すると、それに続くように夫が「そやねん。いっつもちゃんと周り見ないで歩いている。危なかしくてしゃあない。」と追い討ちをかけた。

しかも弟は夫に向かって、「以前、ウォーキングしていて、急にゲリラ雨が降ってきた時にな。姉ちゃん雨の中、構わず真っ直ぐどんどん歩いて行くんよ。
真正面から敵の放つ弾丸の雨の中、構わず進んで行く何かの主人公みたいでめっちゃカッコ良かったんやけど、そのまま足下にある水溜りとかも一切避けずに水飛沫巻き上げながら進んで行ってビックリしたわ。頭おかしい。」

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夫「足下全然注意してないし。」

弟、急にディスるんじゃない!アホか!!!


その訳のワカラン弟の思い出話によってワタシの貴重なチヤホヤタイムは数分で終了した。

私は慌てて「いや、あの時はもう全身びしょ濡れだし"いいか"と思ったんやって!」と、反論するも2人に「無いわー。」と即座に返された。

横で息子がスマホを弄りながら、メッチャ悪そうな薄ら笑いをしてこっちを見ていた。

夫「ちゃんと前、見なあかんで。」
弟「ちゃんと下、見なあかんで。」

それぞれに言われた。

だから、どこを見て歩きゃいいのよ!!?

未だにこの答えがわからない。

まぁ、これが4週間前の土曜日の話。
月曜に病院に行ったら、ちょっとキツめの剥離骨折だった。

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弟にとりあえずメールしたら、その夜こんなのを持ってきた。↓

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気持ちは嬉しいが、2本だけでどないせえっちゅうねん。


ついでに言うと息子に1本飲まれた。

あと2週間は包帯生活らしい。凹む。



*オマケ*

コケた時に出た「うわぁぁー!!」のおっさんボイスは限りなくコレに近かったので貼っておきます。



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